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無音
「生きて帰っておいで」と泣いた
母が病に倒れた
「俺は不死身じゃ」と笑って行った
父が海の藻屑となった
「戦果をあげておいで」と泣き笑いした
姉が炎に焼かれた
「必ず帰るよ」と微笑んだ
兄が空に散った
幾つの何十の何百の何千の
約束が祈りが未来が
消えたのだろう
たった数年で
何万の何十万の何百万の何千万の
怒りが憎しみが哀しみが
生まれたのだろう
その後に
産まれてしまった私たちは
何億の何十億の何百億の何千億の
葛藤と闘争と慈悲と赦しと罪と罰との
果てに生きているのだろうか
己の生にても生まれる
懺悔と快楽とを
未来へとつなぐのだろうか
だが、やがてすべては忘れ去られていく
紡いでも紡いでも
小さな言の葉は
風にさらわれ消えていく
2019/09/16




