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春家キノコのルールブック 〜高校生に発現する異能!異能!異能!〜    作者: Sun
第一章 春家キノコのルールブック
14/40

14 ミカ姉と弟





三橋美佳、彼女は'危険物'を持ち込んでいる。


大会負けたらあいつのせいだわ。


部長としての責任感がないよね。


凛太郎、銃の仕組みはわかる?


弟は三週間前、自殺した。


高校三年間、いじめを受けている。


公式戦に出たことがなく、スリーポイントシュートは入るどころか、届きもしない。


根源的なルール。【命中】のルール。


実弾並の威力を持つ、モデルガン。





思考回路に電流が走る。

繋がって、導通する。


記憶と情報が繋がって、増殖していく。



「それが、君のお願いなのかな。凛太郎。」


まっすぐ僕の目を見て言う。


「はい、三橋先輩のことを全部、教えてください。【命中】のことも。」


ハハハ、と三橋先輩は笑う。

いや、きっと、目の前に立っているのは三橋先輩ではない。


「なるほど能力のこと知ってるんだ。ああ、それでさっきのか。【分裂】とかかな?」


ボールが二つに増えたことだ。


「【増殖】です。」


僕は勘違いしていた。

額を銃で撃たれたときの三橋先輩。

彼女は僕のことを覚えていなかった。

まるで誰かに取り憑かれたように弾丸を撃った。

正確に、即死する場所を撃った。


「ハハハ、秘策があるって、そういうことだったんだ。」


彼女は二つのボールを拾い上げる。


「三橋先輩の能力は、【命中】ですね?」


「うん、そうだよ。」


モデルガンで僕の頭を撃ったのは、【命中】の能力を持っている三橋先輩だ。


僕は勘違いしていた。


最初に会った人が、三橋先輩だと思い込んでいた。


そして、僕を撃ったのは三橋先輩ではない誰かだと。

僕を撃ったのは、三橋先輩ではない別人格なのではないかと。



「昼休み、僕を撃ったのはあなたではなく、本物の三橋先輩ですね?」


春家から、三橋先輩の能力が【命中】だときいたとき、気づいた。


本物の三橋先輩はバスケを教えてくれた方ではなく、僕を撃った方なのではないか?


「ハハハ、よく気づいたね。そ、正解。探偵みたいだね、君」


僕は探偵ではない。

わかっている事実を、情報を、整理しただけだ。


「三橋先輩は最近までずっと、スリーポイントの地点から、ボールを届かせることすらできなかったそうです。」


「そうだね。」


出会った時、三橋先輩はスリーポイントシュートを何本も決めていた。

一瞬、【命中】の力かとも思ったが、さっきのドリブルを目の前で見てわかった。

数年そこらのバスケの実力ではない。

突然、バスケが上手くなった。


そう、弟が死んでから突然。


「教えてください。なぜ、自殺したはずの三橋先輩の弟が、三橋先輩の姿になって生きているんですか。」


三橋先輩が髪をかき上げた。

腰に手を当てて、重心が片足になる。


「生きてないよ。」


目を落とす。


「俺は三週間前に死んだ。」


彼はボールを置いて、体育館横の非常扉へ歩いていく。


「死んで、ミカ姉の体に入った。凛太郎と同じだよ。能力の名前はわからないけど。」


三週間前、三橋先輩は自分と弟の二つの人格を持つようになった。


死んだ人間が、多重人格として存在している。


ルール外の力。


「三橋先輩・・・君の姉が銃を持っている。生徒が一人撃たれてる。僕も入れると二人か・・・まずは銃を渡してほしい。」


危険物の回収。三橋先輩に会う前に水鳥から頼まれた。

水鳥は、三橋先輩の【命中】を知っていたのだろうか?


「まあそう焦るなよ・・・銃・・モデルガンは持ってきてる。」


カバンに入れてある。と弟は言う。


「この服装だと隠す場所なんてないぜ?」


弟が自分の胸を両手で持ち上げる。

大きな胸が、バスケウエアの下からくっきりと形を現す。

男子高校生には刺激が強い。

1on1の時からそうだったが、姉の体で男子高校生の純情を弄ばないで欲しい。




「ミカ姉は、すごく優しかった。俺にも優しかったし、俺以外の後輩にも。途中から入ったバスケ部員ともうまくやってたし、いつも笑ってた。ミカ姉は可愛いから、学校中で人気があった。中学校では少し有名なくらい。」


弟がだらりと両手を下ろす。


「でも、高校生になって、ミカ姉は変わった。いじめが始まったんだ。同級生のバスケ部の男子から告白されて、ミカ姉がフったんだ。そいつは結構顔面が良くて、女子バスケ部からの人気も高かった。嫉妬されたんだ。ミカ姉があまりバスケがうまくないことも手伝って、部活の同級生から、ひどいいじめを受けた。」


男子バスケ部。

今日血まみれになって体育倉庫で倒れていた男を思い出す。


「ミカ姉の変化は明らかだった。日に日に憔悴してた。何度もバスケ部を辞めるべきだと言った。でも、ミカ姉はやめなかった。今思えばあの時、もっと強く言うべきだった。殴ってでも止めるべきだった。」


弟が唇を噛む。


「そして三週間前、ついにミカ姉は自殺しようとした。」


「え。」


「海に落ちそうになっていたミカ姉を助けようとして、俺は海に落ち、溺死した。」


弟は自殺ではなかった。

自殺しようとしていたのは、三橋先輩だった。


「まずい。」


弟が、体育館横の非常扉から出て、外に置いてあったカバンを拾った。


「ミカ姉が出てくる。」


弟の意識を持った、三橋先輩の体が震えている。


「凛太郎、勝負には負けたけど、一つ頼みをきいてくれないか。」


カバンを開ける。

ぬらりと、黒い影が顔を出す。


「ミカ姉はまた自殺しようとしてる。俺が入ることで、止めてきた。でも、そろそろ限界だ。ミカ姉の意識が覚醒する。」


黒い銃が姿を現す。手が震えている。

弟が抵抗しているのだ。


「凛太郎!」


弟が叫ぶ。


「ミカ姉を助けてくれ!!!!」


黒い銃口と目があった。










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