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捨てる神あれば呪う騎士あり~師匠と弟子の物語~  作者: キムラナオト
最終決戦編
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それぞれの戦い

 モンジはアンナたちが戦っている屋根の下で、ファーストと向き合っていた。建物を防御に利用しながらファーストの攻撃をしのぐ。


「卑屈な戦い方をやめろ。貴様は強くなった」


「勝つためにやってんだよ」


「貴様には正義の心がある。今の戦い方では濁っていくだけだ」


「俺の何がわかる!」


「その強さで騎士団に入らないのは、王や貴族のために戦いたくないからだろう? その戦い方はアサシンのものだ」


「だからどうした」


「私がそうだった。義賊と呼ばれる盗賊団に入り、貴族を襲撃していた。正義の中で生きていると思い、気分が良かった。強くもなった。だが、小さな集団が暴れたところで国はビクともしない。結局のところ金持ち目当ての盗賊団でしかなかった。


 盗賊団の頭に、もっと集団を大きくして反乱を起こそうと言った。頭は首を振った。調べてみると、盗賊団のバックには有力な貴族がいた。何のことはない盗賊団は貴族同士の権力争いの道具にしかすぎなかった。


 私は頭を殺した。頭は死ぬ前に私に言った。貴族を殺し、王家を殺したと後、お前はどうするのだ、と。私は何も答えられなかった。貴族を殺せば世の中が勝手に良くなると思っていた。理想すら持っていなかった。


 盗賊団を操っていた大貴族を殺した後、何をすればいいのかわからなくなり、国をさまよい続けた。私が殺した貴族の領地に入ったとき、農民に囲まれた。農民は口々に、なぜ善良な領主様を殺した! 今の領主は悪党だ。お前のせいで農民は苦しんでいると私を罵った。


 私は何も言えず、奴隷になることで償った」


「お前の人生と俺の戦い方が何の関係がある」


「殺すことだけを、倒すことだけを目的に戦うな。何のために戦うかを考えろ。そうしないとただの人殺しになる。私の過ちを繰り返すな」


「俺は操られたりしねえ。自分の意思で悪を殺す」


「隠れて行う独善など、正義から最も遠いものだ」


「言ってくれるじゃねえか。挑発に乗ってやるよ!」


 モンジが建物の陰から飛び出して、双剣で切りつける。

 ファーストも応じるように剣を振るった。

 互いの体に傷がどんどん増えていった。血しぶきが辺りに舞う。


「そうだ。悪を正面から見据えろ! どんな強者が相手でもだ!」


「師匠面すんじゃねえ! 俺の師匠はガルバだ!」


 モンジの双剣が加速し、竜巻のようにファーストの体を切り裂いた。

 ファーストが口から血を噴き出す。


「正面から勝ったな。これが曇りのない正義だ」


「てめえが言っているのは正義じぇねえ。美学だ」


「フッ。そうかもな」


「てめえも師匠に加えてやるよ」


「生意気な弟子だ…」


 ファーストは言葉とは逆に満足そうな顔をして死んだ。


 ★


 王都ではゴーレムとの死闘が続いていた。

 ドラゴン化したホナークが戦っている側で、シュンカがゴーレムの頭に乗って肉を食べている。


「これシュンカ! 真面目に戦わんか!」


「魔力が減ったんだからしょうがないじゃん。竜爺、ワイバーンの肉をゴーレムで溶岩焼きすると結構イケるよ」


「味方を食うな、馬鹿者!」


「ゴーレムに殺されたやつだってば。もう帰っていい? 疲れちゃった」


「いいわけないじゃろ!」


 上空で見ていた竜騎士団の副団長が憤慨する。


「殿下、シュンカ様が我々の友を食っています!」


「あの人は馬鹿なんだ。許してやれ」


「しかし!」


 青い炎の柱が上がる。ゴーレムがたちまち灰になった。


「馬鹿だけど馬鹿強い。今はゴーレムの数を減らすことだけを考えろ」


 ミカエルがワイバーンと急降下攻撃をするとゴーレムの頭が砕け、動きが止まった。

 副団長は、おおっ、と感嘆の声を上げた。


「殿下も充分お強いですよ。もうゴーレム倒しのコツを掴んでおられる。それに比べて我らは…」


 ミカエル、シュンカ、ホナークはゴーレムを倒していくが、竜騎士たちは1体を倒すのにも苦労していた。討ち漏らしたゴーレムが王宮を破壊していく。


 王妃とカムロンに襲い掛かるゴーレムにはシャルロットが炎魔法で応戦するが、シャルロットの力ではゴーレムの一部分を燃やすので精一杯だった。


「お母様、地下通路に逃げたほうがいいみたい」


「そのようね。カムロン、隠れてないで案内しなさい」


「ようやくご決心成されましたか」


 柱の後ろから救われた顔をして、カムロンが出てきた。

 そこへオルゴ率いる北部方面団の騎馬隊が駆けつけてきた。オルゴが騎馬から降りて、ソフィーに拝礼する。


「アバンドーノに向かう途中、急報を聞きつけて参りました」


「ご苦労であった。わらわは地下通路より王都の外へ落ちる。護衛せよ」


「王宮にお残りください」


「これ、オルゴ! 何を言っとる! 王妃を危険にさらす気か!」


「王都の外にもゴーレムがいる。王妃、我らがお守りいたします」


 シャルロットが口を尖らして言う。


「オルゴに守るって言われても信用できないわ。あなたって弱いもの」


「その通りだ。だが、北部方面団は強い」


 オルゴは立ち上がると兵士長を呼んだ。


「準備はできたか?」


「魔石を持たせた兵士はすでに配置についています」


「守護天使のラッパを鳴らせ!」


 兵士長がラッパを吹くと、地面から薄い光が舞い上がってくる。


「お母様、これは何?」


「オルゴ、結界を敷いたのですね」


「これでゴーレムの動きは鈍くなります。北部方面団! 王宮に入った痴れ者どもを駆逐せよ! 王妃と王女に指一本たりとも近づけるな!」


「「「ハッ!」」」


 オルゴは騎馬を操りながら、崖を上るようにゴーレムの頭の上までくると、槍を突き刺した。

 その姿を見てシャルロットがつぶやく。


「やだ、カッコイイ」


「でしょう! でしょう! わしの自慢の息子ですから!」


 さっきまで腰をかがめるようにして怯えていたカムロンが胸を張って答えた。


「でも、将来こんなふうになるのかー」


「まあ、この子ったら。失礼ですよ」


「ウフフフフ」


「ホホホホホ」


「いや、わしだって若いころは…、それにオルゴは母親似だし…」


 カムロンは小さな声で反論した。


 ★


 ネスコたちがルザンヌの酒場に着くと、アキが巨大ゴーレムの拳を受け止めていた。メキメキと音を立ててアキの骨が折れるが、後ろから懸命にコットがポーションをかけている。


「槍の神様ポ!」


「おお、アケビー!」


「よくも神様を! リバーフェニックス!」


 アケビーの突きがゴーレムの体に当たると、巨大ゴーレムが建物に寄りかかるように倒れた。ジャポが炎魔法を、ランブ―が斧を叩きつけるが巨大ゴーレムの表面しか削れない。ネスコが氷の矢を巨大ゴーレムの頭に向けて放つが、口から光線が出て撃ち落された。


「どうするネスコ?」


「一つの技に僕たちの力をすべて乗せる。ランブ―、森の戦いを覚えているか?」


「アンナを投げたやつだろお」


「そうだ。アケビーをゴーレムの頭へ向かって投げてるんだ。ジャポはアケビーに炎魔法をかぶせて」


「そんなことしたら、アケビーが灰になる!」


「僕が防御魔法をかける」


「一瞬でもずれたら失敗するぞ」


「失敗しない。アケビー、ジャポ、ランブ―。僕たちは何だ!」


「「「モヒカンズ!」」」


「よし、行くぞ!」


 ランブ―がアケビーの足を持って回転する。どんどん勢いを増し、アケビーの足の骨がミシミシと音を立てる。


「大丈夫かあ?」


「ネスコが治してくれるポ! 全力でやるポ!」


「わかったあああああ!」


 ランブ―が巨大ゴーレムに向かってアケビーを投げる。


「極大炎竜!」


「絶対氷鎧! 剛力憑依! 真空神速!」


 ジャポとネスコが魔法を放つと、アケビーの体は燃え上がり、速度が増した。

 アケビーから気流が発生し、ネスコたちにも強風が吹き付ける。


「モヒカンフェニックス!」


 アケビーの槍は巨大ゴーレムの頭だけではなく上半身ごと吹き飛ばした。


「すげえ!」


「ヒール!」


 落下するアケビーの体にネスコがヒールをかけ、ランブ―が受け止めた。

 コットが駆けよってポーションをかける。


「…神様、どうでしたポ」


「良くやった! 良くやったとも!」


 コットはアケビーを抱きしめた。


「アケビーをお願いします。ジャポ、ランブ―、アンナが心配だ。急いで戻ろう」


 ★


 ネスコたちが巨大ゴーレムを倒す少し前。

 屋根の上でアンナはシャーキを説得していた。


「シャーキ、何度でも言うわ。復讐は諦めて」


「ここにきて時間稼ぎか。さっきの威勢はどこへ行った」


「違うわ。あなたはあたしには勝てない。わかるの。自分の力が」


「闇騎士になった程度で図に乗るな!」


 シャーキがアンナに斬りかかろうと踏み込んだ。しかし、体の動きが緩慢だった。

 アンナが目の前に近づいてくる。


「なぜだ! アンナの目は見ていない!」


 シャーキは狼の毛皮を鼻までおろして目を隠していた。


「毛皮を通してあなたの目に麻痺をかけているの」


 アンナの右目が赤く光っていた。左目が桃色に輝き始め、シャーキの片膝が落ちた。


「命令よ。復讐は諦めて」


「ぐおおおおおおおおおおっ!!」


 シャーキが必死で体を動かそうとするが、右手が肩の高さまでしか上がらない。体から血が噴き出す。


「無理に動かすと危ないわ」


「貴様の言うことなど聞かぬ!」


「やめて! シャーキ!」


 シャーキは右手の鉤爪に顔を近づけると、両目を切り裂いた。


「眼が無くとも充分!」


「何てことをするの!」


 シャーキが立ちあがると鉤爪を構えた。匂いで位置を探ろうと鼻をヒクヒクと動かす。


「肌が焼ける匂い。何をした?」


「聖剣が闇騎士を拒絶しているみたい」


 剣を持つアンナの両手が聖なる光で焼かれていた。


「武器を変える隙は与えぬ!」


「お願いだから、呪いも聖剣も仲良くして!」


 聖剣をしっかりと握れないアンナはシャーキに切り刻まれていく。


「キイイィヤアアアァッ!!」


「殺されるぐらいなら!!」


 アンナが聖剣を強く握ると、アンナの全身を聖なる光と闇の光が焼き尽した。


「いっけえええええっ!!」


 聖剣を振り下ろすと、アンナを包んでいた聖と闇の光がシャーキに向かって放たれた。アンナはそのまま倒れ、シャーキが鉤爪を交差して耐える。


「ぐおおおおおおおおおおっ!!!!」


 シャーキの体が聖と闇の光に包まれていき、体が消滅する。

 鉤爪だけがカランと音を立てて落ちた。

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