表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

第13章~修復~

その次の日、俺はいつもどおりの時間に学校にきた。

席を見るとすでに3人が来ており、教室に入ってきたこっちに気付いたが、すぐに顔を元の位置に戻した。


俺はそのまま秋穂の席まで行き、軽く挨拶をした。

「・・・その、・・おはよう。」

「・・・おはよう。」

俺は言いたいことがあったが、今は言える雰囲気ではなかった。

そのあと冬佳と夏美にも挨拶を済ませ、俺は自分の席に座った。


(あーもう、なんでもうちょっと愛想良く挨拶言えねぇんだよ俺!変にプライドはってんじゃねぇよ。)

俺は自分にそう言い聞かせて、秋穂を呼ぼうとしたら、


キーンコーンカーンコーン♪


チャイムで俺の意思はかき消された。

そして担任が教室に入ってきて、ホームルームを始めた。

言い出すチャンスを失った俺は、しょうがなく諦めた。

(本番は放課後だな。それまでにちゃんと秋穂にちゃんと呼びかけなきゃな。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


キーンコーンカーンコーン♪


授業を終えるチャイムが響き、昼休みに入る。

そして昼休みに入ると食堂にダッシュで行く奴らが多く、教室には弁当組みが残る。


俺も学食なんだが今は食堂に行く前にやるべきことがある。

秋穂を呼び止めること。

休み時間に入るたびに声を掛けようとするが、毎回理由を付けられ逃げられて、昼休みまで持ち越したってわけだ。

秋穂が弁当組みでよかったな。

学食なら捕まえるだけで困難だからな。

そして俺は前の席にいる秋穂を呼びかけた。

「なぁ、秋穂。ちょっと話しがあるんだ、聞いてくれ。」

「・・・ゴメン、私友達と一緒にお弁当食べる約束してるから急いでるの。」

「嘘、秋穂はわたしと食べる約束してた。」

「わざわざ春樹と会わないように、ボクたちにアリバイ作り手伝わせたデスし。」

冬佳と夏美の言葉に黙り込む秋穂。

「なぁ、なんでそうやって俺を避けてんだよ。昨日のことなら謝るよ、ゴメン。でもさ俺ちゃんと話したいんだよ、だからさ逃げないでくれ。」

「・・・違うよ。別に春樹に怒鳴られたことを気にしてるわけじゃないの。私が許せないのは私自身。だから春樹は謝らなくてもいいの。」

そう告げた秋穂は教室を去ろうとする。

「秋穂、俺待ってるからさ。教室で待ってるからさ。ちゃんと来てくれよな!」

秋穂はそのまま振り返らず歩いていってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


-秋穂Side-


春樹、怒ってた。

私は春樹のことわかってたつもりでいたのにね。

春樹の為ならって思ってうぬぼれてたわ。

私ダメな子。


あっ、メール。春樹からだ。

明日の放課後に話したいこと?

なんだろ、今日のことかな。

でも私どんな顔して会えばいいんだろ?

ダメダメ、ちゃんと明日会ったら笑顔でいなきゃ。

でも、でも、なんで涙が止まらないのかな。



まだ春樹学校に来てないみたいね。

少しホッとした。


数分後に冬佳、夏美、春樹と入ってくる。

「・・・その、おはよう。」

春樹がおはようって言った。

ちゃんと挨拶を返さなきゃ、でもただ挨拶を返すだけでいいの?

そして私の口から出た言葉は、素っ気無い返事しか返せなかった。


そのあとも、何度も春樹は話しかけてくれたのに、私は彼の思いに答えられず避けてしまう。

夏美や冬佳にも付き合ってもらって、私は春樹から逃げる。

彼の言葉を聞くのが怖いから。


「なぁ、秋穂。ちょっと話しがあるんだ、聞いてくれ。」

ちゃんと聞きたい。


「なぁ、なんでそうやって俺を避けてんだよ。昨日のことなら謝るよ、ゴメン。でもさ俺ちゃんと話したいんだよ、だからさ逃げないでくれ。」

なんで謝るの。春樹は悪くないよ。


「秋穂、俺待ってるからさ。教室で待ってるからさ。ちゃんと来てくれよな!」

私行きたい、でも私。


そして逃げるように屋上に。

私は弁当箱を開き、食べ始める。


味付け失敗しちゃったかな、なんかしょっぱいよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


放課後。

秋穂はいつの間にかいなくなってしまっていて、俺は夏美と冬佳と3人教室で待つことにした。


「春樹、いつまで待つんデスか?」

「秋穂が来るまでだ。」

「ホントに来ると思うの?」

「来なくても待つ。」

「強情デスね~、春樹は。」

「別に俺に付き合わなくてもいいんだぜ?」

「何を言ってるの?春樹はわたし達に話があるからメールをくれた。その話を聞かないまま帰るわけにはいかない。」

「そうだったな、ゴメン。」

「なに言ってるデスか、ボク達はいつでも一緒じゃないデスか、一人欠けちゃ意味が無いデスよ。だから秋穂が来るまで付き合うデス。」

「夏美がいいこと言った...、雨、いや雪が降るかも。」

「むー、せっかくいい事言ったのに酷いデスよ~!」


そして静かな教室に笑いが溢れる。


「でもそろそろ下校時間が近い。」

「大丈夫、来るさ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


-秋穂Side-


教室に笑い声が聞こえる。

とても楽しそうな声。

私がいなくても大丈夫なんじゃないのかな。


私は帰ろうとしたとき、

「でもそろそろ下校時間が近い。」

もうそんなに時間経ってるんだ。

「大丈夫、来るさ。」

春樹...。


私は、足を戻し、教室の扉に手をかけた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


教室の扉が開かれた。

そこには秋穂がいた。

「・・・バカ、なんで帰らないのよ。こんなに遅くまで残ってさ、私が来なかったらどうするのよ?」

「さぁどうだろうな、もしかしたら学校に泊まってたかもな。」

「そんなこと出来るわけ無いじゃない。警備員さんに追い出されるわよ。」

「はは、そうかもな。でもさ秋穂、・・・お前はちゃんと来たじゃねぇか。」

「それは、その...。」

俺の返答に対して黙り込む秋穂。

「来たって事はちゃんと話を聞いてくれるって事だな。」

「私はまだ聞くなんて言ってないわよ。」

「まぁまぁ、とりあえず座るデスよ秋穂。」

「おとなしくした方が身のため。」

「ちょ、ちょっと2人とも!」

そういって夏美と冬佳は秋穂の腕を引いて、席に座らせる。


「さてまずは、ゴメン!」

そいって俺は秋穂たちに謝った。

秋穂が口を開こうとしたので、遮る感じで俺は言葉を続ける。

「多分秋穂は、俺は悪くないから謝らないでっていうんだろ。でもさ謝らしてくれ。感情に任せて俺はお前らを傷つけた。」

そしてうつむく彼女達。

「俺さ、卒業なんてただの通過点に過ぎないと思ってたんだ。俺達同じ大学だろ。だから卒業しても変わらないだろって思っていた。でもさ、日和の学校の卒業式見たらさ少し不安になったんだよ。入場していく生徒達は色んな気持ちを持っていた。それなのに俺は能天気になにも考えちゃいなかった。俺はこのままでいいのか?ただ流れにまかせて卒業してしまっていいのか?そう考えているうちに周りが見えなくなった。自分を見失った。」

俺はそこで一呼吸置いた。

「そして答えが見つからないことに苛立って、その苛立ちをお前らにぶつけてしまったってわけなんだ。」

「俺はさ、まだ答えを見つけてない。見つかるかもわからない。でもそんな悩んでんのは俺らしくねぇって日和に言われてさ。だから俺は今信じること、やりたいことに集中することにした。」

そして俺は体を向き直し、

「改めて頼む。俺のわがままに付き合ってくれないか?」

頭を下げて頼み、返事を待つ。


「冬佳チョップ。」ドンッ

「うぼぁっ!?」

頭を思いっきり本で叩かれた。

「痛っ、なにすんだよ!?」

「頭を下げるなんてやめて。わたし達はそんな関係じゃないはず。」

「そうデスよ。それに春樹のわがままなんて今に始まったことじゃないデスしね~。」

「・・・もう、悩んでるの自分がバカに思えたきたわよ。」


「たっく、俺の考えに考えた謝罪文句があっさり否定されるとはな。よしっ、じゃあ明日からまたよろしくな。」

そう言うと、彼女達は一度顔をあわせてからこちらを向き、

「「「よろしく!」」」

と元気良く返してくれた。


「まぁとりあえず卒業式まであと5日だ。前日の土曜日にはリハすっから、それまでに完成に近づけるため頑張ろうな!」

「頑張るデスよ~!!」

「やってやるわよ!」

「本気!」


卒業まであと5日と1週間をきった。

1度は崩れかけたピースはその形を戻し、完成に近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ