第50話神殿と歌姫と大喧嘩
何とか攻撃をかいくぐり、神殿と思わしき場所へたどり着いた俺は、息を整えながらシャイニーの到着を待っていた。
(どうしてこんな事に……)
やはり闇と何か関係しているのだろうか? そうだとしたら一刻も早く助けてあげなければならない。歌姫だからとか、そんなの関係なく一人の人間として。
「はぁ、はぁ。私の方がこの地を知っているのに、どうして咲田君の方が到着するの早いんですか」
そんな事を考えている間に、シャイニーが到着。
「何かそれらしきものを目指してたら、いつの間にか到着していたんだよ。まさかお前より早いとは思っていなかったけど」
「本当に死んだ身なんですか、あなたは」
俺達がやって来たのはまさに神殿と呼ぶべき大きさの建物。何か不思議な力にでも守られているのか、その神殿だけは傷一つなかった。その為俺も迷わず来れたというところだ。
「それで咲田君、さっき言いかけた事ってなんですか?」
「ああ、それなんだけどさ、中に入ってから説明する。実際に見てもらった方が早いから」
「中に何かあるんですか?」
「俺の考えている通りの事が起きているならな」
でもそれは本来あって欲しくはないこと。もしそれが本当に起きているなら、グリアラ達にも同じようなこと起きている可能性が高い。果たしてグリアラは戦えるのだろうか? 自分の友である彼女と。
「とりあえず入るぞ」
「はい」
更なる不安を抱えながら、俺とシャイニーは神殿へと足を踏み入れたのだった。
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神殿の中は何か異常があるような雰囲気はなく、先程みたいな攻撃もないので順調に進むことができた。
「本当にこの先に何かがあるんですか?」
「歌姫がいるのは恐らく間違いない。ただ、ちょっと手間がかかるかもな」
「手間? どういう事ですか?」
「いいか」
ここでようやくシャイニーに俺が考えていることを説明する。あり得ない話なのかもしれないが、一番可能性が高い話だ。
「そんなことって……」
「でもこの国にいる人間は限られている。そこから導き出される答えは、お前だって分かるだろ?」
「それは……分かりますけど……」
信じたくはない。けど、それは現実。だから助けなければならない。それが今の俺達にやるべき事なのだから。
そして神殿を歩いて進むこと更に十分後。突然神殿の光が全部消えてしまった。
「な、何だ」
何も見えなくなり動揺する俺とシャイニー。目が暗闇に慣れるまで、とりあえず待っていると、かなり奥の火が灯っていることに気がつく。
「シャイニー、あそこ見えるか?」
「はい」
「辺りは暗いけど、道は真っ直ぐのはずだから、あそこを目指すぞ」
「はい」
壁をつたって、一歩一歩確実に歩いて行く。だがもう少しで灯りに到着しようとした時に、声が聞こえた。
『光の姫巫女、よくものうのうと帰ってきましたね』
「この声は」
「隣にいる方は存じませんが、もうお一方は我々の敵、光の姫巫女ですね」
彼女の声とともに辺りの灯りが再び灯る。そして俺たちの目の前に彼女はいた。豪勢なドレスを着ている闇のオーラを纏った女性がそこに。
「どうして私が敵なんですか?!」
「あなたは何も分かっておられない。私達は光、闇であるあなたは敵です」
「私が闇なわけ……」
「落ち着けシャイニー! さっきも言っただろ? 歌姫は闇に囚われている可能性があるって」
「でもこんな事って……」
「呑気に喋っている場合じゃないですよ!」
狭い道の中で、あの一撃が放たれる。何とか交わしたはえものの、次何か起きたら直撃は免れなれない。
「くそ、話し合気なしか」
「何とかならないのですか?」
「彼女から闇を取り除くしかない」
「でもどうやって」
「次はもう逃げられないですよ」
俺の頭上にあの一撃が降りかかる。気づいた時には、何故か俺は突き飛ばされていた。
「え?」
背後から誰かに……。
「シャイニー!」
吹き飛ばされた先で、慌てて後ろを振り返ると、何とか避けることができたシャイニーの姿がそこにはあった。ただ、足に怪我を負ってしまったようだ。
「今のは運がよかったですね。ただ、もう次の一撃で終わりです」
「させるかよ!」
全力で歌姫に駆け寄り、そのまま歌姫を押し倒した。
「あ」
これってどこぞのラブコメ演出?
「きゃー! へ、変態です!」
何を血迷ったのか、歌姫は自分の頭上にあれを落としてしまう。俺は彼女と共にそれを食らってしまうのであった。
「そ、咲田君!」
一方その頃、グリアラとクスハの喧嘩は、人どころか土地を巻き込む大喧嘩へと発展してしまっていた。
「この馬鹿姫巫女、いい加減倒れなさいよ!」
「はぁ、はぁ、そっちこそよクスハ。あなたより私の方が圧倒的に強いんだから、そっちが先に倒れるのよ」
「お主達、それはもはや小学生レベルの喧嘩じゃよ。そろそろやめにせぬか?」
『できないわよ!』
「二人ともなんでその時だけ息が合うんじゃよ……」
もう闇とか何にも関係ない小学生レベルの喧嘩を繰り広げる二人。ムウナはというと、その喧嘩をなんとか避け続けることしか出来なかった。
「この年齢詐欺女!」
「オンチ女!」
「もう妾は、ツッコムのは嫌じゃよ」




