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春家キノコのルールブック 〜高校生に発現する異能!異能!異能!〜    作者: Sun
第一章 春家キノコのルールブック
4/40

04 空腹時に悪い妄想は捗る





結局、一睡もできなかった。



「体は眠いのに、頭だけ冴えている。」


カーテンを開けると、日差しが容赦無く網膜を刺す。


小鳥が鳴いている。


体がだるい。



「いや、怖すぎるだろ、普通。なんなんだよ、この能力」


学校を休もうか迷ったが、成績万年最下位の僕が授業を休めるわけがない。

渋々ベッドを出た。


「増殖。」


と口に出してみる。


しかし、何も起きない。


昨日シャワーで石鹸を増殖させて以降、増殖は起きなかった。


増殖を目の当たりにした僕の感想は、


「怖い」

だった。


漫画とかアニメとかドラマで、みんな当たり前のように特殊能力を扱うけれど、

いざ自分に起きるとなると、底知れぬ恐怖を感じてしまっていた。


目の前の物が突然増える。

これが案外、怖い。


ふと、どこかのSFを思い出す。

倍になっていく薬を使って、アンパンを増やしていた主人公の話。

最初は好物のアンパンが増えて喜んでいたが、増殖の量が抑えられず、

天文学的な数字になってしまう。


処理できなくなってしまい、仕方なく、増殖するアンパンを宇宙へ放出した。

今もアンパンは、宇宙のどこかで増殖を続けているらしい・・・


「いや、こわっ!!怖すぎるだろ!」


SFのあらすじを読み返して、慌ててサイトを閉じる。

自分も制御できなかったらもしかしたら・・・

なんて考えていたら、朝になっていた。



「凛太郎ー!!おきてんのー!!!」


一階から義母の声がする。


「・・・できるだけ、何も考えないようにしよう。」


一通り最悪の妄想を終えたんだ、考えすぎもよくない。


重い体をひきづるように、部屋から出た。


一晩中起きていたら、お腹がすいた。とりあえず、ご飯を食べよう。

空腹だと、気持ちも落ち込んでいくと聞いたことがある。


妹の部屋の前を通り過ぎて、リビングに入ると、


「お母さん、お風呂の石鹸がすごい数になってたけど、何あれ?」


びくっ!


「石鹸?知らないわよ、凛太郎くんが間違って買ったんじゃない?」


「間違ったって・・・ネットで一桁間違って発注したぐらいの量だったけど」


そんなやりとりが聞こえる。


石鹸、捨てておいた方がよかったのかもしれない。


「凛太郎くん、おはよう。」


義母が声をかけてくる。

僕と妹に両親はいない。

近くに住む親戚の義母が、こうして面倒を見てくれている。


「あれ、ご飯食べないの?」


僕は慌てて、

「きょ、今日は朝補修があるから、学校で食べるよ。」

と言って、玄関に向かった。


「成績最下位は大変だねー。」

と妹の声がリビングから聞こえた。


そういうわけで、朝ごはんを食べることができずに、登校することになった。





昇降口に着くと、彼女はいた。

いや、待っていたのかもしれない。


「おはよう。」


と、春家は声をかけてきた。

美しい銀色の髪が、腰まで伸びている。

髪色を戻したほうがいいという僕の忠告は、無視されたようだ。


「・・・おはよう。」


思ったより低い声が出る。徹夜明けのせいだろうか。


「元気ないね。クマもできてるし。」


「そりゃあ、あんなことが起きたらな。」


そういいながら、昇降口を見渡す。


朝の登校ラッシュで、次々と生徒が登校してくる。

立ち止まる僕と春家の二人を通り過ぎていく。


「春家。聞きたいことがある。」


「奇遇ね。私もよ。」


頭を傾けて、銀髪が光る。


「お前、あのキノコどうしたんだ。」

「柳くん、キノコどうやって消したの。」


ほぼ同時に、お互いがそう言った。


「あ?」

「え?」


登校した時、いや、朝起きた時からそうだった。

昨日、僕の【増殖】によって天文学的な量発生したキノコ。

学校を埋め尽くすほどのキノコは、跡形もなく消えていた。


深夜に何度も検索したが、ネットニュースで取り上げられた形跡はなく、

SNSでも、そのような呟きは見つけられなかった。


「あれ、春家がなんとかしてくれたんじゃないのか。」


朝、学校にくると、やはりあのキノコの海は消えていた。

学校の半分以上を埋め尽くしていたキノコが、綺麗さっぱり姿を消していた。


「私じゃないわよ。柳くんが、【増殖解除】的な能力を使ったんじゃないの?」


そんなことできるの?


いや、少なくとも昨日僕は何もしていない。


「てかお前、【増殖】だとかなんとか言って、知った風な口聞いてた割には、能力のことあんまり把握してないのか?」


てっきり、僕の能力について説明してくれるのかと思っていたのに。


「ふん、確かに私は君の能力について多少は知っている。だけど、なんでも知っている全能美少女というわけではないの。」


・・そこまでは言ってない。


しかし、本当に春家がキノコの海を消したわけではないらしい。


どういうことだ?

僕がある程度離れたら、増殖の効果は消えるとか?か?

だとしても、目撃情報がゼロなのもおかしい。

あれだけの大惨事になったんだ。誰かが動画を撮ってSNSにupしていてもおかしくない。


ぐうう〜

と腹の虫が鳴った。


「あら、朝ごはん食べてないの?」


言われて、空腹であることを思い出す。


「食べてない。それどころじゃなくてな。」


ふうん、と興味がなさそうに春家が呟く。


するとおもむろに、カバンから何かを取り出した。


「———これ」


それは、バナナだった。


「昨日の、一本カバンに入れてたみたい。」


黒い斑点が増えている。

一日たって、少し熟れたようだ。


「食べる?」


聞かれて、僕は即答する。

「いらない。」









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