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第16章~桜舞~

ワイワイガヤガヤワクテカキタコレ


「はーい、静かにしろお前ら。いくら今日が卒業式だからテンションたけぇんだよ。もっとローテンションにしろ。そして泣き喚け。それを見て先生笑うから。」

「せんせーい、それは酷いんじゃありませんかー。」

「そうですよ先生。教育委員会に訴えますよ。」

「てゆうか自分達と一緒に学校から卒業させますよ。ただ再就職先があるかどうか。」

「だれがうまいことをwww」

「いや全然うまくねえから。」


卒業式だというのに、クラスの連中はうるさく騒がしい。

うっとうしく感じることもあるこの光景が、もう味わえなくなると思うと、それはそれで寂しく感じたりする。


窓の外を見る。

木々が生い茂る山並みが見え、暖かくなってきてるとはいえ、まだ少し肌寒い外。

少し窓に霜が出来ている。


「えぇいうるさい。とりあえず後輩達が作ったこの花を胸に付けろ、女子はもっと胸をはだけさせろ。」

「先生、セクハラで訴えますよ。」

「二度と再就職出来なくしますよ。」

「てか良くいままで教師やってこれましたね。」

「大人ってホント怖いよね。」

「せんせーい、あなたは大人でしょうに。」

「先生はね、体は大人でも心は少年のままなんだよ。俺の心は中学2年からずっと止まったままなんだよ。」

「先生、僕らが中学2年の時はそんな汚れた人間ではありませんでした。一緒にしないでください。」

「それはあれだよ、ジェネレーションゲップってやつだ。」

「ゲップじゃありません、ギャップです。なんですか世代のゲップって。」

「いやそりゃお前あれだよ、世代ごとにゲップてのは全然変わってくるんだよ。てかなんの話だよこれ。なんで卒業式にゲップの話なんてしてんだよ。バカかお前ら、バカか俺。」


そんな感じでいつもどおりなホームルームが続く。

まさか最後までこんな感じとはな。


先生が時計を見る。

「ん、よし。お前らそろそろ時間だ。体育館に向かうぞ。」


はーい!っと先生の言葉に答える生徒一同。



体育館の前にそれぞれのクラスが順番に並ぶ。

「う~ドキドキしますネ。もう心臓バックバクデスよ!」

「夏美、そういう時はね、こう手のひらに“人”という字をね三回書いて飲み込むのよ。」

「秋穂緊張しすぎ。“人”という時が“入”になってる。」

「あっ、ホントだ!うぅ~ダメだ、もっかい最初から。ひと、ひと、ひと...。」

「たっく、緊張しすぎだぜお前ら。」

俺も緊張してないわけではない。

俺だって人間だから緊張はするさ。

でも俺たちがやろうとしてることなんかに比べたら、こんなところでうろたえるわけにゃあいかない。


「よっしゃあ、お前らそろそろ入場だから静かにしろ。」

先生たちがそんなことを注意しだす。

今まで騒がしかった生徒達もここになって急に黙り込む。

みんな緊張を紛らわすために騒いでいたのだろう。

騒ぐことを静止させられた生徒は黙ってこの緊張に耐えなければならなくなる。

挙動不審になる生徒、じっとしてられなく貧乏ゆすりをする生徒、時計を頻繁に確認する生徒、その他もろもろetc...。


そして体育館内で響くアナウンスの声。

そのアナウンスが終わると共に流れる吹奏楽部の音楽。

最初の組から入場が始まる。

B組の俺達は2番目の入場であり、すぐに順番が回ってきた。

体育館に足を踏み入れる、その瞬間、今まであまり聞こえていなかった音が耳に入る。

吹奏楽部の音楽、在校生や卒業生の家族の拍手、上から注ぐ蛍光灯の明かり。

そのすべてが視界に入り、胸の奥にグッと何かが込みあがってくるような衝動を感じた。


一瞬足を止めそうになったが、すぐに我に返り足を進める。

そして自分達が座る席へと向かう。

途中父さんと母さんを見かけて、軽く手を振った。

なんでだろうな、少し恥ずかしかった。

今の俺の顔、メチャクチャ真っ赤だろうな。

鏡で見たら大爆笑しそうだ。


そしてすべての卒業生が入場を終え、着席する。

そしてありきたりな校長の挨拶から始まる。

このときだけは立ったまま聞かずに済むからか、眠気が余計に舞い込んだ、と思われたが案外真面目に聞き入ってしまった。

緊張しているせいか、あまり眠いと感じなかった。

そして校長のありがた~い話が終わり、校歌斉唱。

そのあとに生徒が決めた卒業ソングを合唱する。

こういうときは定番の卒業ソングを歌うらしいが、うちはピロウズを歌った。

曲名はFunny Bunny。

これは俺の好きな曲で、俺的にはとても卒業にいいと思った。



Ah~王様の声に逆らって

ばれちゃった夜にキミは笑っていた

Ah~オーロラにさわれる丘の上

両手をのばして僕を誘っていた


ほどけてバラバラになったビーズ

キレイだねって夜空にプレゼント


Ah~道化師は素顔を見せないで

冗談みたいにある日居なくなった


世界は今日も簡単そうにまわる

そのスピードで涙も乾くけど


キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ

風の強い日を選んで 走ってきた


今頃どこでどうしてるのかな

目に浮かぶ照れた後ろ姿に

会いたいな


キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ

風の強い日を選んで 走ってきた


飛べなくても不安じゃない 地面は続いているんだ

好きな場所へ行こう キミならそれが出来る



合唱が終わる。

歌ってる間、走馬灯の様なものが頭を駆け巡った。

ここに入学した時の記憶、あいつらと出会った時の記憶、一緒にたくさん遊んだ記憶、

あいつらと気持ちをぶつけ合った記憶、卒業に向けて計画を練り一生懸命頑張った記憶。

言い出したらキリがない。

この学校に入学してから、楽しいことだけじゃなく、悲しいこともあった。

そんなことすべてひっくるめて、俺はこいつらと出会えてよかったな、この学校に入学してよかったなって思えた。


そしてそのあと、卒業証書授与が始まる。

一人一人階段を上がり、舞台に立ち、校長から卒業証書をもらっていく。

俺も名前を呼ばれ、舞台に向かう。

席に帰る途中、来客席に先日卒業式を終わらせた、日和たちを見つけた。

そして俺を品定めするかのように、誰かの生徒の父親×3に睨まれていた。


そして少しびくつきながらも席に戻る。


ここまでは順調だ。

でも長いよな、卒業証書授与って。

待ってる間、俺は今までを振り返った。




やべぇ、泣きそうだよ。

今の俺、涙腺メチャクチャユルッユルだから多分すぐ泣いてしまいそうだ。




でも泣くのはまだ早い。


俺はまだ成し遂げていない。


俺は、いや俺達が今日のために作り上げた壮大な計画。


卒業式に、桜を舞い散らすこと。


盛大な桜吹雪を卒業生のみんなやこの学校にささげること。


それを達成するまでは・・・・・、



泣くわけにはいかないんだ!!



俺はポケットから携帯を取り出しメールを特定のメンバーに一斉送信した。


始めるぞ!



俺のメールを合図に動き出す、夏美と秋穂と冬佳、そして生徒会の奴らと在校生数名。


俺を抜いたSQのメンバーと生徒会長で大砲点火、残りの生徒会のメンバーと在校生数名で送風機を。

みんなが位置に着いたことを確認する。

メールが返ってくる。

『いつでもだいじょぶデスよ~!』

『春樹、やっちゃいなさい!』

『ファイト!』

『俺達3年生徒会の最後の大仕事だ。始まりは任せるぞ。』

『先輩、こっちは準備万端ッスよ!』


「さぁて、いっちょやりますか!」


俺は席を立ち、舞台に向かう。

最初の生徒たちが数名動いたことで少し館内がざわつき、俺が舞台についた時にはピークを達していた。


俺は、スタンドに付けられていたマイクを外し手に取った。


「あーあー、てすてす。」キィィィィィンッ

おっと失礼。


「えーご来客の親御さんたち、地域の人たち、先生一同、以下省略。本日は卒業式にご出席いただきまことにありがとうございます。」

そして一息おいて、

「俺は3年B組、桜井春樹です。何故自分がここでマイクを持ち舞台に立っているかというと、・・・別にただお喋りをしに来たわけでもなければ、小話をしに来たわけではありません。」

少し笑いの声が上がる。

まぁまずは張り詰めた空気をほぐすことに成功だ。


「実は、俺はこの学校を卒業するに当たり、何か思い出を残せないか、一緒に卒業するみんなに何か出来ないだろうかと考えていました。」

「はっきり言って、俺はついこの間まで、卒業するからって何も変わらないだろ、なにごともなく卒業できたらいいな、なんて思っていました。」

「でも俺なりに真面目にこれからのことを考えました、まぁ少し遅いとは思いますが。」

「しかし、俺はまだその答えを見つけられてはいません。いまだに悩んでいます。」

「それでも、そんな俺でも最後は何か残したい、先の答えが見つからない場合は、まずやりたいことをやろうと思いました。」

「そしてこんな俺のわがままに、みんなは協力してくれました。」

「俺が導き出した答えを今からご覧になってください。」

そして俺は一礼をした。


そしていつものテンションに切り替えた。


「さぁ、卒業生諸君、在校生、先生方、ご家族、野次馬その他もろもろエトセトラ!」

「テンションマックスであげてこうか!!」

うおぉぉーーーーーーーー!!!!


卒業生に続き在校生、そして盛り上がりはまわりへと感染していくように、館内は最大級の盛り上がりをみせた。

「カウント10から始めるぜ!」


10、9、8、7、6、5、4、


3!


2!!


1!!!



「さぁ咲き誇れ!ファイヤァーーー!!!」

俺は0の合図に合わせて手を振り上げた。


ゼローーーーーッ!!!



ドオォォォーーーーーン!!!


大砲の音が館内の隅から鳴り響き、体育館の中央に向けて大量の桜吹雪が舞い散る。


ブオォォォーーーン


それに合わせて、送風機が桜をより一層に舞う。


舞い落ちようとする桜も、送風機でもう一度浮かび上がる。


その光景は、とても幻想的でもあり、とても綺麗だった。


体育館は、拍手喝采で包まれた。


驚きの声、感動の声。


どうやら俺の作戦は成功だったらしいな。




そうして春樹たちの卒業式は幕を閉じた。



そして、やりきった少年はその場を後にし、

それを見つけた少女達は少年を追いかける。


自分達が作った、桜の花道を通って。

とうとうここまで来ましたヨ!(=^▽^=)

クライマックスデス!!\(^O^)/


これで終わりですが、まだエピローグに続くので、最後までよろしくお願いします!!o(>ω<)o

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