プロローグ
耳をつんざくようなブレーキの音が聞こえた。どうなってしまったのだろうか。物理的な衝撃を受けてから刹那、思案する。激痛が身体中を駆け巡ったのはそれから瞬きを一度挟んでのことだった。自分の状態に気がついたのは、視界が灰色に染まっていく頃であった。地面にくたばり、冷たいアスファルトに生ぬるい体液が流れていく。理解をする頃には遅かった。視界は更に暗くなっていく。そうして、プツリと意識が途絶えた。
俺は、死んだのだろうか?加賀美 優斗と言う男の人生は、17年で終わりなのだろうか?疑問定義に対し端的に「嫌だな」と言う感想を抱く。死ぬならでっかいパイオツに埋もれて死にたかったのに。
不意に気がつく。俺は未だに思考していると。つまりまだ生きていると言うこと…なのだろうか。あやふやである。何もかもが。視界は依然として開けない。
これから俺はどうなるのだろう。やっぱり行くべきところに行くんだろうか。死後の世界…いいや下らん妄想はやめだ。俺はどうあがいても死んでいる。なら、このまま暗闇の中ずっと―――――。
『………?』
光が、視界に差し込む。
『何がどうなってんだ?』
その光は次第に輝きを増し、ついには俺の視界を埋め尽くした。開けていく。その世界の様が飛び込んでくる。
荒れ果てた大地。曇天の空を埋め尽くす幾重にも重なる白銀の魔方陣。
『何だ………これ………。』
そして、その更に奥から飛来しているのは巨大な…途轍もなく巨大な炎の鳥。それ以外、辺りを見渡すことも出来ず立ち上がることも出来ない。ずっと地面に倒れたまま空を見上げる。俺の体はどうなった?痛みは感じない。環境の音は聞こえる。波の音。海だろう。炎の鳥は空に浮かんでいる。
『でっけぇ…。』
それしか言葉がでなかった。体は、依然として動かない。
ふと、視界に真新しいものが写り混む。こちらを覗き込むのは、1人の少女であった。
「綺麗な石………。」
その少女は俺を見てそう呟いた。石だと?考える隙もなく、少女は俺を手に取り空に透かして見せる。
「あぁあ、こんなに綺麗な石を見つけたのに………今日が最期の日か。」
次の瞬間、空間がうねるほどの大爆発が少女もろとも俺を襲った。綺麗な碧色の瞳から流れる金色の涙を鮮明に覚えている。
波動が、うねりが、地形を変えていく。爆発のなか、俺の意識は鮮明であり、熱さも感じなかった。どうやら、俺は本当に石になっちまったらしい。
海辺の丘にいた筈の俺は、地形の変化に巻き込まれ地下へと吸い込まれてく。その間も地形は変化をし続けやがて、俺は完全な閉鎖空間に閉じ込められてしまったのだった。
『何だ…なんだったんだ。』
声にならない声で呟く。なにも解らない。次の瞬間、脳内に声が響いた。
【権能《試練》が終了しました。スキル《障壁》を獲得。大気中の著しい魔素の低下を確認。休眠状態に入ります。】
その言葉を最後に、ふつと意識が途絶えた。