手紙
それは突然だった。
いつも通り登校してきた麗人は、特に何も考えずに下駄箱を開けた。
「ん……?」
上履きの上に一枚の茶色い封筒が置いてあることに気づく。
「なんだこれ……」
ラブレターとは少し違う。
今まで貰ったラブレターは、正方形で、可愛らしい柄があったり、色が付いていたりして、見るからにラブレターだとわかった。
でも、この茶封筒から漂うのはラブレターではなく、果し状とか、何か重要なお知らせが入っていそうな雰囲気だった。
とりあえず開けてみると、中に入っていたのは普通の白い紙で、そこには可愛らしい丸文字でこう書かれていた。
『放課後、男子トイレにて待つ』
と。
「んー!?」
(これは? 果し状なのか……)
首を傾げつつも、差出人か何か書かれてないか裏も見てみると、ど真ん中に大きく名前が書かれていた。
『逆道心乃実より』
と。
「んん〜〜!?!?」
(どうして逆道さんが? それに男子トイレで待つって、そもそもどこの男子トイレ? そしてなぜ男子トイレ!?)
「んんん〜!?!?!?」
いつまでも情報が完結しない。
これは一体なんなんだろう。
ずっと恋焦がれていた相手から手紙を貰ったというのに、こんなにも素直に喜べないことがあるだろうか。
喜びよりも困惑や疑問が押し寄せてくる。
(男子トイレいくつあったかな……)
奴は全部回るつもりだ。
直接本人に訊ねれば早い話なのだが、彼にそんな勇気はない。
中学三年になるまで挨拶すらまともにできなかった男だ。こんな、思考停止してしまうほどの奇妙な手紙を貰っても、その真相を直接本人に訊きに行くのはかなりハードルが高かった。
なので麗人は覚悟を決めた。
直接本人に訊ねることではなく、学校中の全男子トイレを見て回ることを。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。




