恋文 ふたたび
わたしはずっとひとりだった
愛を知らないんだ 好きになることはあっても
わがままで我が身可愛さに生きるわたしは
なにかを 誰かを愛することができないのかもしれない
ただいつか 誰かを愛せるなら それは貴女であればよいとおもう
いつか新たに帰る場所ができるなら 貴女の隣であってほしい
今はただ 貴女を見つめていたい
わたしにはそれだけがほんとうのしあわせだから
「好き」のたったひと言がどうして言えないのだろう
白昼の晴天に揺れる雲を眺めて
夕暮れを彩るグラデーションを浴びて
星空に浮かぶ月の舟を見つめながら
夜明けごろのやさしい白に頬を綻ばせたときに
思い浮かぶのはいつも貴女なのに
たったふたつの音を口にするだけのことがいやにむずかしい
スイーツをはむ小さな口の可愛らしさよ
そのつややかな唇から空気に溶ける声は心地よく
すこし膨らませた頬の芸術的な曲線美に見惚れ
思案顔に寄った眉間のしわにさえ心奪われる
クールさのなかから弾ける無邪気な咲い声
その身に纏う洗練されたファッションと
丈の短いボトムスからすらりと見える脚線美
貴女の冷たい手の清涼な感触と美白
触れることの喜び それは肌よりもこころであればなお嬉しい
世界でもっとも素敵な詩を知っていますか
どれだけ美しい言葉を集めたって 並べたてたって
貴女の名は わたしのいちばん好きな言葉で
こころのいちばん奥深くに刻まれている麗しい詩だ
貴女にとってわたしは有象無象のひとりでも
わたしにとって貴女は唯一無二なんだ
こうして貴女を想う日々
貴女を二人称ではなく一人称で呼ぶ日が来るのだろうか
溶けた氷がコップのなかで奏でるコロンという音
ふわり揺蕩うように熟れた意識のなか
ふつつかなる我がことを忘れ 貴女を眺めるこの至福
12年物の恋はもはや消えることはない、それは光で
他の誰を好きになっても 貴女はわたしの特別でありつづける