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第2話 ゆるキャラ、現る



「……お、落ち着け俺。夢だ。そう、夢だ。寝ぼけてルージュなんて塗ったらこんな夢見るに決まってる」


ピンクのツインテールがふわりと揺れた。

手鏡の中には、どう見ても“可愛い女の子”が映っている。

肩まであるフリルの衣装、胸元のハート型の宝石。

どこからどう見ても、魔法少女だった。


「うわああっ! なんでだよ!? 俺、五十だぞ!?」


パニックのまま部屋の中を駆け回る村井。

足に絡まるリボン、床に転がる空き缶。

そして、窓の外から――ぴょこぴょこと音がした。


「……は?」


カーテンをめくると、そこには。

頭に星の帽子をかぶり、まるい体にゆるい表情のキャラクターが立っていた。

まるでどこかの地方PRマスコットのようだが、瞳だけが妙に鋭い。


「……やっと見つけたーっ!」


「……へ?」


「まさか、オッサンが変身しちゃうとは思わなかったけど……まあ、いいや! 契約成立ー!」


ドスン、と窓を突き破って部屋に飛び込んでくるゆるキャラ。

その名も――


「ボクはピポロン! “希望のマスコット”さ!」


「……どこのゆるキャラだよ!? 警察呼ぶぞ!」


「ダメダメ! 今この世界には“魔法少女”がいないんだ! 

代わりに変身してくれたのが君なんだよ! ありがとう、おっさん!」


「おっさん言うな! てか、なんで俺が!?」


ピポロンは、村井の腕に浮かんだ光の紋章を指差した。

そこにはルージュと同じ宝石の形が刻まれていた。


「それが“選ばれし者”の証だよ。

この世界の“希望”をもう一度、塗り直すために――」


「……塗り直す? って、それ、どういう……」


言い終える前に、窓の外から黒い霧が迫ってきた。

霧の中で、歪んだ笑い声が響く。


『ヒトの夢、もう要らない……。』


ピポロンの顔が強張った。

「間に合わなかったか……おっさん、いや、魔法少女! 変身だ!」


「もう変わってるって言ってんだろ!?」


次の瞬間、ピンクの光が弾け、村井――いや、“彼女”は立ち上がった。

心臓が高鳴る。震える足。

それでも、不思議と胸の奥に勇気が灯っていた。


「……夢見て何が悪い。今度こそ、叶えてやるさ。」

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