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春家キノコのルールブック 〜高校生に発現する異能!異能!異能!〜    作者: Sun
第一章 春家キノコのルールブック
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06 エロ本は鞄の下敷きに隠すとろくなことにならない





持ち物検査は、クリアした人から着席するというルールがある。


言い換えると、未達項目がある人は、朝礼の時間、立ちっぱなしである。


「はい、オッケー。鈴木さん、座っていいよ。」


風紀委員の水鳥は、バインダーを抱えながら、一人一人服装や持ち物をチェックしている。

毎週月曜はこのように、風紀委員の水鳥が服装チェックを行う。


「はい、木村くんは前髪アウトね。来週までに切ってきてね。」


前髪の長さや、スカート丈、ハンカチなどの持ち物の確認である。

昔は鞄の中までチェックしていたようだが、最近は緩和されたらしい。

また、携帯の持ち込みもオッケーになった。


もちろん、春家のような染髪はいうまでもなくアウトだ。



「春家、お前なんで、誰にも気づかれないんだ?その髪色」


隣で立っている春家に尋ねる。


「皆からは、黒く見えているからよ。」


美しい白金色の髪がゆらめく。


「僕にはそうは見えないけど。」


はい、座っていいよ、と水鳥の声が聞こえる。


「柳くんは増殖を持っているじゃない。力がある人には見えるの」


力?バナナやキノコ、石鹸を増殖させたみたいな能力のことか。


「ってことは、それもなんかの能力ってこと?」


教室はいつものように、全員雑談でざわついている。


「そう。」


「春家の能力は、髪を明るくする能力なのか?」


そんなしょぼい能力、あるのか?そもそも能力である必要ないし。


「いや、これは私の能力じゃない。他の人の。」


「え?」


と聞き返す。

この学校に、他にも能力者がいるのか。

詳しく聞こうとしたとき、


「はい、次そこの二人。春家さん、ヤナギン。」


水鳥による、服装検査の順番が回ってきた。


「やっぱり仲いいんだね、二人とも、なんだか怪しいなあ〜」


水鳥はニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。


「もしかして、なんかあった?」


うん、あった。


春家が持ってたキノコを大量に増やして、学校を沈めました。

・・・・なんて絶対に言えない。

(というか今更なんだが、なんでキノコなんか持ってたんだ?)


「別に、なんもないけど。早く服装検査やれよ、風紀委員の水鳥さん」


「うわ!強気だねえ、美化委員の柳くん。さっきは謎のラップで大スベリしてたくせに」


ラップのことを言及するのはやめて!

一生の不覚だ。

二度としない。


「あの、水鳥さん・・・私、今日ハンカチ持ってなくて・・・」


申し訳なさそうに、春家が言った。


「ああ、いいよいいよ!今日私ハンカチ二つ持ってるから、一つ貸すよ!」


え?それいいの?

それってあり?

本当に職権乱用じゃん。


「春家さん、座っていいよ。」


僕は、とんでもない癒着現場を目の前でみた。


「はい、じゃあ次ヤナギン。」


僕は一度も服装検査に引っかかったことがない。

当然今日もハンカチとポケットティッシュを携帯しているし、

当然髪も黒色だ。


成績は最下位だが、風紀の乱れは一切ない。


「ヤナギン、アウトです。あとで生徒指導室に来るように。」


え、なんで!?


水鳥が僕を睨みつけていた。

まるで僕が突然、銀髪に頭を染めてきたみたいに。


「これ・・・何」


水鳥がささやくよう言った。


水鳥の目線は、僕のセカンドバッグに向いていた。

(一つは昨日破けたので、予備の鞄)


「ヤナギン、これ。」


僕のカバンが、パンパンに膨れ上がっている。

———まさか


次の瞬間、ぐい、と水鳥に胸ぐらを掴まれた。

・・・小さな女の子に胸ぐらを掴まれた。


「これ、なあに?」


嫌な予感がした。

パンパンに膨れたカバンを見て、自分の状況を思い出す。

——増殖が発動したのか?


グッと、水鳥の顔が近づいた。

水鳥は僕の胸ぐらを掴んで、僕を引き寄せる。


——何が増えた?


昨日、カバンの中のバナナと、春家が持っていたキノコを大量増殖させた。

家では、石鹸を増やしてしまった。

今、僕は意識せずとも物を増やしてしまう。

もし、またカバンの中のものが増殖してしまったら———


恐る恐る、自分の中のカバンを覗く。


体操服?

軽食のパン?

筆箱?


自分のカバンに入っていたものを思い出す。


「ヤナギン、これ、学校に持ってきちゃいけないよね。というかこれ・・・」


水鳥はなにやら意味深なことを言った。


僕のカバンが膨れるほど詰め込んであったのは、想像していた、

体操服やパンや筆箱ではなかった。

それらが増殖していたのかと思ったが、違った。


カバンには、全く違う物が入っていた。

僕が想像していたものとは全く違うもの。



端的に言うと、僕のカバンには、エロ本が入っていた。


時代錯誤の、紙のエロ本。


表紙で、卑猥な女性が股を広げている。

それも一冊ではない。何冊も入っていた。


水鳥が小声になった理由がわかった。


水鳥のおでこが僕のあごにくっつきそうな距離に、水鳥がいる。


水鳥は周りには聞こえないよう、本のタイトルを読み上げる。


「【眼鏡巨乳の女子高生が我慢できず学校で××××××】」


「【同級生に×××されるも眼鏡女子は満足できず×××】」


風紀委員の水鳥が小声で読み上げる。


「【風紀委員と体育倉庫で×××して××××××】」


ほとんど僕には見覚えのない本だったが、最後の一冊だけ、知っていた。


「全部で5冊。。。年頃なのはわかるけど、普通学校に持ってくる?」


水鳥の吐息が、首にかかる。

ほとんどは身に覚えのない本だ。

しかし、一冊だけは、間違いなく知っていた。


濡れ衣を晴らしたい気持ちと、津波のような罪悪感が同時に襲いかかる。


「しかもこれ、ジャンルが全部・・・これ、なんだか私に似てない?」


水鳥が読み上げたうちの一冊だけ、見覚えがあった。

数週間前、知り合いの男子で読み回ししていた、秘密のエロ本。


今時紙のエロ本が珍しく、僕もつい読んでしまったのだが、

読んだ理由はそれだけではなかった。


表紙の女の子が、水鳥に似ていたのだ。


「柳凛太郎くん。」


予備のカバンの底の下に隠していたのをすっかり忘れていた。

久しぶりに使った鞄だったので、気づかず持ってきてしまったのだろう。



一冊のエロ本が、増殖した。


それも最悪なタイミングで。



「後でこれを持って、生徒指導室に来てもらえる?」


にっこりと、水鳥は冷たい笑顔でそう言った。










【お願い】

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