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第49話異変

 翌日、次なる目的地であるセイランスへ向けて歩き出した俺達。ムウナは昨日とは打って変わって元気を取り戻し、いつも通りの四人に戻っていた。


  「昨日は迷惑をかけてすまなかったのう皆」


「いいのよ気にしなくて。あんなこと突然言われたら、誰だってああなってしまうもの」


「そうですよ。ムウナさんは何も悪くありません。何も分かっていないのはあちらなのですから」


「皆……」


「だから言ったろ? 俺達はお前の仲間なんだ。同じ痛みは分け合って、そして乗り越えればいい。絶対にお前一人だけ悲しい思いにはさせない」


「咲田……」


 以前グリアラも同じ事を俺に言っていた。何かあったら頼ってくれと。そして俺は、何度か彼女達に助けられた。だから今度は、俺が頼られる身でありたい。


「さて、ムウナ元気も戻った所だし、ちゃっちゃか進むか」


『おー!』


 村を出て歩くこと三時間後。


「じゃあ私、そろそろグリーンウッドが近いから、ここで一旦お別れね」


「ああ。気をつけてな」


「お二人共気をつけてくださいね」


 グリーンウッドが近づいてきたので、ここで一旦グリアラとムウナとお別れ。グリアラ一人では危険かもしれないので、ムウナが付き添いになる形となった。


「そっちこそ気をつけなさいよ。特に咲田は一般人みたいなもんなんだから」


「いざとなれば、シャイニーがいるから大丈夫だって」


「じゃから心配なんじゃけど」


「どういう意味ですかそれ!」


 そんなやり取りもほどほどにして、それぞれ向かうべき道へと歩き出す。ここからはシャイニーと二人きり、果たして大丈夫なのだろうか?


「もしかして咲田さん、本気で私一人だと心配とか思っていませんよね?」



「思ってない思ってない。むしろ心強いと思っているから、心配するなって……本当は心細いけど」


「サラッと酷いこと言わないでくださいよ、もう!」


「あれ? 冗談なんだけど」


「目がマジでしたよ」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 グリアラ達と別れてから更に歩くこ事二時間、セイランス(があったであろう場所)に到着。


「ここがセイランスなのか?」


「はい。本当はもっと綺麗な都市のはずなんですけど」


 今目の前にある光景は、彼女の言葉とは真逆だった。多くの建物にはヒビが入っていてしまい、今にも崩れそうで、何個かの建物はすでに崩れてしまっていた。一言で表すなら崩壊都市というべきだろう。


「で、光の歌姫はどこにいると思われるんだ?」


「このまままっすぐに進んだ先に、大きな神殿があるんです。その一番奥にいると思われます。確証は何一つないですが、話だけは聞いたことがあります」


「とりあえずそこに向かうか」


 セイランスに足を踏み入れる。だがすぐに俺は異変を感じた。


「どうかされましたか? 咲田さん」


「ちょっと待て。何かが変だ」


「変って、どこもおかしな所はないはずですけど」


 今足を踏み入れた瞬間、何かが変わった。空気というか、その場の雰囲気というか、とにかくこの先に進んだら危ない気がした。


(先客がいる、俺たち以外に)


 そしてそいつが、俺達と歌姫の接触をさせないように何かを仕組んでいる。


(でも俺達以外に、この世界に今いるのは……)


 限られた数の人間のはずだ。では、他に考えられる可能性としては……。


「まさか」


「咲田さん?」


「まずいシャイニー、ここは一旦……」


 逃げよう、と言おうとした瞬間、空から何かが降ってきた。辛うじてその場から避けるものの、再び降ってきた一撃に、二人は分断されてしまった。


「な、何が起きているんですか」


「シャイニーよく聞け。今の攻撃を行ったのは……」


 説明する間も無く、再び降りかかる光の一撃。間違いない、この攻撃を行っているの光の歌姫本人以外に他にいない。だがどうして?


「ちっ!」


 攻撃を避けているうちに、シャイニーとの距離がどんどん離れていく。


(今の状況で合流は無理か)


 そう判断した俺は、シャイニーに大声でこの先の事を伝える。


「シャイニー! 今一緒に向かうのは危険だ。神殿で合流しよう」


「分かりました。でも場所分かりますか?」


「それらしきものを探せばなんとかなるはずだ! 今はこれを乗り越えよう」


「分かりました! お気をつけて」


「そっちもな」


 とにかく今は逃げるしかない。何が目的で俺達を狙っているのか分からないが、今は考えている暇などない。


(ちくしょう、これじゃあ四人の歌姫を揃える前に、こっちの身が持たないぞ)


 予想外の方向へ動き出した物語は、更に予想外の方向へと動き出す。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 一方グリーンウッドへと向かったグリアラとムウナにも、異常事態が発生した。


「どういう事よそれ!」


「そのままの意味! 私とあなたはもう敵同士、だから帰って」


「いつから私は敵になったのよ!」


「ずっと前から!」


「まあまあ、二人とも落ち着くのじゃ。今は喧嘩をしている場合では……」


『うるさい!』


 二人は森の歌姫に会うことはできたのだが、会うなりグリアラと森の歌姫クスハは大喧嘩。ムウナが止めに入ろうとしても、聞く耳持たずの状態だった。


(何故じゃ、二人は仲がよかったはずじゃなかったのか?)





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