エピローグ
放課後の空き教室。
二人の男女が一定の距離を空け、お互いに見つめ合っていた。
「陽志麗人くんっ、わ、私と付き合って欲しい、です……」
そう緊張の面持ちで、震えた声で告白した女子生徒。
彼女の瞳には緊張からくる気持ちの昂りから、うっすらと涙が滲んでいる。
告白をされた陽志麗人という男子生徒は、誰の目から見てもイケメン。イケメンに輪をかけてのイケメン。
背が高く、男らしいガタイに、キリッとした眉、外国人顔負けの鼻の高さ。
まるで神様が利き手で描いた最高傑作のよう。
その見た目の良さだけで、これまでに告白された回数は数えきれないほど。
しかし彼は、一度も彼女を作ったことがない。
だから今回も──。
「ごめんなさい!」
麗人は深々と頭を下げて告白を断った。
この瞬間だけは、何度経験しても慣れないものだ。
「勇気出して告白してくれたことはすごくわかってる。けど、今好きな人がいるんだ」
「……うん」
女子生徒は今にも泣きそうな顔だ。
中学三年生という思春期真っ只中で、決意を決めて告白したのに、振られてしまった。
失恋のショックからまだ気持ちが整理できていない。そんな中でも、彼女は震える唇を必死に動かし、疑問を投げかける。
「す、好きな人って……」
気になるけど、聞きたくない。
そんな矛盾した感情を抱きながらも、麗人の顔をじっと見つめる彼女。
「ここだけの秘密にしてくれるなら」
「誰にも言わない……」
「四組の逆道心乃実さん」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。