第14話 再起動(リブート)ルージュ
廃墟に朝が訪れる。
静寂の中、ひとつだけ赤く光るものがあった――それは、村井が残したルージュ。
ミアはそのルージュをそっと拾い上げた。
冷たいはずなのに、掌の中で確かな鼓動を感じる。
まるで、村井の“心臓”がまだここにあるようだった。
「……あなた、まだ見てるんでしょ。村井」
ミアの声が震える。
その瞬間、ルージュから小さな光の粒が溢れ出した。
風が巻き起こり、赤い花弁のように空へ舞う。
『――おう、ミア。久しぶりだな』
聞き覚えのある声。
光の中に、ぼんやりと人の形が浮かぶ。
だが、その輪郭は少女のようでもあり、男性のようでもあった。
「村井……? それとも――ルージュ?」
『どっちでもある。
どっちでも、もう関係ないかもな。
お前と俺、どうやら混ざっちまったらしい』
ミアは息を呑んだ。
ルージュを使い続けるうちに、村井の“魂”とミアの“記憶”が共鳴し、
新たな存在――**《リブート・ルージュ》**が生まれようとしていた。
「……そんな、ことって」
『俺の体はもうない。
けど、お前の中でなら、まだ戦える。
なぁ、ミア――一緒に、やろうぜ。
俺たちの戦いを、終わらせよう』
ミアの瞳に光が戻る。
「――うん。今度は、ふたりでひとりね」
彼女はルージュを唇にあてた。
一瞬の静寂。
「ルージュ――リブート!」
紅い光が弾ける。
衣装が舞い、風が唸り、
ミアと村井、二つの魂が重なっていく。
その姿は、かつてのルージュでも、初代でもなかった。
それは“新しい魔法少女”。
そして――“再起動した命”の証。
「行こう、ミア」
「ううん……今はもう、私たちが“ルージュ”」
光の中に立つその影が、ゆっくりと夜の街へ歩き出す。




