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第10話とある水の姫巫女の初日-水上都市ウォルティア-

 アライア姫の部屋を出て、セリーナと合流した後、俺は彼女と共に初めて城の外に出ることになった。そもそも今まで俺がいた場所が、ウォルティア城内だという事を先程知った(湖の中にある空間も含めてそう呼ぶらしい。ちなみにアライア姫の部屋は地上の最上階にあった)。


「巫女様には仕事をいち早く覚えてもらうのも大切ですが、まずはこの国、水上都市ウォルティアを知ってもらうことが大切です」


 そう言いながらセリーナは何故か小舟を出す。えっともしかしてとは思うけど……。


「あの、もしかして移動手段が船だったりするのですか?」


「その通りですよ巫女様。ここはその名の通り、国の面積の大半が水で出来ています。何せ湖の上にある国ですから」


「だからと言って、ちょっとこの小舟は怖いのですけど」


「大丈夫ですって。落ちても溺れやしませんから」


「いやそういう問題ではありませんからね!」


 そもそもこんな小舟で移動できるのかが不安だ。それでも大丈夫だというセリーナは、半ば強引に俺を小舟に乗せ、街中へと繰り出した。


 でもその不安は、街に出てすぐに吹き飛んだ。


「いかがですか巫女様。ここが世界の中心の都市と言われているウォルティアです」


「へえ、ここがウォルティアですか」


 小舟で移動すること五分、街中へと入って行くと何故ここが水上都市だと呼ばれているのかすぐに理解できた。この都市は道と呼べるものがほとんどなく、まさに水の上に店などの家屋が立ち並んでいて、そこを行き来する手段は、所々に架かっている橋か、こういった小舟だった。現にこの都市を行き交う人のほとんどが今俺達が乗っている小舟を使って移動していた。


「確かに水上都市と呼ばれるだけありますが、これだけ舟が行き交うと、事故とか起きやすいのでは?」


「その点はご心配なく。この都市はこれまで一度も事故など起きたことがない平和な国ですから」


「一度もって、結構すごいですね」


「それだけこの国が安全だとう事ですよ」


 更にゆったりと小舟でで進んで行くと、遠くに大きな壁があるのが見えた。


「セリーナさん、あれは何ですか?」


 気になった俺は、セリーナに聞いてみる。


「あれですか? あれは一言で言うならこの国を守るための物だと考えてもらって構いません」


「この国を守る? そういえば昨日セリーナさんが見せそこなった物と何か関係があるのですか?」


「それほど深刻な問題ではないので、今は巫女様は気にすることはありません。国を守る為にあるものだと考えているだけでいいです。今は」


「そう言われると余計に気になるのですが……」


 だがその後セリーナはそれについては一切答えてくれなかった。俺が深く考えすぎなだけなのかもしれないけど、セリーナのあの言い方だと何かあると考えてしまう。


(それに今はって言われると、この後俺は何かを教えられるみたいで怖いんだけど)


 一体この壁の先に何があるのだろうか?


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 その後一時間少々ウォルティアを回った後、元の場所に戻ってきた時、後ろから誰かから話しかけられた。


「もしかしてあなたが、新しく水の姫巫女かしら?」


「え? はい。そうですけど」


 突然言われたので俺は思わず返事をしてしまう。後ろを向くと、俺と同じ巫女服を着た一人の少女が立っていた。見た感じでは俺より少し年下といった所だろうか。


「やっぱりそうだったのね。一度は見ておきたかったから、都合が良かったわ」


「あ、えっと、あなたは?」


「別に名乗るほどの者ではないわ。恐らくまたいつか会えると思うから、その時にでもゆっくりお話しましょう。水の姫巫女さん」


 謎の少女はそれだけ言うと、俺に背を向けて歩き出してしまった。呼び止めようと思ったが、呼んだって恐らく無視するだろうからやめた。


(いつか会えるって、巫女関係の人なのか? それにあの巫女服、俺が着ているものと少し違うような……)


 俺が……いやこの国で巫女服を着ている人のほとんどが、

 水色と思わしき色のものを着ているが、彼女は青というよりは緑色に近かった。そこから考えると、恐らく彼女はこの国の人間ではないと考えていいかもしれない。


「お待たせしました巫女様。さあ戻りましょう」


 先程の巫女服の少女の姿が見えなくなった頃に、小舟を元に戻しに行っていたセリーナが戻ってくる。


「巫女様? いかがなされましたか?」


「またいつか会える…か」


「巫女様?」


「あ、すいませんセリーナさん。ちょっと今、不思議な人と会いまして」


「不思議な人?」


 俺は先程の巫女服の少女についてセリーナに説明をする。セリーナはどうやらその少女が何者なのか分かっているらしく、俺の疑問に答えてくれた。


「その少女はもしかしたら、森の姫巫女かもしれませんね」


「森の姫巫女?」


「はい。水の姫巫女がこの国にいるように、この世界にはあと三人の巫女がいます。そしてその少女は、恐らく森の姫巫女であるグリアラ様です」


「でも何故その森の姫巫女がここに?」


「それは私にも分かりません」


 森の姫巫女グリアラ。


 俺と同じ境遇にある少女か。


(彼女も俺と同じく中身が男だったりしてな)


 ってそれは俺だけか。

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