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第10章~亀裂~

2人が去った後のテラス。

そこには誰もいないはずだった。

しかし2人の会話を聞いていた者がいた。



時をさかのぼって、春樹がテラスに行ったとき、

「あっ、私ちょっとお手洗いに行って来るね。」

「あ、うん。早く帰ってきてね。もっと色々春樹のこと聞きたいし。」

「いや~、それにしても日和さんの話を聞いてると、春樹って昔から人脈広かったみたいデスね。」

「わたし的には、いろんな春樹を聞けて満足。でも少しジェラシー。」

「そうよね、なんか聞いててのろけ話って言うか、なんか羨ましいな。」

「でも今はどうなんデスかね、あの2人。」

「どうって?」

「いやデスね、今でも好き同士なのかなって。」

「でも2人とも別れたっていってるわよ。」

「でも別れた原因は、どちらにも非がないから、もしかしたら。」

「「「・・・・・。」」」

まだ2人が好き同士だったら、日和はライバルということになる。

「そ、それにしても日和さん遅いわね。」

「そうデスね、なにしてるのかな?」

「わたし見てくる。」

そういって、席を立つ冬佳。

「いってらっしゃいデス~。」

「夏見も行く。」

「えっ、何でデスか~、って耳引っ張らないでくださいよ~。痛いデスって!」

「夏美も大変ね。」


そして、お手洗いに行く途中、テラスを横切ろうとした時、

「私達って、やり直せないかな?」


「今の声って...。」

「日和さんデスかね?」

そして2人してテラスを覗くと、そこには春樹と日和が真剣な顔で喋っていた。

「なんの話をしてるんデスかな?それにやり直すって。」

「盗み聞きは忍びないけど、聞こう。」

「冬佳、なんか悪デスね。」


そしてその頃、秋穂は、

「...遅い!日和さんも遅いけど、あの2人も何してるのかしら?」

「よう、何してるんだ?」

「あなたは、えぇっと。」

「慧夜だ、九条 慧夜。トッシーとでも呼んでくれ。」

「は、はぁ。あのトッシーさん。」

「おぅ、なんだ?」

「少し荷物番を任しても大丈夫かしら?」

「ん、別にいいぞ。」

「ありがとう、じゃあお願いね。」

そして席を立ち、お手洗いの方に向かっていく。

「頑張れよ、少年少女たち。」

しかし、空しくも彼の言葉は空に消えていくのであった。

「ちょっとそんなテロップ出すんじゃねぇよ!悲しくなってくるじゃんかよ!」



「もう、夏美達は何してるのよ!」

少しご機嫌が傾きかけている秋穂。そして、テラスに近づいた。

「あっ、夏美達あんなとこでなにしてんのよ。」

そこにはテラスを覗く夏美と冬佳の姿があった。

「あっ、秋穂デス。」

「もう、2人してこんなところでなにを、」

「しっ、秋穂テラスの方を見て。」

そういって口の前で人差し指を立て静かにをアピールしている冬佳が、その指をテラスの方に向けた。

「えっ、あれって春樹と、日和さん。何してるのかしら?」

どうやら春樹と日和さんは何か真面目な話をしているらしい。

私はその光景を見て、少し胸の奥がざわついた。

それは多分夏美と冬佳も同じ気持ちであろう。

傍から見ると、あの2人はピッタリなカップルにみえる。

そんな光景をホントは見たくないのに、今私達は食い入るように見ている。

いったいなんの話をしているのかは、この距離では聞き辛い。

でもなんの会話をしているのかが気になってしまう。

どうでもいい相手ならあまり気にはならない。

でもその相手が好きな相手なら別だ。

別の女の子と話してるだけでもやきもちを妬いてしまう。

そしてあらかた話し終えた2人が戻ってくる。

「ヤバイデスよ!こっちに来ますよ!?」

「とりあえず戻るわよ!」

「あっ、待って!」


そして3人が見たのは、春樹と日和がキスをしているところ。

その場を見た3人はただ見ていることしか出来ない。

人を好きになるのは自由であり、邪魔をすることはいけない。

だからといって、好きな人が目の前でキスをするとこなんて見たいはずがない。

目をそらしたい、引き離したい。

でもそれが出来ず、彼女達はただ見ていることしか出来なかった。

「とりあえず、戻りましょう。」

「で、でも、でも!」

「行こう、夏美。」

「・・・はいデス。」



「よう、おかえり、恋する少女達よ。でどうしたそんなにうなだれて。」

「ダメだよ慧夜君。今はそっとしておこうね。」

「光にしては気が利くな。まぁいいさ。だがお前ら、あいつらが帰ってきたらその暗い感じを直せよ。じゃないと春樹のやつ、色々と心配するからな。」

そして無言でうなずく3人。


「ウッス、ただいま。」

「ゴメンね、待たしちゃった?」

そして帰ってきた2人。

「もう遅いわよ、2人で何してたのよ。」

「そうデスよ~。早く帰ってこないとほって帰るところでしたよ。」

「じゃあお会計は夏美ね。」

「それは酷いデスよ~、冬佳~!」


そして空元気ながらも、何もなかったようなふりをする3人。

「じゃあそろそろ帰るか。」

「ならこっちも帰るとするか。」


そしてレジで会計を済ます春樹と慧夜。

半額だったので、2人の財布は痛手を負う事はなかったが、地味に痛かった。


その後、お店を出て帰り道が分かれるところまで一緒に帰ることになった。

「なぁ春樹、アドレス交換しようぜ!」

「おぉ、そうだな。」

「日和さん、私達も交換しない?」

「うん、いいよ♪」

そしてアドレスを交換し合い、分かれ道に来た。



「じゃあここでお別れだな。」

「そだね。」

「あの、日和さん。最後にちょっと話があるの。」

「なぁに?」

そしてその空気を読んだのか、慧夜は春樹を連れて離れる。

「先に謝っときます。ごめんなさい!」

「「ごめんなさい(デス)!」」

「えっ、どうしたの!?」

「実は、テラスでの話を聞いてた。」

「それに、最後のキスも見ちゃったデス。」

「・・・そうなんだ、それで私に何か言いたいことは?」

「えっ、それってどうゆうこと?」

「わからないなら私から言うね。私はシュン君を、ううん、桜井 春樹のことが今でも好きです!」

そのことは3人とも一番聞きたくなかっただろう。

せっかく仲の良くなった子が恋のライバルだなんて信じたくないだろう。


でも、ここで3人は決意をした。

「それはある意味宣戦布告ってことね。私だって春樹のことが好き。」

「ボクだって、春樹のことが大好きデス!」

「わたしも春樹を好きな気持ちは負けるつもりはない。」

おそらくわかっていたが、ちゃんと口にして好きな相手を言ったのはこれが初めてだろう。


これで仲が良かった関係に亀裂がはいるかもしれないけど、言わずにはいれなかった。

ライバルがいる以上、正々堂々と向き合うことを決めた。

それは日和さんが告白したからではない。

少なからず、いつかは言わなければならなかった。

ただその瞬間が今だっただけ。


そして告白が終わったあと、沈黙が少し流れたが、その沈黙を最初に破ったのは日和からであった。

「私は負けるつもりはないよ、勝負はそっちの高校の卒業式にしない?」

「それでいいんデスか?こっちが有利デスよ?」

「夏美、もう勝ったつもりなの?」

「冬佳こそ油断してたら負けるわよ。」

「確かに私は不利なのかもしれないけど、ひとつだけいえることはあるよね?」


そして4人同時にその言葉を放った。

「「「「絶対に負けない!」」」」


そしてそれぞれの帰る道に別れていく。

それは勝負の合図が切られたかのようだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


帰り道にて。

「なぁ、お前ら日和と何話してたんだ?」

「春樹には関係ないわよ。」

「まぁでも間接的にはあるかもデス。」

「とりあえず気にしないで。」

「なんだよそれ。」

その後、色々聞いてみたが返ってくる答えは同じだった。

さすがに何回も聞くことは出来ないので諦めて帰路につくのであった。


そして春樹の家に着いた後、彼女達はすぐに帰る支度をしてそれぞれの家に帰っていくのであった。

「そんじゃあ、また明日学校でな。」

「はい、また明日デス~!」

「うん、またね。」

「バイバイ。」


そして3人が帰った後、日和からメールが来た。

件名:卒業式

本文:卒業式楽しみにしてるね♪

それとよかったら、私の高校の卒業式にも来てね♪


「了解っと。」

俺は簡単な言葉を組み合わせ返信した。


明日からまた学校か。

なんかこの2日間あっという間のようで、とても長い2日間だったな。


まぁとりあえず、疲れた。


そうして俺は、眠りについた。

まるで今までのことが夢だったかのように思えたが、起きた時の女子4人からのメールの件数の多さを見て、逆に夢なら良かったと思えたのは、日をまたいでからの話であった。

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