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類は友を呼ぶ  作者: 手下
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 ハバネロ激辛パフェの弱点

 高校生となって一週間が経ち、新たな生活に慣れて来た頃。


 いつものように教室で帰り支度をしていた麗人。

 

 そこへ、鞄を肩に掛けた心乃実が教室に入って来た。彼女は奥の席で帰り支度中の麗人を見つけると、真っ先に彼のもとへと向かった。


「れい、今日暇か?」


 背後から声を掛ける形となったが、麗人は特にびっくりすることはなかった。むしろ心乃実に声をかけられて内心嬉しくて堪らなかった。


「暇だよ」

「じゃあ、俺と少し付き合え」

「もちろん!」


 そう短い会話を経て二人は、大型商業施設へとやって来た。


「ここには何しに来たの?」


 心乃実が迷う素振りなくどこかへ向かって歩いているので、麗人は訊ねた。

 彼のその問いかけに、心乃実は急にピタリと足を止める。


「おっと……」


 心乃実が不意に足を止めるものだから、すぐ後ろを歩いていた麗人は彼女の背中にぶつかりそうになる。


 咄嗟に急ブレーキで足を止めも、前のめりになり、反射的に彼女の華奢な肩を両手でがっしりと掴んでしまう。 


(肩ちっちゃ……)


 華奢なのは知っていたが、こう触れてみると余計に華奢さが伝わってきた。


「ん? どうした?」


 心乃実は不思議そうに振り向き、パチパチと瞬きしながら麗人の顔を見つめる。


「いや、急に止まるからぶつかりそうになって」

「そうか、それはすまん。てっきり発情して抱きついてきたのかと思った」

「俺はうさぎか何かなの? 例え発情したとしてもこんな人がいるところで抱きついたりはしないよ」

「誰も居なかったらするってことか?」

「ま、まぁ、そうなるね。心乃実が嫌じゃなければ」

「別に嫌じゃないな。俺はお前に抱きつかれるのは好きだぞ!」


 ニッコリと、満面の笑みを見せる心乃実。

 彼女のその笑顔に何度ハートを撃ち抜かれたことか。

 そのせいで危うく発情しそうになった麗人だった。


「それで、ここには何しに来たの?」

「付いてくればわかる。目的地は二階だ」


 そしてやって来たのは、とあるカフェ。

 パフェやパンケーキなどスイーツがメインの至って普通のカフェ。


「目的地ってここ?」

「その通り。ここで今、期間限定のパフェがある。今日はそれを食べに来た」

「パフェ、いいね」


(どんなパフェなんだろう。期間限定って言うからにはちょっと変わったパフェなのかも。栗のパフェとかかな)


 パフェと聞いて色々と想像を膨らませる。

 パフェは好物の一つである。


 内心ワクワクしながら麗人は心乃実に続いて店に入る。

 店員に案内された席でメニュー表を手に取ると、一ページ目に大きく期間限定メニューが載っていた。

 麗人はそれを見て言葉を失う。


「え、これじゃないよね?」


 そう言って指差したメニュー表には──『期間限定、ハバネロ激辛パフェ』と書いてあった。

 そのパフェの宣材写真は、禍々しい真っ赤なソフトクリームの上に唐辛子がいくつも刺さっており、いかにも辛そうな見た目をしている。


「それを食べに来た。辛いのは苦手か?」

「どっちかって言うと苦手かな。辛いの好きだったんだね」

「好きだな。それに、パフェは普通甘いものだろ? それを辛くするなんて普通じゃない。そこが気に入ってる」

「確かにパフェで激辛なんて聞いたことないからね。でもこれけっこう辛そうだよ? 大丈夫?」

「辛いのは得意分野だ」


 それから二人は備え付けのベルで店員を呼び、心乃実はハバネロ激辛パフェ、麗人はアイスカフェオレを頼んだ。


「店員さんが「辛いですよ? 大丈夫ですか?」って言ってたから相当辛いと思うよ」

「ますます楽しみになってきた」


 待ち遠しいのか、店員が来ないかちょくちょく確認している。

 一方で麗人は、そんなソワソワした彼女も可愛くてずっと眺めていた。


 程なくしてアイスカフェオレと共にハバネロ激辛パフェを店員が持って来た。


「ほほう、なかなか辛そうだ」

「狂気的な赤さしてる……」


 真っ赤なソフトクリームの上に真っ赤なパウダーがかかっており、その上に唐辛子がいくつも刺さっている。底の方まで赤く、見ただけで舌がピリついてきそうだった。


 それを心乃実はパフェ用の長いスプーンでソフトクリームの部分を掬い、躊躇うことなくパクりと食べる。


「ど、どう?」


 恐る恐る訊ねる麗人。


「うん! これは美味いぞ!」

「マジで……辛さは?」

「ほんのりピリ辛だな。ソフトクリームの中に刻まれたハバネロが入ってる。その食感がまた良い。これは病みつきになるぞ」

「そ、そっか、美味しいなら良かったよ」


(見た目は赤くて辛そうだけど、食べてみたら意外とそうでもないのかな。製品化してるわけだし、流石に食べれるように工夫はされてるだろうけど)


 美味しそうに食べる心乃実を見て、少し気になった。


「食べてみるか?」

「気になるけど、遠慮しとくよ。辛いの得意じゃないし」

「そうか? 美味しいのに」

「心乃実は美味しそうに食べるね」

「そりゃ美味しいからな!」


 美味しそうに食べる彼女を見るだけで十分だった。


「……ふぅ」

「心乃実? 大丈夫?」


 急に食べるのを止めてしまった心乃実に、麗人は心配そうな顔を向けた。


「やっぱり辛い? あれだったら俺のカフェオレ飲む?」

「いや、辛さは問題じゃない」

「え、あ、そうなの?」

「ああ……うぷ……」


 心乃実は半分ほど残ったハバネロ激辛パフェをジッと見つめながら告げる。


「お腹いっぱいだ」

「嘘でしょ!? まだ結構残ってるよ?」

「思った以上に量が多かった」


 心乃実はそう言うが、大きさはよくある並サイズのパフェだ。


「もう入らない感じ?」

「頑張れば何とかって感じだな」

「もしかしてここ来る前に何か食べた?」

「何も食べてないな。これが食べたいから昼も少なめにしたぐらいだ」

「そ、そうなんだ」


(これ作った人はまさか量の多さでギブアップされるとは思ってなかっただろうな……)


 ハバネロ激辛パフェの思わぬ弱点だった。


「心乃実って少食?」

「あんまり量は食えないな」

「そうなんだ……」


(そっか、あまり食べれないからこんなにも華奢なのか)


 さっき肩を掴んだ時の感触が蘇る。

 細くて小さくて、簡単に壊れてしまいそうな。


「まぁ、お腹いっぱいでも残すのは嫌だから食べるけどな」

「それなら俺も食べて良い?」


 麗人のその提案に、心乃実はびっくりしたように目をぱちくりさせた。


「辛いもの苦手なんだろ?」

「苦手だけど、どんな味なのか気にはなるし。それに、一人で無理なら二人で食べた方がいいでしょ」

「それもそうだな、一人じゃ食べ切れなさそうだし、手伝ってくれ!」

「任せて!」


 ──数秒後。


「舌千切れる舌千切れる……」


 あまりの辛さに舌の感覚はピリつき、もはや辛さはなく、あるのは痛みだけ。

 その上、少し胃が熱くなってきていた。


 額には汗がびっしょり。

 辛さから顔はほんのり赤い。


「無理は良くないぞ?」


 心配な眼差しを向けてくる心乃実に、麗人は痺れる舌で何とか応える。


「だ、大丈夫……」


(とは言ったけど、ソフトクリームの中に入ってるハバネロが洒落にならないほど辛い……でも、ここで諦めたらカッコ悪いぞ)


 麗人はそれからも猛烈に痛む舌を我慢しながら、何とかハバネロ激辛パフェを食べるのだった。


 その帰り道。


「れいがいてくれて助かった、ありがとな!」

「役に立てたなら良かった。まだ舌がヒリヒリしてるけどね、はは」


 水をいくら飲んでも舌の痺れは解消されなかった。


「まだ舌が痺れるのか?」

「だね、心乃実は平気なの?」

「まぁ俺は耐性があるからな!」


 ドヤァとドヤ顔を披露する心乃実。


「ほんと凄いね。舌千切れるかと思うくらい辛かったからさ」

「そこまでして……辛いの苦手なのに、ありがとな。その、お礼になるかはわからないけど……」

「お礼……?」


 言うが先に、心乃実は麗人の目の前に立ち、小さな体を精一杯伸ばし──。


 ちゅ……。


 不意打ちキスを決め込んだ。


「こ、こ、このみ……」

「お礼だ」


 言って心乃実は少し足早に先を歩く。

 そんな彼女は、初めての行為で頬が真っ赤に染まっていた。

 それは麗人も同じくである。

 彼に至っては、ずっとピリついて舌がいつの間にかすっかり治っていた。

長くなりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。

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