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右を見たら左 左を見たら右 天邪鬼ではないと知っている

拝啓 沈丁花の甘い香りが春の便りを伝える季節になりました。いかがお過ごしですか?

私は貴方を思う心に押しつぶされそうになっています。

会えないからこそ、大きくなる感情とはこういうものなのだと、しみじみ学んでいるところです。

さて、貴方の噂を聞きました。素晴らしいことをなさっているようですね。詳細までは聞けませんでした・・・・・・。

私がどんどん貴方にふさわしくない人間になっていっていることを、感じます。

貴方が物理的でも、社会的にも、遠くの人になっていることを嬉しいとも喜んではいるのですが。

私はもう貴方の隣に立てません。だから、この手紙で最後にしようと思います。

貴方に向けるこの心を捨てようと思うのです。

貴方はすでに私に向ける心を捨てているでしょう。器用な貴方のことですから。

やっとやっと私は決心がつきました。長い時間をかけてしまって申し訳ございません。

この手紙で本当に最後です。私は貴方に向けた心を捨てます。

それでは、さようなら。



白い紙にブルーブラックのインクで書かれた彼女の字

綺麗でも達筆でもないけれど、はっきりとした読みやすい字

本心を押し隠して書いているのではないかと思ってしまうほど

震えている「さようなら」の文字

返信を求めてはいないだろう

返信を望んでいるだろう

どう伝えたら伝わるだろう

どう記したら伝わるだろう

もう会いに行ってしまおうか

もう電話してしまおうか

動けないのは戸惑っているからか?

動かないのは迷っているからか?

愛しているけれども愛していない

恋しているけれども恋していない

彼女もそうだろうか?

彼女は違うだろうか?

  ああ

    さようなら


 そうか

  はじめまして


やり直しではない

 そうでしょう?

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