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類は友を呼ぶ  作者: 手下
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普通なデート その1

 麗人は映画館の隅っこに立ち、心乃実が来るのを待っていた。


 今日の彼はいつになくソワソワしていた。

 スマホの時刻を何度も何度も確認しては、まだ時間じゃないか、と逸る気持ちを落ち着かせていた。


 なにしろ今日はデートである。


 学校帰りにハバネロ激辛パフェを食べに行った以来だ。あれをデートと呼ぶのは少し怪しいところはあるが「学校帰り」「寄り道」「パフェを食べる」この三つの要素を抽出すれば、それは立派なデートと言えるだろう。


 最初、デートを誘った麗人だったが、実は心乃実から断られていた。

 と言うのも、彼女いわく、デートは普通すぎてあまりやりたいとは思えないとのことだった。


 そこで言い方を変えて再度誘うことにした。


「普通じゃないことをするには、まずは普通のことを知った方が良くない? 知らないと気づかないうちに普通のことをしてしまう可能性があるよ?」

「なるほど、言われてみればそうだな」

「デートどうかな?」

「うむ、やってみるか!」


 という感じで説得に成功し、今に至る。


 麗人はTシャツにジーンズとラフな格好をしている。

 一度は気合を入れた渾身のファッションで行こうかと思ったのだが、それだと目立ち過ぎるので、無難な服装に落ち着いた。それでも彼はその顔の良さから非常に目立つ存在だ。

 他のお客さんの邪魔にならない端っこのところにただ静かに立っているだけなのに、その存在感は凄まじいものだ。


 ここに来てまだ10分ほどなのに、すでに何度か女性から声をかけられている。その度に「彼女と待ち合わせなので」と断ったことか。


 待ち合わせは10時になっている。が、一時間早い9時に麗人は来ていた。


 初めての”ちゃんとした”デート。

 そのワクワクと、もし心乃実が先に着いていて、ナンパされていたらという不安が彼を1時間も早くここへ向かわせた。

 その結果、時間を持て余している状況だ。

 

 まだ待ち合わせ時間まで50分近くある。とりあえず、彼女がナンパされる可能性は阻止したわけだが、なにせ暇な時間が長い。

 最初こそスマホで時間を潰していたが、そろそろやることがなくなってきていた。


 そんな頃合い、真っ直ぐこちらに向かってくる心乃実の姿を捉える。


 彼女は上下黒のジャージ姿だった。上着のチャックは開け放たれていて、中から無地の白いシャツが見える。

 今からランニングにでも行くのかと思ってしまうほどの運動着姿。


(女性用の服があまり好きじゃないって言ってたから、フリルの付いた可愛らしい服は着てこないだろうなって予想はしてたけど……)


 上下黒のジャージ姿は予想外だった。


 それでも、彼女の可愛さは増していた。むしろ、部屋着みたいで、家だとこんな感じなのかなと彼女の私生活を想像できて興奮した。


「ずいぶん早いな。俺も早く来たつもりだったんだけどな」


 まだ待ち合わせの時間まで50分近くある。

 二人が観る予定の映画の上映時間は10時15分。

 それを合わせると1時間近く暇な時間が出来てしまっていた。


 麗人は心乃実がナンパされないかと心配して早く来て、心乃実は麗人を待たせまいと早く来た。

 その結果、時間に余裕がありすぎる集合となった。


「どうしよっか? 時間余ってるし、あれだったらこの下のカフェで過ごす?」


(初デート、初私服……なのに、これは褒めて良いのか? ジャージ似合ってるって言われて嬉しいのか……)


 服を褒めるのは当たり前のことだ。

 服のデザインを褒めたり、着ている本人を褒めたり、あるいは、ファッションデザイナー目線で今日のコーデの良さを伝えたりと褒め方は色々ある。

 しかし、上下黒のジャージに関しては、触れていいのかすらわからない。


「カフェ行っちゃう?」

「そうだな、朝食べてないし、行くか!」

「決まりだね」


 二人はエスカレーターで下の階に行き、そこにあるカフェに入店する。


「う〜ん……」


 心乃実はメニュー表を見ながら唸っていた。


「どれも量が多いな」


 メニュー表にあるのは、サンドイッチやバーガー、パスタ系や唐揚げもある。そのどれもがボリューミーで、少食の心乃実にはつらい量だ。


「このハラミサンドが食べたいが、量がな……」

「量?」

「ああ」

「それなら半分食べるよ?」

「良いのか?」

「全然良いよ。俺も朝まだ食べてないし」

「そうか、ならこれにする」


 麗人はアイスカフェオレ、心乃実はブラックのアイスコーヒーとハラミサンドを注文した。

 ハラミサンドは、二等分に切り分けることができたので、そうしてもらった。


「どうした? そんなジッと見て、俺の顔に何か付いてるのか?」

「いや、その……」


 ジャージについて触れるべきかどうか迷っていたら、無意識に心乃実の顔をジッと見つめていた。


「そのジャージ、似合ってるなって思ってさ」


 似合ってるのは事実なので、言うことにした。


「そうだろ! 似合ってるだろ! 動きやすくて好きなんだ」

「運動着だからね」


 嬉しそうに笑う心乃実を見て、言って良かったと安堵する。


「れいもその服似合ってるぞ! お前は何着ても着こなすだろうけどな!」

「例えセーラー服でも着こなせる自信があるね」


 照れ隠しに冗談で返した麗人だったが、心乃実は一瞬で真顔になり、


「セーラー服は流石に無理だろ」


 とマジレスしてきた。


「じょ、冗談だよ〜」

「冗談か! 本気でセーラー服が似合うと思ってるのかと心配したぞ!」

「ははは、流石にセーラー服はね。あ、でも、長内だったら似合うかもね。美少年だし」

「かもな」


 長内、と聞いて心乃実はため息混じりに言う。


「そう言えばあいつまた逃げたからな」

「あれは照れてるんだよ」

「そうなのか? でも全力疾走してたぞ?」


 長内隣人、三希の幼馴染。


 三希が隣人と仲直りしようと彼に会いに行ったのだが、逃げるように走り去ってしまった。

 そんな彼を追いかけて捕まえたのが麗人だった。

 その一部始終を見ていたのが心乃実である。


「それだけ恥ずかしかったんだと思うよ」

「あいつ、三希のこと好きだろ?」

「やっぱり気づくよね」

「だってわかりやすいからな。でも、三希は気付いてないみたいだった」

「三三さんにとって彼はずっと幼馴染なんだろうね」

「なんかそれ可哀想だな。恋愛対象として見られる以前の問題ってことだろ?」

「三三さんにその気がないなら、彼の好意に気付くことはないかな。確かに可哀想だね」


 そんなやり取りをしていると、店員さんが注文の品々を持って来た。


「それではごゆっくりどうぞ」


 そう言って軽く会釈した後、店員さんはカウンターに戻って行く。

 

「写真より大きいぞ、これで半分に切ってあるのか?」

「俺も思ったより大きくてびっくりしてる。明らかに食パン2枚使ってるからね、そりゃあボリューミーなわけだよ」


 大きな食パンに挟まれた溢れんばかりのハラミ。

 半分に切ってもらっているとはいえ、その大きさは一般的なサンドイッチよりも大きい。


「もし食べきれなかったら残り食べてくれ」

「もちろん良いよ」


 そこでハッと気づく、


(心乃実の食べかけ……それって間接キス……)


 出来れば残して欲しかった。


 しかし、ボリューミーではあったが、半分に切ってもらったお陰で、心乃実はかなりギリギリながらも完食した。

 そのせいでお腹はかなり満腹になっていた。


「意外と食えたな。でもお腹がいっぱいだ。昼までに消化しきれそうにないな」

「よく食べたね」


 麗人は小声で、残念、と呟いた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。

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