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第15章~想々~

チュンチュンチュンチュン


鳥がさえずりだし、朝を迎えたことを知る。

目覚ましをみると、時間は6時。

目覚まし自体は、6時半にセットしていた。

要は、目覚ましより早く目を覚ましてしまった。

理由は単純。

ただ今日という日が楽しみであり、楽しみすぎて早く起きてしまったってこと。


プルルルルルッ


自宅設置の固定電話が鳴る。

「こんな朝早くに誰だろう?」

俺はおもむろに電話をとる。

「はい、桜井です。」

「おぉ起きてたか、春樹!俺だよ俺。」

「・・・、あれ~電波がわるいですね~。スイマセン切らしてもらいます。」

「うぉい!待て待て、俺だよ!?お前の父親だぞ!」

「スイマセン、俺俺なんて言う父親はウチにはいません。てかいりません。」

「いやいやいや、わかった、わかったからまず落ち着こう。落ち着いて話そうじゃないかmy son。」

「発音いいなオイ。はぁ~、で何のようだよこんな朝っぱらから。」

「いやな、今日は記念するお前の卒業の日だろ。だから春子と一緒に見に行こうと思ってな。」

「仕事の方は大丈夫なのかよ?」

「心配するな、ちゃんと仕事は終わらしている。」

「そうなんだ。母さんは元気してる?」

「あぁ元気だぞ、何なら代わろうか?今寝てるけど。」

「いいよ、またあとで会えるんだから、寝かせてあげろよ。」

「そうか?わかった。」

「用事はそれだけか?」

「おぉ、まぁあと言えることは、今日は頑張れよ。」

「頑張るって何をだよ?」

「はは、なんだろな。じゃあ切るぞ。」

ツーツー

電話は切れて、無機質な音だけが聞こえる。


俺は受話器を置き、制服に着替え、必要なものだけ入れたカバンを持ち、

高校生活最後の登校を始める。

家の扉を開けると、東からの太陽の明かりに目を細める。

俺はその光を手で遮ろうとせず、そのまま浴び続ける。

「天気は良好、いい卒業日和だな!」


俺はガレージから自転車を出し、高校に向けて漕いでいく。



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-夏美Side-


ピピピピピピッ、トン

「ふぁ~ぁ、ねむねむ。」

気持ち~朝デスね。

こんな朝は二度寝に限るデスね~。

「夏美~、起きなさ~い!今日は卒業式でしょ~!」

卒業式?

「おぉ、そうでした!」

そういってベットから飛び出たボクはすぐさま制服に着替える。

階段を降りていきリビングで朝ごはんの準備をしていたお母さんに会う。

「今日は早いデスね。」

「ふふ、可愛い娘の卒業式ですもの~。」

「お父さんは?」

「お父さんは今着ていく服選びで自分の部屋にこもっていますよ~。」

「もう、お父さんったら、自分が卒業するでもないのに。」

「ふふふ、それが父親ってものですよ~。」

そしてお母さんはボクに近づいて頭を撫でる。

「それに今日は噂のあの子が見れるんですから少し張り切っているのよ。お母さんも楽しみだな~って思ってるのよ。」

「な、なに言ってるデスか~!べ、別にその春樹とはその、そうゆう中では...。」

「ふふふ、夏美がそうゆうならそうゆうことにしときましょう。ほら、早く朝ごはん食べてくださいね~。」


ボクは、朝ごはんを食べて身支度を整え、自転車に乗り学校に向かった。

朝日がボクを照らす。

そんな朝日に手をかざし、少し目を細める。

今日、ボクは思いを伝える。

届くかな、ボクの想い。

そう思いながら、太陽に手を伸ばす。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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-秋穂Side-


「これでよしっと。」

私は長い髪を後ろで結い終えるとカバンを持ち、家を出る準備をした。

時間は7時を過ぎたところ。

少し早い気がするけど、なぜか待っていられなくすぐにも学校に早く着きたいと思っていた。

そして私は玄関に向かったところで、父さんと会う。

「ん、秋穂。今日はやけに早いな。デートか?」

「ななな、何言ってるのよ父さん!今日は卒業式で、ただいつもより早く行きたいなー、なんて思っただけで決して春樹とのデートなんかじゃないんだから!!」

「ほぅ、別に俺はその春樹って奴とデートかなんていった覚えはないのだがな。」

あっ、つい言っちゃった。

「もう、今言ったことは忘れてね!」

「まぁ別に構わんが、またあとで紹介するんだぞ。」

「父さん!!」

「もうあなた、秋穂をいじめないの。」

「いや別にいじめたつもりはないんだが、少々からかいの度が過ぎたかな。」

「秋穂、いってらっしゃい。それと、頑張ってきなさい。」

「うん!」

そう言って私は、玄関の扉を開け、エレベーターにのり、自転車置き場に向かう。

エレベーターがゆっくり降りていく。

エレベーターの窓から、朝日が差し込む。

しかし階を跨ぐたびにすぐに陰り、すぐに光が差し込み、それが数回繰り返す。


そうしている間に、1階に着いた。

時間としてはあっという間に着いたが、私はいつもより少し長く感じた。


私は、今日告白する。

私の思いは届かないかもしれないけど、伝えずにはいられないから。


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-冬佳Side-


「ふぅ、読み終わった。」

わたしは本を閉じ、時計を見る。

「もう7時。」

昨日早く寝すぎたせいで、今日は6時前に起きた。

2度寝するわけにもいかず、とりあえず本棚から適当に取った本を読んでいた。

取った本は、恋愛小説。

片思いをしていた女の子が好きな人に告白してOKをもらい付き合うことになる、というありきたりな内容。

それでも今のわたしには色々と共感できる部分がある。

どんなに可愛いそぶりをみせても、相手の男の子は鈍感で気付かない。

どんなに近づいても、なんとも思わない男の子。

なんでこの人はこんなに鈍感なんだろう?

読みながら、彼のことを思い出しながら共感する。


トントントン

ドアをノックするあとに続くママの声、

「冬佳ちゃん、起きてる?」

わたしは、そのまま言葉を返す。

「起きてる。朝ごはん?」

「そうよ、朝ごはんができたから居間にいらっしゃい。」

「わかった。」

わたしは着替えと準備を済ませ、居間に向かう。

居間に着いた時、すでに家族全員がそろっていた。

「おぉ冬っぺ、おはよう!」

「おじいちゃんおはよ、今日もまだポックリ逝ってなかったね。」

「ふぁっふぁっふぁっ、冬佳の嫁入り姿を見るまでは早々には死ねんわ。それに今日は冬っぺの卒業、最後の制服姿じゃぞ。ボチボチねてなんかいられんわ!」

「もうお義父さん、あまりはしゃぎすぎると体に毒ですよ。」

「安心してパパ。おじいちゃんこんなことでは死なない。」

「おぉさすが冬っぺじゃ。わかっとるわな。」

「いつかわたしがヤルから。」

「そうそうそのまま寝ている間にって、うぉいっ!なぁにゆっとんじゃぁ~!」

「それぐらいにしときなさい。冬佳ちゃん、さぁ早く朝ごはんを食べて。」

そういって朝ごはんを並べていく。

わたしはそのまま朝ごはんを食べてすぐさま玄関に向かう。

「いってきます。」

「お~い冬っぺや。」

「なぁにおじいちゃん?」

「頑張ってくるんじゃぞ。人間勝負は全力投球じゃぞ。」

「・・・うん、頑張る。」

わたしは靴を履き、戸を開ける。

そして自転車に乗り学校へ向かう。


わたしは今日勝負に出る。

わたしの物語は今のところはさっきまで読んでいた小説と同じ。

でも違うのは告白していないことと、告白の答えが分からないこと。

事実は小説より奇なり、結末は分からない。

でもわたしは進む。

東から照る朝日に向かって、一歩でも前へ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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-春樹Side-


「やべぇ、早く着きすぎた。」

腕時計で時間確認。

7時40分。

生徒はほとんどおらず、いても生徒会の奴らか真面目な生徒ぐらい。

「さぁて、どうしたものか。昨日のうちに準備は終わらせてしまってるし、やることねぇな。」

「あれ~、はっるき~!」

校門の方から、夏美が手を振りながらやってきた。

「おぉ夏美、早いな~オイ。」

「いや~待ちきれなくて早く来てしまったデスよ。」

「春樹~!!」

今度は秋穂が来た。

「おぉ秋穂、お前も待ちきれなくて早く来た口か?」

「そうゆう春樹も?」

「まぁそうゆうことだ。」

「ボクもデスよ!」

「あら夏美、いたの?」

「さっきからいたデスよ!?」

そんな感じで話していると、冬佳がやってきた。

「待たせたな。」

「どこのスネークだよオイ。しょっぱなから軽いボケをかましてきたな冬佳。だが、グッジョブだ!」

そう言って親指を立てた。

「ぐっじょぶ。」

それに対して冬佳も親指を立て返した。

「なにやってんのよ、2人とも。」

「そうデスよ~、とりあえず早く来たんデスから、何しますか~?」

「「「あれ、冬佳いたの?」」」

「またデスか!?てゆうか春樹と秋穂はさっきまで話してたじゃないデスか~!」

「そうだっけか秋穂?」

「さぁどうかしら?」

「というよりあなたは誰?」

「ヒドイデスよ~~~!!しかも冬佳の最後の言葉は大きな一撃が。」

「ははは、冗談だよ。なぁ冬佳。」

「わたしはマジ。」

「そうだよな~マジだよな~、って、えっ、マジ?」

「マジ、マジ。」

「“本気”と書いて、」

「“もとけ”と読む。」

「だそうだ夏美。」

「やめて、夏見の体力はもうゼロよ!」

「まぁ嘘だけど。」

「いやダメだ、夏美を見ろ。燃え尽きちまった、真っ白に。」

「勝手に殺さないでくださいデスよ~!」


その場を笑いが包む。

あぁ、こうゆうのだよな。

そういえばこうゆうことを今まで続いてたんだよな。


再び腕時計に目をやると、時間は8時を過ぎており、周りにはちらほらと登校する生徒が増えだした。

しかし今日登校する生徒のほとんどが卒業する者ばかり。

友達もいればクラスメイトもいて、中にはまったく話をしたことのなく、顔だけしっている奴もいる。

そうゆうやつらすべて含めて、今日卒業する。


あと数時間もすれば卒業式が始まり、そしてさらに数時間経つと卒業する。

そして俺はこの学校の生徒ではなくなる。

正式には大学に入学するまで、就職の奴らは就職するまで、それ以外の奴は4月に入るまでこの学校の生徒とゆうことだが、

そうだとしてもなんか悲しいな。

この学校には色んな思い出がある。

人間、高校の時の方がしっくりと思い出に残ってるらしいしな。


そんなことを思いふと桜の木に目をやる。

桜の木は、花は咲いてないものの、ほとんどがつぼみをつけ今にも咲かんとしているかのように見える。

最近暖かい日が続いているからな、桜も少し早めに開花しようとしてるんだろうな。


まぁたとえこの木が花を咲かせなくても、俺が桜を咲かしてやるさ。

ド派手な桜吹雪を舞わしてやる。


「じゃあそろそろ俺たちも教室にいくとするか。」

「「「うん!」」」

俺達はそうして教室に向かって足を進めていく。

これから始まる卒業式に向けて。

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