表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

桜と未来の約束

これまで読んでくれた人ありがとうございます!


次回がラストです!!!

 1年後の3月13日。桜のつぼみがほころび始めた公園は、春の柔らかな光に包まれていた。梨花と涼太は、いつものベンチに並んで座っていた。

 梨花の手には、手作りのチョコレートケーキが入った紙袋。涼太の膝には、優太が昔くれたサッカーボールのキーホルダーが握られていた。


「涼太、ほら、ケーキ! 今年はちゃんと二人で食べようね!」


 梨花の笑顔は、桜の花びらより眩しかった。涼太は照れくさそうに笑い、紙袋を受け取った。


「お前、毎年これ作るの大変だろ。…でも、めっちゃ嬉しい。」


 二人はケーキを分け合い、フォークを手に笑い合った。1年前の3月13日、涼太がこの公園に来なかったあの日のことが、梨花の胸にチラリとよぎった。

 でも、今、涼太はここにいる。梨花のそばで、優太のような優しい笑顔を見せてくれる。


 この1年、涼太は少しずつ変わっていった。優太の死を背負った罪悪感は、梨花の言葉で溶け始めていた。


 大学では、涼太はサークルでサッカーを再び始めた。怪我で諦めたユースチームの夢はもうないけれど、仲間とピッチを走る楽しさを思い出した。

 梨花はそんな涼太の試合を観に行き、ゴールを決めた涼太に大声で応援を送った。


「涼太、めっちゃカッコよかったよ! やっぱサッカー似合う!」


「ハハ、梨花の応援がうるさすぎて集中できねえよ。」


 そんな冗談を言い合いながら、二人は新しい日常を築いていた。涼太はまだ時折、優太のことを思い出し、目を伏せることがあった。

 でも、梨花がそっと手を握ると、涼太は笑顔を取り戻した。梨花もまた、母親を亡くした傷を抱えながら、涼太のそばで笑うことで癒されていた。


「なあ、梨花。」涼太がケーキを食べながら、ふと言った。


「俺さ、去年、お前を離したこと、ほんとバカだったって思う。優太のことも…自分のことも、全部嫌いになりそうだったけど、お前がそばにいてくれたから、こうやって笑えてる。」


 梨花の胸が熱くなった。


「涼太…私もだよ。ママがいなくなった時、涼太がいなかったら、私、立ち直れてなかった。君はいつだって私のヒーローだよ。」


 涼太は少し照れて、キーホルダーを握りしめた。


「優太もさ、きっと喜んでるよな。俺たちがこうやって、幸せに笑ってるの見て。」


 梨花は頷き、涼太の肩に頭を寄せた。


「うん。優太さんも、涼太の笑顔が見たかったはずだよ。私も、ずっと見ていたい。」


 夕陽が公園をオレンジに染め、桜の花びらが二人の周りを舞った。涼太は梨花の手を握り、静かに誓った。


「梨花、俺、絶対お前を幸せにする。もう二度と離さない。約束だ。」


 梨花は涙をこらえ、笑顔で答えた。


「私も、涼太を幸せにするよ。一生、そばにいるから。」


 二人は顔を見合わせ、そっとキスをした。桜の木の下、優太が見守るような春の風が吹いていた。

 梨花と涼太の物語は、傷を癒し、愛を深めながら、新しい未来へと続いていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ