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類は友を呼ぶ  作者: 手下
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逆道心乃実

 放課後、麗人はこの学校にある全ての男子トイレを制覇しようとしていた。


 この時の彼はまだ知らなかった。

 逆道心乃実という女の子が、()()の人じゃないということを。


「はぁ……はぁ……」


(一応、校舎内の男子トイレは全部回ったけど……)


 どの男子トイレにも逆道の姿はなかった。


(もしかして、逆道さんを語った誰かの悪戯って可能性も……)


 疑惑レベルが少し上がる。

 まだ完全に偽物だという確証もないため、麗人は男子トイレ巡りを再開する。


 次に彼が向かうのは、クラスがある第一校舎の向かい側──第二校舎だ。そこは、理科室や音楽室、美術室などがある。


 その校舎の男子トイレを一階から順に巡っていく。


 それから逆道と合わないまま三階へと到着。

 そこはほとんど使われていない空き教室のある階で、そのため生徒はおろか教師も滅多に通らない。


 ここまで探していないので、若干諦めモードの中、とりあえず近くの男子トイレへと足を踏み入れる。

 すると──。


「やあ、待ってたよ」

「っ!?」


 静かに佇む女子生徒が一人。


 短く切りそろえられた黒髪。しかし、ところどころ癖っ毛なのか跳ねており、小さな角のように主張している。

 背丈は百五十センチほどと小柄。けれど、端正な顔立ちゆえに、どこか大人っぽさがある。


 彼女こそ、麗人がずっと恋焦がれていた相手──逆道(さかみち)心乃実(このみ)だ。


(ほ、ほんとにいた……)


 驚きと困惑が入り混じり、せっかくのイケメン顔が少し歪んでいた。


「遅かったね」

「遅かったねって……男子トイレで待つ、としか書かれてなかったからさ」

「男子トイレと言えばここでしょ」

「なにその思想!?」


(逆道さんにとって男子トイレって一体……)


「ここは人が来ないからね」

「まぁ確かに使われてない教室ばかりだから、滅多に人は来ないけど……でも何で男子トイレ?」

「お前は、男子トイレに入る女子を見たことはあるか?」

「いや、見たことは……ないけど」


 トイレ掃除するおばちゃんは見たことはあるが、あれは清掃というお仕事のため除外する。

 

「そうだろう、そうだろう。見たことはないだろう……それが答えだ」


(いや、なにが……?)


 なぜかドヤァとする逆道に、麗人は内心でツッコミを入れた。


「えっと、よくわからなかったんだけど……」

「もう少し噛み砕いた方がいいか……俺は、普通の人がしないことをするのが好きなんだ」


 一人称が『俺』というところが気になったが、今はそれを訊く時ではないとグッと飲み込む。ややこしくなるから。


「なるほど……?」

「お前は男子トイレに入る女子を見たことがないと言った。それは()()ではないということだ」

「そ、そうだね、かなり異常というか……」

「異常! うひひひ」

「な、なになに!?」


 急に不気味に笑い始めたので、麗人は慌てた。


「すまない。異常と聞くと嬉しくなってしまって」

「な、なるほど……」


(学校って、色んな人いるんだなぁ……よく今まで目立たなかったものだ)


「つまり逆道さんは、普通のことをするのが嫌だってこと? だから普通じゃないことをしたい、と」

「その通り! 俺は普通が嫌いだ。俺が『俺』と言っているのも、女子は『私』と言うのが普通だっていう固定観念が嫌いだからだ」


(初めて、こうして面と向かって話したけど……逆道さんって……ちょっと変な人……?)


 笑う時は口元に手を添えて静かに笑うようなお淑やかなイメージをしていたのだが、現実は、普通を嫌い、異常と聞くと「いひひひ」と不気味に笑う、イメージとはかけ離れていた。


 しかし麗人は、恋愛熱が冷めるどころか、ますます彼女のことを知りたくなっていた。

 きっかけは一目惚れという単純な恋だけれど、気持ちは本物だ。


「とりあえずわかった。それで、どうしてここに呼び出したの?」


 全て理解した訳ではないが、まだまだ気になることがあるのでそちらの方を優先することにした。


「呼び出した理由は言うまでもないと思うが?」

「え……」


(まるでわからない……)


「も、もしかして……間違ってたらごめんなんだけど……俺に、こ、告白しようとしてる……?」


 女子から呼び出されるのは決まって告白される時。

 だからそう思って言ったのだが、なんて自意識過剰なんだと恥ずかしくなった。

 もし間違っていたら恥ずかしくて死にそうだ。


「呼び出したのは告白をするためじゃない」


(恥ずか死!!)


 キッパリとノーと言われて、心臓が張り裂けそうなくらいのダメージが襲う。

 しかし、逆道の話はまだ終わっていなかった。


「告白するためではなく、()()()ために呼び出したのだ!」

「え? 告白……させる……?」


 首を傾げる麗人に、逆道は訊ねる。


「お前、俺のことが好きなんだろ?」

「ど、どうしてそのこと……」

「名前もわからない女に言われた。お前が俺のこと好きだって」

「な!?」


(一体誰が告げ口を……心当たりがありすぎる……)


 しかし、これはむしろチャンスであった。

 バレているのならもう気持ちを伝えるしかない。雰囲気もなにもない、なんならちょっと尿臭い男子トイレだけど。


「好きです、逆道さんのこと」


 雰囲気がないなぁ、と思いながらも、麗人は気持ちを伝えた。


「自分で言うが、俺はかなり変な奴だがいいのか? 正直、幻滅しただろ?」

「驚きはしたけど、幻滅はしてないよ。むしろ、もっと知りたくなった。だから、俺と付き合ってください!」


 最後はもう当たって砕けろの勢いだった。


「いいぞ! 付き合おう!」


 そして返ってきた答えはあっさりしたものだった。

 不意にニッコリと笑って答えた彼女に、麗人は──。


(きゅんっ!!)


 その不意打ちの笑みに、麗人のハートは射止められるのだった。

 

 その後のこと。


「告白しておいて何だけど、逆道さんは俺のこと好きなの?」

「は? なにを変なこと言ってるんだ?」


 逆道は訳がわからないと言った風に眉を顰める。


「好きでもない奴にこんなことはしないぞ?」


 キュン!


(なにそれ、かっこいい!)


「で、でも、こうして話したのって今日が初めてだよね? 俺と同じで一目惚れしてくれたとか?」

「俺は顔で判断しない」

「あ……」


(ごめんなさい、俺は完全に顔で一目惚れしてしまいました……)


「ただ、お前が告白して来た女子に真正面から、誠実に対応してるのを見て、カッコいい奴だなと思っただけだ」


 きゅんっ!


(やばい、逆道さんに何回きゅんきゅんさせられるんだ俺は)


 麗人はきゅんきゅんしすぎて突っ込まなかったが、逆道がどうして告白現場を見ていたのか。

 それはズバリ、教室の掃除道具入れに隠れていたからである。


 自分のことを好きだという相手がどんな奴なのか、ちょうど告白されるという情報を手に入れたので隠れて見ていたというわけだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。

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