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最終話 言霊の王妃と、永遠の誓い

「セレスティア、何を考えている?」


柔らかな陽光が差し込む、エルドリア王国の美しい白亜のバルコニー。

考え事をしていたわたくしは、背後からの優しい声に、はっとして振り返りました。

そこには、愛しい夫――国王リアム様が、穏やかな笑みを浮かべて立っています。


「リアム様…」


「また、故郷のことを思い出していたのかい?」


彼はそっとわたくしを後ろから抱きしめ、その肩に顎を乗せました。彼の温かい体温と、落ち着く香りに包まれると、心のさざ波がすうっと凪いでいくのを感じます。


「…少しだけ。彼らが、今どうしているのかと」

「君は優しすぎるな。だが、それも君の美しさだ」


リアム様はそう言うと、わたくしの左手を取り、その薬指にはめられた指輪に、優しく口づけを落としました。

それは、エルドリア王家に代々伝わる、『星読みの指輪』。夜空で最も美しく輝く星の光を封じ込めたと言われる、深い青色の宝石があしらわれています。


エルドリアの王妃となって、早一年。

わたくしの毎日は、生まれて初めて知る幸福と、愛に満ち溢れていました。

リアム様は、わたくしを何よりも大切にし、深く愛してくれます。そして国民もまた、その慈愛に満ちた力で国に豊穣をもたらすわたくしを、『言霊の王妃』と呼び、心から慕ってくれました。


わたくしの力が、誰かを傷つけるためではなく、人々を幸せにするためにあるのだと、この場所が教えてくれたのです。


「セレスティア。君がこの国に来てくれてから、エルドリアはさらに豊かになった。枯れかけていたエルフの森は息を吹き返し、ドワーフの鉱山からは、かつてないほど上質な鉱石が採れるようになった。すべて、君の存在そのものがもたらした奇跡だ」

「いいえ、リアム様。それは、あなたがこの国を、そしてわたくしを、深く愛してくださっているからですわ。わたくしの力は、あなたの愛に応えているにすぎません」


わたくしたちは見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねました。


アークライト王国から追放された、魔力なしの出来損ないの令嬢。

それが、かつてのわたくし。

けれど今は、一国の王から深く愛され、その力を国民のために使う、幸せな王妃。


見せかけの価値に惑わされ、本質を見失った者たちは堕ちていった。

けれど、わたくしは、わたくしの本当の価値を見出し、信じてくれた唯一の人と出会い、世界で一番の幸せを手にすることができたのです。


「愛しているよ、セレスティア。俺の、たった一人の星」

「わたくしもですわ、リアム様。永遠に、あなたのおそばに」


バルコニーから見渡す王都は、活気に満ち、人々の笑顔で溢れています。

この幸せが、どうか末永く続きますように。


わたくしは、そっと心の中で、けれど今までで一番強い言霊を紡ぎました。

それはきっと、この国と、愛する人の未来を、永遠に輝かせる祝福の光となるでしょう。


…ただ、この時のわたくしは、まだ知らなかったのです。

わたくしのその強大な『言霊』の力が、この大陸のバランスを大きく揺るがし、眠っていた古代の遺物や、その力を狙う新たな影をも呼び覚ましてしまうことになるということを。

そして、わたくしとリアム様の愛の前に、再び新たな試練が訪れることになる未来を。


それはまた、別の物語。

偽りの聖女に婚約者を奪われた『無能』な私が、本当の愛を見つけ、世界一幸せになるまでの、ほんの始まりの物語に過ぎないのでした。

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