表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てる神あれば呪う騎士あり~師匠と弟子の物語~  作者: キムラナオト
山の王編
31/65

骨と血と

 シャーキとアンナ、骸骨集団とモンジたちの戦いを見ながら、ビスカはあくびをする。


「みんなボロボロになっちゃってー。体を大事にしなきゃ、いい屍になれないよー」


「じゃあ僕は悪い屍だ」


 ビスカの背後から燃え盛るネスコが斬りかかった。

 しかし、ビスカが魔石を一つ砕き、手をかざすと魔法陣が現れた。

 ネスコの攻撃を弾かれ、モンジたちのところに転がっていく。


「あっぶな! 骸骨が炎に弱点なのを気づいたんだー」


「火をつけている僕に向かってこなかったからね」


 モンジが燃える枝をネスコの背から払いのける。


「何やってんだ! ネスコ」


「死んじゃうポ」


「無茶しすぎだよお」


「死にかけなのは同じだろ。可能性を探ったんだ。みんなが希望を持ち、奮い立つための」


 ビスカが笑う。


「で、不意打ちしようと思ったのー。読みが外れたねー」


「当たったよ。骸骨を防御に使わなかった。もう弾切れなんだろ?」


「無限だよー」


「教会の墓地を見れば、だいたいの数はわかる。シャーキ相手に使いすぎたね。みんな、もう骸骨は出てこない」


「キミ、ムカつくなー」


 ビスカの顔が怒りで歪む。

 モンジが火のついた枝を片手に取る。


「なるほどね。残りの骸骨を始末すれば、助かるってことか」


「やるポ!」


「全滅させるぞおお」


 ネスコの特攻はシャーキの攻撃も止ませた。炎の煙が流れてアンナを隠したのだ。

 アンナは一息つく間に考える。


「煙は目だけじゃなく、鼻に対しても煙幕になるんだわ。ネスコは死を覚悟して助けようとしてくれた。だったら、わたしも――」


「いつまで休んでいる」


 シャーキの鉤爪がアンナを切り裂いた。

 アンナの体から大量の血が噴き出す。


「アンナ!」


 モンジたちが悲痛な叫びをあげる。

 シャーキがニヤリと笑う。そして、アンナも笑っていた。


「終わりだ!」


 シャーキが鉤爪を振り下ろす。しかし、手が止まった。


「どこにいる?」


「血の匂いに包まれてわからないでしょ?」


「貴様ぁ!」


 血煙の中からアンナが飛び出し、シャーキに斬りかかる。

 しかし、シャーキの体を袈裟斬りにしよとしたアンナの剣がずれ、シャーキの右腕を切り落とした。シャーキが膝をつく。


「あれ? なんで、シャーキが二人いるの? 目の前が暗くなる…」


 アンナは血だまりの中、崩れるように倒れた。


 モンジたちがあせる。


「ヤバイ! アンナが血を出しすぎた!」


「でも骸骨がいるポ」


「二人が死んじゃうよおお」



「馬鹿馬鹿のバーカ、みんな死ぬんだよ!」


 ビスカが両手を掲げるとネックレスの魔石が3つ砕けだ。

 骸骨たちが集まり一つの塊になる。そして、巨人になった。


「どう? ボクって凄いだろー」


「こんなやつ、どうやって倒すんだよ…」


「デカすぎるポ」


「もうダメだああ」


「キャハハ、その顔、その顔。心が折れちゃったねー」


 3人の武器を持つ手がだらりと下がった。


「キミらの体はいらなーい。巨人、潰しちゃえ」


 骨の巨人が拳を叩きつけようと振り上げる。

 次の瞬間、巨人の拳が燃え上がった。


「何が起こった?」


 ビスカが辺りを見回すが誰も見当たらない。


「ここさ」


 空から声がする。

 ビスカが見上げるとワイバーン(翼竜)に乗った少年が青龍刀を構えていた。

 飛竜は火を吐きながら急降下し、少年が巨人の拳を切り落とす。

 モンジたちが叫ぶ。


「ミカエル!」


「竜に乗ってるよお」


「凄いポ」


 ネスコが全身を火傷している姿を見て、ミカエルが眉を寄せる。


「ワイバーンを上手く操れていれば、間に合った…」


「ミカエル? もしかしてアカツキの息子ー?」


「アンナ、アンナはどこ!」


「おい、答えなよー」


 ミカエルはアンナが倒れているのを見つけた。

 その傍でシャーキが立ちあがる。


「お前か! お前がアンナを傷つけたんだな!」


 ミカエルはワイバーンの体を返し、ビスカと骨の巨人に背を向けた。


「ボクを無視するな!」


 骨の巨人がワイバーンごとミカエルを捕まえようとする。

 地響きとともにアースドラゴンが飛び出し、骨の巨人に体当たりした。

 アケビーたちが驚く。


「あのときのドラゴンだポ!」


「違うよお。鱗があるう」


「いや、成長したんだ」


 アースドラゴンは岩のような竜鱗に覆われていて、小さな角が二本。大きな手には太く長い爪が生えていた。


 ワイバーンがシャーキに炎を浴びせ、ミカエルが青龍刀で斬る。

 シャーキは左腕の鉤爪で受けるが、衝撃を吸収できず足元がふらついた。

 鉤爪で反撃するが空を斬る。すでにミカエルは上空にいた。


 ミカエルは空からの一撃離脱を何度も繰り返す。

 シャーキは被っていた狼頭の毛皮をあげ、目で追うがミカエルの速さを捕えきれなかった。


「グゥ…。おのれ…」


「アンナを傷つけた者は許さない」


「そうか…。この娘。貴様の大切なものか。ならば奪って死ぬまで!」


「やめろ!」


 シャーキがアンナに止めを刺そうとすが、しかし、倒れていたはずのアンナはいなかった。


「あの出血で動けるはずが…」


「そうよね。でも動けちゃった」


「なんだと!」


 シャーキの横にアンナが立っていた。


「体も軽いの」


「キイイィヤアアアァッ!」


 シャーキが横殴りに鉤爪を振るうが、アンナは逃げずに踏み込むと、カウンターでシャーキの顎を打ち抜いた。


「やった! 初めて当たった!」


「アンナ、無理しないで!」


 ワイバーンに乗ったミカエルが地上に降りる。


「力がみなぎっているの! 心臓が戦えって叫んでるみたい!」


 アンナが立ちあがるのを見たビスカが歯噛みする。


「なんなのこれ! 聞いてない、聞いてない、聞いてない! これじゃあ、ボクの丸損じゃないか! 一人だけでももらっていく!」


 ビスカが黒円を発現させる。

 骨の巨人がシャーキを掴んで黒円に投げた。

 ミカエルがビスカに向かう。


「逃がさない!」


「調子に乗るな! 骨花火(ボーンマイン)!」


 骨の巨人が砕け散り、細かな骨片がミカエルとワイバーンを襲う。

 ワイバーンが上体を反らして骨片を受け止めてミカエルを守る。しかし、ダメージが深くなったワイバーンは地面に落ちた。

 その隙にビスカとシャーキは黒円の中へ入っていった。


「大丈夫か!」


 ミカエルがワイバーンから骨片を抜いていく。

 アースドラゴンがハヤテのそばにきて体を舐めた。


「ペロ、頼む」


「ミカエル、ペロってこの子のこと?」


「うん。ペロの唾液には回復効果があるんだ」


「だったら、ネスコたちもお願い!」


「アンナからだ! 僕はそのために来た!」


「あたしは元気よ。みんなを連れてくる」


「アンナ!」


 アンナがモンジたちとネスコを担いでくると、ペロの傍に寝かせた。

 そのままアンナが大木にもたれかかるように座る。


「ハァ、ハァ…。モンジたちから治してもらって」


「アンナ、顔が青いぞ」


「大丈夫。疲れちゃっただけ…。あっ、ガルバ様の声がする」


「師匠はどこにもいねえよ! しっかりしろ!」


 そのとき、山の向こうから突風が吹き、竜巻が通ったように樹々が倒れた。


「起きろ! 寝るんじゃねええええっ!!」


「「「師匠の声だ!」」」


「寝たら殺す!」


「無理、眠いよ…」


「馬鹿野郎が!!」


 モンジは赤い突風が横を吹き抜けたような気がした。振り返ると、アンナの体に大剣が刺さっていた。


「寝たから殺したポ!」


「師匠、ひどいよお」


「これは師匠の血喰い剣だ」


 血喰い剣の刀身に血管が浮き出し波打つ。


「アンナの顔色が良くなっている。血が増えているんだ…。アンナ起きろ! 師匠が助けてくれた!」


 アンナが目を開け、飛ぶように起き上がった。


「おい、無理するな!」


「眠たかったのに、ギンギンになっちゃった。ガルバ様、血をくれすぎたみたい」


 アンナが笑うと鼻血がツーっと垂れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ