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第57話絶望からの逆転

 大地の民達の手から逃れることはできたものの、未だに油断ができない俺達は、一旦安全な場所へと隠れることにした。


「はぁ、はぁ。つ、都合良く空き家みたいなのがあってよかったな」


「そうね。でも教えてもらっていた道から大分逸れたけど大丈夫?」


「す、少し不安です」


「あんたが蒔いたんだろ。種を」


 スウに教えてもらっていた道から大分離れてしまい、元の道すらも分からなくなっているこの状況の中で、一体どうすれば……。


『その声、まさか咲田か?』


 おまけにムウナの幻聴が聞こえて来る始末。まさかこんな所に捕まっているはずが……。


『早く助けるのじゃ妾を。この建物の地下に閉じ込められておる』


「咲田、この声」


「そんなまさか」


 こんなどう見ても廃墟にしか見えない場所にいるはずが。


『お主ら気づかんのか? ここの更に地下へ行った所がロクランスタの総本部になっておるのを』


「そんなの分かるか! というか本当にこの声はムウナなのか?」


『何を言っておる。この声は妾以外におらんじゃろ」


「確かにそうだけどさ。いくらなんでもこんな所にいるわけが……」


「ま、待ってください咲田さん。あなたの下何かありますよ?」


「え?」


 ライノに言われて足元を見ると、何か扉らしきものを発見。あまりに都合のよすぎる事ばかり起きているのだが、果たして大丈夫なのだろうか?


「これは罠だな」


「何でですか? どう考えてもこの先にムウナさんがいるじゃないですか」


「そうよ咲田。急いで助けに行かないと」


「全部が嘘とは言っていない。ムウナが閉じ込められている場所は……」


 ある壁に目を向ける。捕らえていた本人は、バレないとでも思っていたのだろうか? 残念ながら俺の目は誤魔化せない。


「そこだ!」


 その壁と思わしきものを、一気に剥がす。するとその先には、両手に手錠をかけられ、宙に吊るされて牢獄に捕まっているムウナがいた。


「咲田!」


「ムウナ」


「ムウナ! よかった、無事だったのね」


「ムウナさん!」


 ビー ビー


 ようやくムウナを発見したのも束の間、警報が大音量と共に流れ出す。ここまでは計算済みって事か。


「この檻をなんとかしたいけど、外れそうにないよな」


 当然鍵なども持っていないので、この牢を開けることができない。だからと言って呑気に壊している時間もない。さあ、どうする。


「咲田、ここの檻は鍵とかないのじゃ。この牢に入る手段は一つ。地面じゃ」


「地面?」


 地面をよく見て見る。すると僅かだが、地面が掘られた形跡が見えた。つまりここに道があるって事か。


「少し掘れば道ができる。急ぐのじゃ」


「了解!」


 急いでその場所を三人で掘ると人一人通れる道が見えた。


「よし、ここを……」


「そこまでよ!」


 迷わず入ろうとした所で、背中に何かが突きつけられる。


「咲田、後ろ!」


「動くな。動いたら殺すぞ」


「全く物騒な事を言うよな。もうすぐムウナを助けられるというのにさ」


「残念だけどそれは許されないわ。彼女はこの国の反逆者、それに手を貸す者も私達の敵。殺されたくなければ今度こそ大人しくついてきなさい」


「はいはい、分かりましたよ」


 どちらにしてもこの状況で下手に動けないので、ここは大人しく従うしかない。


「咲田!」


「偶然とはいえ、まさか牢を見破られるとは予想外。だけどこれで終わりね」


「くっ!」


「そうだ。これ以上暴れられても困るから、ここら辺で殺しちゃおうか。彼女。どうせ処刑される身だし」


「何だと!」


 動けない俺と変わって一人の兵が牢へと入っていく。


「あなたが何故そこまでして彼女を助けようとしたか分からないけど、もうこれでそれも終わり」


 牢獄へと入った兵は、剣を鞘から抜くと、剣先をムウナの首元に当てた。


「嫌、妾はまだ死にたくない……」


「裏切り者に生きる価値はなし。さあ、やりなさい」


「ムウナぁぁ」


「咲田ぁぁ」


 剣を振りかざした兵は、それをそのまま彼女の首目掛けて振りかざした。


 グラグラ


 だがそのタイミングをいかにも待っていたかのように、地面が大きく揺れた。


「な、何が起きて……」


 かなりの大きな揺れに、その場の全員が地面に座り込んでしまう。剣を振りかざしていた兵士は、バランスを失いその場に転倒。ほんの僅かな差でムウナに剣が当たらずに済む。


「行くなら今しかない!」


 それを見逃していなかった俺は、咄嗟に先程の道を通ってムウナの元へと向かう。彼女を助けるなら、今しかない。


「待ちなさい! その先には行かせないわよ!」


 そんな俺を止めようと言わんばかりに、女は俺に襲いかかってくるが、俺はそんなの気にしなかった。何故なら、


「咲田の邪魔をしようなら、私達が相手するわよ!」


「この先には行かせません」


 頼れる仲間がいるから。


「サンキュー二人とも」


 二人に守られて、俺はようやくムウナの元へ辿り着く。


「咲田、本当に妾を助けに来てくれたのじゃな」


「迷惑かけるとか色々言っていたのはお前だろうが。ほらさっさと出るぞ」


 彼女の手を縛っていた鎖を外し、俺とムウナは一緒に牢を脱出する。出た先には、鎧を纏っている女の剣士と、それと対峙するグリアラとライノの姿がそこにはあった。


「無事に救出に成功したけど、まだ終わってないわよ咲田」


「ああ分かっている。ここを突破して、皆と合流したら絶対に戻るぞ地上に」

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