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閑話3約束

 ある日の晩、あの夢の続きを見た。


 今度は視界がはっきりしていて、目の前には巫女服の女性がいる。私は彼女と何かを話しているみたいだった。でもこの夢、一つ不思議なことがある。


(何だろうこの、すごく現実感のある夢は)


 今まさに私がその場にいるかのごとく、夢は続いていく。いつの間にか場面は切り替わり、今度はどこからか帰ってきた巫女と、私が二人きりの空間。私はその場にいる。こちらから声をかけようと思ったが、それよりも先に声がした。


「向日葵?」


 それは紛れもなく私が求めていた咲ちゃんの声。でも何故だろう、この声が目の前の巫女から聞こえているような気がする。口を動かしているせいか、余計に彼女が喋っているかのように思えた。


「この声、咲ちゃんなの?」


「そうだよ。俺は今ここにいる」


「やっと、私会えたんだね」


 ずっと聞きたかった。姿が見えなくても、たった一度から声を聞きたかった。そして今彼の声が聞こえているということは、まだ彼は生きていることが分かった。


(私はそれだけでも嬉しいよ咲ちゃん)


「どうやらあるべき場所に戻るみたいだな」


 だがその再会の時間はあっという間で、本当はまだまだ話したいことがあったのに、私の意識は徐々に薄らいでいく。


「「絶対にまた会えるよね?」


「ああ。今度はちゃんとそっちで再会をするから、もう少しだけ待っててくれ」


「分かった。絶対に帰ってきてね咲ちゃん」


「約束だ」


 その言葉とともに、私の意識は完全に空間から離れていった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「え? 咲田生きているって?」


 翌日、雄一にこの事を話した。咲ちゃんが生きているという事実だけでも分かれば、もう絶望する必要なんてない。それだけでも嬉しかった。


「うん。信じられない話かもしれないけど、私咲ちゃんと話をした」


「そっか。生きていたのか」


「疑わないの? 結構私アレな話をしていたけど」


「前にも言っただろ? まだ生きているかもしれないって。それが現実になっただけなんだから、疑う必要もないよ」


「そうだよね。本当夢みたいだけど、生きていたんだよね咲ちゃんが。よかった……よかったよぉ……」


 ずっと不安だった。咲ちゃんにもう二度と会えないんじゃないかって。でもその不安も今なくなって、私の中には希望が広がった。だから自然と涙が私の目から流れていた。


「でもその涙は、あいつに会った時に取っておけよ」


「うん……」


(私達ちゃんと待っているから、絶対に帰ってきてね咲ちゃん)


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 セリーナがわざわざ手配した飛空挺でグリアラへと向かう中、俺はなかなか眠りにつけずにいた。


(今回は何とか向日葵を助けられたけど、また起きそうなんだよな……)


 どうしても一昨日までに起きた全てが、再び起きそうな予感がしていた。何とか今回は難を逃れたが、また次いつ起きるのか分からない。それにあの時の言葉は俺のものではない。一体あれは誰の声なのだろうか?


「こんな時間まで起きていたら、明日大変ですよ巫女様」


 ボーッとしていると、いつの間にいたのかセリーナが声をかけてきた。


「分かっているんですけど、色々考え事をしていたら眠れなくなって」


「一昨日の事ですか?」


「はい……」


 一応セリーナには細かく話してはおいたので俺が悩んでいるのか、彼女は理解してくれている。


「まさかコロナさんが、巫女様の命を狙っていただなんて思いませんでしたよ私」


「そもそも彼女は既に死んでいる。それなのに他の身体の魂を借りてまで、晴らそうとする恨み。私には理解しがたいです」


「でも恨みを買われるのは、仕方がないかと……」


「仕方がない? どうしてですか? 私が水の姫巫女がかつての惨劇のトリガーだからですか?」


「そうは言っていません。全て巫女様のせいではないです」


「全部ではないけど、原因の一部ではあるんですね」


「あ、えっと、それは……」


「もういいですよ。分かりましたから」


「巫女様……」


 別に直接的な原因が自分にあるわけではないのに、どこか責任を感じてしまっている。当時、どんな名前の人が水の姫巫女をやっていて、何をして何を起こしたのか今の俺には知ったことがない。でも、同じ水の姫巫女である以上責任がある。だから命を狙われても……。


『ごめんなさい、この世界の人間でもないあなたを巻き込んでしまって』


「え?」


 突然どこからか声がする。この声は……。


「もしかしてラファエルに襲われた時の……」


『突然な形でごめんなさい。でもあれだけは守らなければいけなかったんです。あの先にあるものは、確実に悲劇を再び生み出してしまいます』


「あの扉の先に何があるのですか?」


『あなたも知っていると思いますが、数百年前にこの世界は大きな災害に見舞われました。扉の先には、その災害の中枢と言えるものがあります』


「でもそれと、どうして水の姫巫女が関係あるのですか?」


『水の姫巫女はその中枢の鍵とも言える存在。二つが一つになった時、この世界は本当に滅んでしまいます』


「そんな大げさな」


『大げさと思ってしまいますが、事実なんです。だからあなたには知っておいてもらいたい、私達水の姫巫女の全てを。かつての惨劇を』


「水の姫巫女の全てを?」

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