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第17話水の姫巫女という存在

「えっと、皆様はじめまして。この度水の姫巫女になりましたミスティアと申します。どうぞよろしくお願いします」


 まずは始めの挨拶。名前を名乗ると、大きな拍手が湧き上がった。それが収まるのを待った後、挨拶を再開する。


「正直最初はいきなり水の姫巫女になれって言われて、戸惑ってばかりでした。一週間近く経った今でも、結構戸惑っています。毎朝行う儀式とか、色々な奉仕活動など慣れない仕事ばかりの毎日。しかしその中でも様々な人と出会ったりして、少しずつではありますが、水の姫巫女としての役目を果たせるようになりました。それもこれも、ここにいる彼女の……セリーナさんのおかげでもあります」


 ここで軽くセリーナの紹介を入れる。彼女も紹介と同時に前に出て頭を下げ、そして一歩下がった。


「彼女がいなければ、この役目を果たせなかったと言っても過言ではありません。そしてこれからも、彼女は私の大事な存在であり続けてもらいたいです」


「巫女様、そんな恥ずかしい事をいきなり言わないでくださいよ」


 実はこの部分は予め考えておいた内容にはないもので、俺がこんな事を言うのもセリーナは知らなかった。だから突然驚くのは当然だった。まあ、言った俺自身も少し恥ずかしいけど、セリーナにはこの約一週間の間にも、かなりお世話になっている。いつかはお礼を言わないと、と思っていたので丁度いい機会だった。


「これからは更に水の姫巫女としてこなさなければならない仕事がありますが、セリーナさんだけではなく各国の皆様にも是非協力してもらえるように、巫女として勤めていきたいと思いますので、これからよろしくお願いします。以上です」


 最後に俺も頭を下げ、挨拶の締めとする。二日かかって考えた内容の割りには薄い内容なのかもしれないが、今の俺にはここまでの言葉しか浮かんでこなかった。まだ俺はこの世界を知らない。だからこれから

 ゆっくりと知っていけばいい。そしたら今よりはもっと多くの言葉が生まれてくるに違いない。


『巫女様、ありがとうございました。それでは挨拶も済みましたので、これから少々の時間、ご歓談のお時間を取らさせていただます。巫女様も是非多くの方々とお話しください』


 司会の指示で、俺はセリーナと共に壇上を降りる。さあここからがある意味の本番だ。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 それから三十分後、俺は改めて水の姫巫女の存在の凄さを知らされることになった。この三十分、話しかけられた人は数知れず。森の姫巫女が来ているか確認しようと思ったが、その余裕すら与えてくれずに時間だけが過ぎて行った。


「はぁ……」


 ようやくそれも落ち着きを取り始め、少し離れた所で俺は休憩をとっていた。


(これがこの世界での、水の姫巫女なんだな……)


 改めて思い知らされる自分が置かれている立場の大きさ。だから俺は少しだけ不安になってしまった。この世界を知らない異世界の俺が、世界を守る巫女なんて本当にこの先なれるのだろうか? それにいつかはこの世界から離れる事になる。その時胸を張って成仏できるのだろうか? 沢山の不安が俺の胸に押し寄せる。


「この前会った時よりは随分いい顔をしていると思ったけど、私の思い違いだったかしらね。水の姫巫女ミスティアさん」


 そんな不安にかられていると、誰かに背後から声をかけられる。勿論俺はその声に聞き覚えがあったので、あえて振り返らずに答えを返した。


「思い違いではない、と言いたい所ですけど、ちょっとだけ不安になってしまいまして」


「ふーん。まあ最初は私も不安だらけだったし、そこは大目に見てあげようかしら」


「随分と偉そうにするのですね」


「当たり前でしょ。私は森の姫巫女を長い間やっているのだから」


「あなたは先輩、私は後輩って事ですか?」


 そこでようやく俺は後ろを振り向く。そこには今日会っておきたかった人物。二日目に初めて城の前で会った俺と同じ立場の人間。森の姫巫女グリアラだった。


「つまりそういうこと。だから少しくらい偉そうにしたっていいじゃない」


「まあ、その気持ちは分かりますけど。そういえばまだあなたの正式な自己紹介を聞いていませんでした。私の名前はもう存じているようなので、あえて言いませんが」


「そういえばまだ自己紹介していなかったわね。私はこの世界を守る四人の巫女の一人、森の姫巫女グリアラよ。よろしくね水の姫巫女ミスティアさん」


 グリアラの方から手を差し出してくる。俺はその手をしっかりと握り、こう返した。


「どうぞよろしくお願いします。森の姫巫女グリアラさん」


 これが俺にとって初めての、正式な他の姫巫女との出会いとなった。


「ところでミスティアさん、今から少し外にでないかしら?」


「外? 何かするのですか?」


「あなたとは一度ゆっくりとお話をしたかったの。だから少しだけ時間をいただけないかしら」


「別に構いませんよ」


 簡単に彼女の誘いに乗ってしまったが、果たして良かったのだろうか? それは分からないが、今考えるとこの誘いに乗ったことが、このパーティーの一番の山場を迎えることのキッカケになるのを、この時俺は知らなかった。

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