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第6話とある水の姫巫女の初日-全裸と出会い 後編-

「こ、これはですね。えっと……」


 誰も来ないだろうと完全に油断していた俺は、突然の出来事に戸惑っていた。だが次に彼女が発した言葉が、あまりに予想外なものだった。


「こ、こんな所に私の同志が」


「え?」


「あなたも裸族の一人だったのね!」


「いや、えっと、はい?」


 思わず素の反応をしてしまうほどの彼女の返答に、俺の頭は更に混乱。


(一昔前にそんなのが現実にいた気がするけど……というか)


 だが、彼女の服装を見て、俺はこの反応の意味を知ることになった。


(は、裸エプロンだと!)


 そう、彼女はあろう事か裸エプロンの状態でこの部屋に来ていた。


(まさか、異世界でこれを見られるとは……)


 ラッ……ってそうじゃなくて。


「何であなたも服着ていないのですか?! 私は着替えの途中なだけで、決して同志ではありません」


「またまた~、照れなくていいのに~」


「照れてなんかいません!」


 邪念を振り払って、全力でツッコミを入れてしまう。巫女としてあるまじき行為なのかもしれないが、こんな人と同志にされてはたまったものじゃない。


「巫女様、そう言えば着替え方をまだ……」


 しかも更に運が悪いことに、そこにセリーナが帰ってくる。


「もしかして巫女様は巫女服いらずで泳げたりするタイプなんですか?」


「そんなわけありません!」


「何言っているのよ~、私と同じ仲間なのに」


「仲間になった覚えはないですからね!」


 しかも彼女が余計なことを言い出し、話は更にややこしい方向になっていく。


「って、そこにいるのはユキネさんじゃないですか。巫女様、いつから彼女とお知り合いになられたのですか?」


「知り合いどころか今会ったばかりですよ」


「そういうセリーちゃんも彼女と知り合いなの? あ、彼女が昨日呼ばれた巫女なら知り合いなのは当たり前か。という事はセリーちゃんの友達は私の友達。つまり同族って事よね巫女様~」


「だーかーら、どうしてそうなるのですか?!」


 知り合いの友達は赤の他人のはずだというのに、どうしてそういう方向へと向かっていくのだろうか? というかもう巫女が誕生した話が回っているのか?


「それにしても巫女様にそう言った性癖をお持ちの方だったとは……」


「セリーナさんもいつまで勘違いしているのですか! 私はただ巫女服の着方を知らないのであなたを待っていただけですから!」


「あ、すっかり忘れていました。巫女様、巫女服の着替え方分かりますか?」


「あなたの見ての通り、全く知りません!」


 というかまずそれを最初に聞くべきたったじゃないのか?


■□■□■□

 結局セリーナに着替え方を教わる事になり、それを教わりながらまだこちらをジロジロと見ているユキネについて聞いてみることにした。


「彼女は幼馴染であり、同じ場所で働く仲間なんです。ちょっと変わった性格の子なのですけど、こう見えて結構真面目だったりするのですよ」


「へえ、そうなのですか」


 この裸エプロンが真面目だとは到底思えないのだが(主に服装が)。


「でも良かったですね巫女様」


「何がですか?」


「こうして同じ性癖をお持ちの方と出会えて」


「だから違いますから!」


 いつまでそのネタを引っ張れば気が済むのだろうか。


「よいしょ。これで着替えは完了です。明日からは自分で着替えるようにしてくださいね」


「ありがとうございますセリーナさん」


 そんなやり取りをしている間に巫女服の着替えが終わる。それを見るなり、何故かユキネはため息を吐いていた。


「あーあ、着替えちゃった」


「何か着替えてはいけない理由でもありましたか?」


「だって~、水の姫巫女の裸姿なんて、またのないシャッターチャンスだったんだもん」


 どこに隠し持っていたのか不思議なくらいに自然にカメラらしき機械を取り出してそう呟いた。どうやら心配なんてする必要はなかったらしい。


「でも何枚かはレアなもの取れたからいいか」


「……」


「あ、ちょっと私のカメラ……」


 ガシャーン


 どうやら他人の心配をするよりも先に、自分の事を心配しておいたほうがよかったのかもしれない。


「さあ巫女様、そろそろ儀式の時間ですよ」


「あ、今行きます」


「ちょっとセリーちゃん、今の見過ごすなんて酷いよ!」


「いつもの事だから心配ないと思ったので、あえてスルーさせていただきました」


「いつもの事って、私そんな変人に見える?」


『はい』


 俺とセリーナの意見がピッタリ合う。裸エプロンに盗撮、これらの要素が他の人が見たら百人中百人が同じ答えにたどり着くと思う。


「まさかの満場一致?! って、あ、ちょっと待ってー」


 ユキネが一人で衝撃を受けている間に俺とセリーナは彼女を置いて無言で部屋を出た。


「セリーナさんも、随分と変わった幼馴染をお持ちで、苦労しますね」


「それはもう苦労どころの話ではありませんよ。若干暗くて見えにくかったですけど、あの部屋は彼女のコスプレのコレクションが眠っていますから」


「何か本当に色々残念ですね……」


「はい……」


 見た限りではあの部屋は結構広かったからかなりの量のコスプレが眠っていたのかもしれない。そう考えると、ちょっとだけ背中がゾッとすると同時に、


(何か色々と変わっているなこの世界)


つくづく俺はそう思うのであった。

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