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第24話五人目の巫女

 ひとまずコロナの件は置いておくことになり、俺は無事目を覚ましたことをアライア姫に報告しにいった。


「よかった。目を覚ましたのね」


「おかげさまで。ご迷惑をおかけしました」


「本当無事でなりより。あなたが闇の牢獄に飲み込まれたと聞いた時は、流石に焦ったわよ」


「自分自身も何が起きたのかサッパリで……」


 いつもと変わらない調子で話すアライア姫だが、突然真剣な顔になると俺の方へ歩み寄ってきた。


「でもあなた達も悪いのよ。あんな危険なところに近づくなんて、普通なら考えられない話よ」


「でもグリアラさんが、森の声を聞いて安全だって聞いたから……」


「もしそれすらも、闇の仕業だとしたらどうかしら」


「あ」


 嘘なんていくらでもつける。現に俺はそれに引っかかって、命の危険に晒されてしまったのだ。


「今回の件でよく分かったと思うけど、闇の牢獄はこの世で一番危険なものなの。あなたは何も知らないから教えてあげるけど、あれは全てを闇から生み出すことができるもので、魔物ですらも呼び出すことができるの。現にウォルティアはその襲撃に何回かあっているの」


「闇から生み出される魔物……」


 もしかしてそれが、世界を危機へと陥れるもので、あの城壁はその脅威から守る為にあるものだということだろうか?


「あなたも見たのよねこの世界の現状を」


「はい。まさか私が知らない外では、あんな事になっているなんて思いもしませんでした」


「でもあれが現実なの。誰もが目を背けたくなるけど、私達はその中で生きてきた。それはこれからも変わらないわ。その為に姫巫女達がいるのよ。勿論あなたも含めて」


 姫巫女という言葉を聞いて、ふとあの少女を思い出す。あの闇の中に佇む俺達と同じ巫女服を着ていた少女。彼女は一体何者だったのだろうか?


『その答え、聞きたい?」


「え?」


 俺の頭の中の疑問に答えるかのように、突如声が聞こえる。だが辺りを見回すが、誰かがいる気配もしなかった。


「どうしたの? 急に」


「いや、今声が聞こえたような……」


「私は何にも聞こえなかったけど」


 気のせいかな。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 アライア姫の部屋を出た後、さっきの声がどうしても気になってしまった俺は、一度部屋に戻ることにした。


(なんだったんださっきのは)


 突如聞こえた俺にしか聞こえない声。果たしてあれは一体何だったのだろうか?


『だからちゃんとボクが答えてあげるって』


 そう考えているうちに再び声が聞こえる。この声は、確か三日前に聞いたものと同じものだ。


「どこにいる? いるなら出てこい」


 思わず素の自分を出してしまう。彼女はミスティアに話しかけているより、その中の俺の魂に語りかけているように思えた。


『残念だけどボクはあくまで君の脳に語りかけているにすぎない。だから姿も何も見えない』


「だったらお前は何者だ。どうして俺の脳に語りかけてくる? 目的は何だ」


『そんなに一気に聞いてこないでよ。別にボクだってからかいに来たわけではないんだからさ」


「だったら何なんだ?」


『君は一度闇に飲まれてしまったもの。たとえどんな存在であろうとも、闇は君を決して逃がしたりはしない。一つだけ忠告しておいてあげる。じきにこの世界は滅びる。このボク達の手で』


「何だと!」


『それには君の力が必要なんだ。水の姫巫女である君の力が』


「誰がお前なんかに協力すると思う?」


『そう言うと思って、君の弱み握らさせてもらったよ」


 俺の弱み? 彼女は一体俺の何を掴んだというのだろうか?


『見たところによると、君はこの世界の人間ではないみたいだね。先の異空間から出て来たみたいらしいけど』


「な、何でそれを!」


『知らない方がおかしいよ。君はもう有名人だから。でもまさか中身が男だとまでは思わないだろうけど』


「お前まさかそれを最初から知っていて」


『当たり前でしょ? そうでなきゃこんな事しないだろうし』


 こいつは俺が男である事を既に知っていた、これは流石に予想外だった。だってこれが分かるのは、姫巫女と一部の人間だけであって……。


(ま、まさか本当に)


『さて、じゃあそろそろ本題に入りたいから、少しだけ顔を出させてもらうね』


 そう言ったと同時に、目の前に黒い霧が現れ、そこから一人の少女が現れる。この前見たものとハッキリそのままだった。そしてやはり、彼女は巫女服を着ていた。


「お初に……じゃないね。この前少しだけ会っているから。ボクは五人目の姫巫女、闇の姫巫女ラファエル。よろしくね」


「五人目の巫女……だと」


 今までそんな存在など聞いたことがなかった。だから当然驚いたし、闇の姫巫女だなんて名前を聞いただけでも、背筋が凍った。


「それで早速本題に入らせてもらうんだけど、君の幼馴染、ヒマワリちゃんって言ったっけ? 彼女の事なんだけど」


「向日葵がどうしたんだ? 何でお前が名前を知っている」


「ボクは何でも知っているのさ。それでその彼女ね、近々こっちの世界に来てしまうかもよ」


「それはどういう意味だよ」


「それを知りたかったら、ボクに協力して」


「ふざけるな! お前が何をしようとしているのか分かっている。世界を自分達のものにするつもりなんだろ? そんなのに協力できるか!」


「自分達のものに? ううん。そうじゃないよ。ボク達はあくまで壊れてゆく未来しかないこの世界を救うだけさ。何一つ悪いことなんかしていない」


「向日葵を囮にしている時点で、お前は間違っている! あいつに何かあったら、俺が守ればいい。お前の情報なんかもらわなくていい」


「ふーん残念。まだ時間はあるからゆっくりと結論を出せばいいよ。それじゃあね」


「あ、おい!」


 そう言うとラファエルの体は再び闇の霧に包まれ、俺の目の前から消えていった。


「くそっ!」


 何なんだよあいつは!

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