プールサイドで乾杯しよう
30年前僕と3人の友人は、僕が祖父から譲り受けた豪邸のプールでパーティーをしようと、大都市から数十キロ程離れたところにある裕福層の豪邸が立ち並ぶ町に来ていた。
友人たちと泊まる部屋を決めてからパーティーを始めようとしたその時、数十キロ離れた大都市の空の上で数千数万のカメラのフラッシュを一斉に光らせたような凄まじい光が迸り、その直後大都市に巨大なキノコ雲が立ち上がる。
数十キロ離れた大都市だけで無く、そのまた向こうにある都市やその近辺にある海軍や空軍の基地にも巨大なキノコ雲が次々と立ち上がっていく。
知らない間に核戦争が勃発してたんだ。
僕たちは祖父が豪邸の地下に造っていた核シェルターに逃げ込む。
数カ月から数年核シェルターに籠っていれば放射能の脅威も無くなると考えていたんだけど、違っていた。
10年経っても20年経っても放射能は無くならず、地上を汚染し続ける。
そして30年経った今、核シェルター内に蓄えられていた食料は尽きかけている。
僕たちは話し合い、どうせ死ぬのなら30年前のパーティーの続きをする事を決めた。
核シェルターから出てプールサイドに向かう。
核シェルターから出た僕たちの生存時間は約半日、まぁ1〜2時間も経つと耳や鼻から出血が始まり意識が混濁して昏睡状態になるんだろうけど。
プールの中の水は全て無くなっていて代わりに、被爆しながらも此の町まで逃げて来て水を求めた人たちや、犬や猫それに野生動物の骨がプールの底に沢山散らばっていた。
アロハシャツと短パン姿になった僕たちは、プールサイドにビーチチュアを置き陽気な音楽を流す。
残っていた酒とジュースでトロピカルドリンクらしき物を作り、ビーチチュアに横たわったまま乾杯して期限切れの睡眠薬数十錠を流し込む。
放射能で汚染された廃墟に場違いな陽気な音楽が十数時間程流れ続ける。
十数時間後唐突に陽気な音楽は途切れ、風の音とプラスチックのカップが転がるカラカラカラという音以外は無くなり、廃墟はまた静寂に包まれるのだった。