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死にかけてしまった
死にかけてもなお変わらぬ日常
それは心の奥底に置かれた意識が
一寸たりとも変わらなかったから
表層の感情に変化は一つ
死にゆくための片付けをすること
後に遺していく人が
笑って片付けられるように
何一つ悩まぬように
私は私を生きるなかで
私を片付けておかなければならない
そう強くつよく思っている
死にたくない
そう思う心はある
それは未練だ
知らぬことにたいしての
それを遺して逝くわけにはいかないのだ
それは遺される人への冒涜にもなりえるのだ
そう感じてしまったから
私は私としてあることを
やめるわけにはいかないが
私が私であることを遺していかずとも
残るものがあることを知ってしまったから
死にかけた経験は私の糧にはならないが
悲しませ哀しませ苦しませた結果だけだが
それは過去の笑い話になって
どうでもいいことになるように
私は私であり続けながら
私は私を片付ける矛盾を
のんびりと生きていくのである
2023/2/5