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嘘
本を読む。物語を読む。私は文字の嵐に溺れて流され、感情を揺さぶられて泣き、怒り、笑い、憎む。物語が終わりを迎えて現実に戻ると、一瞬、ほんの少し、いびつな世界が目に入る。自然を目にして歌を紡ぐ私には自然と違ういびつな世界が目に入る。それを不快に感じない。いや、いびつな世界を見るために今と離れるために、本を読む。物語を読む。
夢を見る。夢を妄想する。私は夜の理と昼の演技に溺れて泳ぎ、現実と違和感に挟まれる。妄想をおえると嗤うことしかできなくなる。好い人になろうと悪いことをする。
拒絶する。放棄する。私は恐怖の涙にのみこまれて溺れる。理想と現実の狭間を見るとはなしに見てしまう。逃げ足を磨くこともなく、立ち尽くしてしまう。
あ、私は私に嘘をつく。世界の意味さえ投げ捨てて。誰にも気付かれないようにと嘘をつく。嘘をついて世界から逃げる。逃げることもできないのに。逃げられると嘘をついて。
2011/11/26