犬耳可愛いだが人間、てめぇはダメだ
あれから親父殿が俺を狩りに連れて行きます、いや、超楽しいですね。
こういうサバイバルみたいなの大好物なんですよ、親父殿から色々と教えてもらいながら魔獣を狩る。
素晴らしい日々ですね、本物の犬がいないのはとても残念ですけど。
「いいなぁエインちゃんは、狩りに連れて行ってもらえて」
「ん・・・」
首肯する、いや楽しいですしね。
「この毛皮もエインちゃんがとってきたんでしょ?」
「ん・・・」
再び首肯、そいつは猪みたいな魔獣の毛皮で殺しづらかった。
あ、今話してる子ですか?隣の家のエリちゃんです、柔らかいふわふわの茶色の髪の毛と犬耳がもう興奮しちゃいますね。
今日はエリちゃんに頼まれてエリちゃんの家に泊まりなんですよ、女になって初めて役得だと思いましたね、匂いが最高ですよクンカクンカ。
「えへ、エインちゃんいい匂い」
スリスリとパジャマ姿で擦り寄ってくる幼女もといエリちゃんかわいいいいいいいいいいいいい!!
マジ可愛いですよ、死にそうですよ、俺と同じショートにしたときに「えへへ、お揃いだね」って言われた時と同じぐらい死にそうですよ!
そうこうしているうちにエリちゃんが寝ちゃいました、頭をひとしきり撫でた後自分について考えます。
この世界は一体何なんだろうか、元の世界には別にそこまで興味もないしどうでもいいんですが・・・
女・・・なんですよねぇ俺、一人称は変えるべきなのだろうか、いや俺ちょっと待て、体は変わっても心は変えないべきだろ。
でも一回だけ家族の前で俺と言ったら母上殿に説教されたんだよなぁ。
「どうしよう・・・」
この口は誰かがいるときは喋らないくせに人が聴いてない時には普通にしゃべるんですよねぇ、まったく。
おや、エリちゃんがしがみついてきました、可愛いですねぇ。
まぁ、この問題はまた今度にしましょう。
エインちゃんっていう子がいるの、その子はとっても可愛くて強くて、でもどこかモヤモヤするの、なんていうかすごく気になるの。
今日もお泊まり会で私が話していても少しだけ寂しそうな瞳が奥からチラチラと覗いてる。
それがとっても悲しくてついお父さんやお母さんにするように甘えてみたら寂しそうなのは消えました、嬉しくてもっと甘えてたらエインちゃんの体がとってもあったかくてウトウトしてたの、そしたら。
「どうしようか・・・」
どこか別の何かを考えてる感じでエインちゃんがどこかへ行ってしまうような感じがして、力いっぱいにエインちゃんを抱きしめたら驚いたふうに体を少し揺らしたあと、頭や耳を撫でてくれました。
エインちゃんは私と同い年なのにいろんなことを知ってるの。
姉妹、兄弟のいない私に誰も知らないようなゲームを教えて一緒に遊んでくれます。
私エインちゃんが大好き、エインちゃんがどこかに行っちゃたらとっても悲しいの・・・
そんなことを考えてたら眠くなってきてエインちゃんに頭を撫でられながら私は安心して眠りに落ちました。
最近森の様子がおかしい、この辺に出没しない魔獣が現れている。
それに・・・
先ほど頭を射抜いたゴリラのような魔獣の背中を見ると裂傷があった、多分剣でできたものだろう。
「・・・」
血の匂いが森に蔓延している、エリちゃんや村の大人たちがここのところ怯えた感じなので何かがあったのだろう。
前世の知識から思うと、戦争があったのかもしれない、何にせよ魔獣が凶暴化しているのだ、気を付けなければ。
犬耳が伏せられてるのは色々と可愛いですが、かわいそうです。
「・・・?」
人工物の匂いがしますな、なんというか鉄くさい変な臭い、ちょっとだけ心が惹かれると言えばそうでもないような不思議な臭いが。
導かれるようにそこに行くと人間がそこにいました、村にいる優しそうな人間と違って武装をしていて超怖いです。
「怪我・・・」
頭や肩から血がだくだく出てます、超出てます。
このままだと出血多量で死ぬか、魔獣がこの人を食べちゃうかするでしょう。
助けるかどうか悩む、正直面倒だ・・・でも、まぁ助けてあげるか。
「・・・・・・ん」
回答を得て首を振る、最近クセになりつつあるな・・・怖いですねぇ。
取り敢えず場所を移さないと、ひとまずこの人の武装を解除してっと。
「ぐっ・・・」
鎧を剥いでいたら痛そうな悲鳴を上げます、今助けますからねぇ。
「君は・・・一体・・・」
朦朧としながら呟く青年は、チッ、イケメンかよ死ねよ、興が削がれたわ。
「静かに」
軽くなった男性を担いで・・・背が足りなくて男の頭が地面に落ちる、これだからノッポは・・・仕方がなくお姫様抱っこで担ぐ、ああキメェ、正面から男なんざ見たくねー、捨てちゃおうかな。
走りながら考える、どうするか・・・村に外の人間を入れるのは駄目だから俺の秘密基地に持ってくか、匂いつくの嫌だなぁ。
この体になってから妙に鼻が効いて嫌だ、特にトイレとか最悪だよ。
しばらく経つと清流が見えてきた、村に流れる川の源流の一本だ。
その傍に立つ一番大きな木の上に俺が秘密裏に建設した家がある。
男性を一度担ぎ直して、木の表面を引っ張ると簡単に取れて大きな洞が出てくる。
そこの中に梯子があって登れるようになってるんですよ、外からバレないように作るのは大変だったぜ。
中には俺の戦利品の毛皮やら豚人の持ってた剣やら骨やらが置いてある。
羽毛布団が欲しくて極彩鳥を乱獲したことがあって、虹色の布団のキモさがよくわかった。
取り敢えず藁に毛皮が敷いてある腰掛けソファもどきに男性を座らせる。
頭の傷は血こそたくさん出ているが大したことではない、肩の傷が問題かも、どうやら矢で射抜かれたらしく、穴があいている、貫通はしていない。
切り傷じゃなくてよかったと言うか何と言うか。
「んー・・・・・・」
思考、何を使おうか・・・沢山作って種類も多いから全部試したいんだけどなぁ。
木と毛皮で作った箱もどきから塗り薬のはいった小さめのビンを取り出す。
あ、そうだ包帯も出さなきゃな、麻布を裂いて作った包帯も一緒に出した。
「よし・・・」
水瓶から水を少しだけ取り出し男の横に置く、布に染み込ませて傷口を軽く叩いていく、うはぁいいね、グロいのもいいね、犬もいいけどグロも好きだよ。
綺麗に拭いたあと傷口が開かないようにしてその上から薬を塗っていく。
苦悶の表情を浮かべる男性、もっと苦しむがいい、わははは。
丹念に塗りこんで布をしっかりと巻く、あんまり伸縮しないから加減が難しいけどどうにか失敗しないで出来た。
あの薬は傷によくて殺菌作用もあるらしい、傷は新しかったし無事を祈ろう、ダメだったら諦める、身ぐるみを剥いで捨てます。