107/118
生きている記録.0
階段に咲く色とりどりの傘を
私は見ていた
「邪魔」とも「どけ」とも言われず
静かに流れていく色を見ていた
押されるでもなく歩き出す私の
背中は濡れてしまった
季節も流れて
透明な傘の下 白黒の服が大半になって
冷たい手に白い息を吹きかける
私は歩き続けた
空虚なものが胸に溢れる
こぽりこぽりと落ちていって
私の世界を侵食する
息があがる
足元はおぼつかず
目はくらむ
存在が強くなったのは
私か無か
脆い硝子の上に生きているようだ
簡単に崩れ落ちてしまう
恐怖は落ちた先のことをさす
決して今ある足元を恐れてはいない
日常の崩壊は呆気なく訪れる
2022/11/21