たまごの管理人と別荘の番
フワぁ〜……、眠い。
たまごの管理人をしている私は退屈に押しつぶされそうに欠伸をした。
たまごだからね、丁重に頼むよ、退屈君。
暖炉に火を起こし、ロッキンチェアに揺られながら、燻らす煙草の味は格別だ。
なに、それではたまごだけに、燻製になるんじゃないかって?
ハハッ、心配症だな君達は。私の肌はそんなにやわではないのだよ。たまごだけにタマゴ肌なのさ。何より時代は半熟ではなく固ゆでたまごなのさ。
私へ依頼したお嬢は大金持ちで、別荘の番を頼んで来た。どうやらたちの悪い連中が留守の別荘に入り込んで、金目の物を根こそぎ奪って行くらしい。
盗られても痛くはないが、ムカつくから調べて捕まえて欲しいそうだ。
この別荘には温泉もあるし、食料もたっぷりある。この暖炉に使う薪だって、ひと冬過ごせるだけ薪置場に積まれていた。
セキュリティも万全だ。停電対策に温泉の地熱を利用した発電と、ソーラー発電が組み込まれていて、防犯センサーが侵入者を捕える。
他にも色々あるのだが、それは秘密だ。手の内を全てさらけ出すわけにいかないからな。
何よりも辺り一面の雪景色。雪山の別荘に窃盗団がやって来ようと、足跡を消すのが難しい。
吹雪の中で犯行に及ぶとも考えられるが、冬の雪山、舐めてかかれば生命という対価が必要になる。
……つまりだ。この依頼は日頃何かと忙しい私へ「ゆっくりしたまえ」と言う、お嬢からのご褒美なのだ。
それにしても山賊の現れる気配が全くない。盗っ人は金のたまごに目がないはずなのだが。
まあ、ここは雲の上ではなく雪山で大男もめんどりもいないお嬢の別荘。現代では強盗は罪、殺人は重罪だ。
その前に返り討ちにしてやるつもりだが、恐れを成したのだろう。
たまごの管理人として、私が何事もなくひと冬過ごした事により、以前の管理人の犯行が確定したようだ。
どんなセキュリティも、管理次第で突破されるというのが証明されたようだ。管理人ならカメラの死角、抜け道も知っているからな。
私ものんびり寛いで遊んでいたわけではなかったとわかっただろう。
ジャックと豆の木も、そのまま読めばただの強盗殺人と、犯人家族のサイコパスな幸せを見せつけられて終わる。
だが変に修正し理屈に合わない蛇足を加えるよりも、時代背景を踏まえた幸せの得方への皮肉や警鐘と言う考察の方が私は好きだ。
ああ待て、蛇足などと抜かすのは良くなかった。私にとって、たまごを丸呑みにする蛇はタブーなのだよ。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
・ジャックと豆の木についての説明は長くなるので、割愛させていただきます。
なろうラジオ大賞5内で、「たまご」というキャラが立ってしまいました。独立したお話しであり、好みのジャンルの「たまご」を楽しんでもらいたいです。
この作品でワードに暖炉を使ったので、一応なろうラジオ大賞5の過去ワードは全部使う事が出来ました。
ラジオや他作者樣の作品を楽しみつ
つ、俳句短歌、なろラジ、童話と企画を私も楽しみたいと思います。
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