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春家キノコのルールブック 〜高校生に発現する異能!異能!異能!〜    作者: Sun
第一章 春家キノコのルールブック
13/40

13 なんでも言うこときく券は、実際なんでもはだめ






ダム、ダム、ダム、



ボールが床にぶつかっては跳ね、ぶつかっては跳ねる。



ダム、ダム、ダム、



力強く打ちつけられたボールが、彼女の手元に戻っては離れ、戻っては離れる。



ダム、ダム、ダム、



体育館に、三橋先輩はいた。ユニホームを着ている。

バスケットゴールからおよそ五メートルの位置。

手元のボールが一瞬沈んだ直後、勢いよく放たれる。

ボールは放物線を描き、まっすぐとゴールへ向かう。


ボールは枠に触れることなく、静かにネットを揺らした。


「相変わらず上手いですね、三橋先輩」


声をかけると、三橋先輩と目があった。


「あ、凛太郎だ。」


三橋先輩は優しく微笑んだ。

「今日も一緒に練習する?」


初めて出会ったときの三橋先輩に戻っている。


——悪いが、弟の死を知っている人間は殺さないとけないんだ。


あのときの三橋先輩ではない。


「1 on 1しませんか。」


僕が言うと、三橋先輩は一度きょとんとした顔をして、また笑った。


「おお、やる気満々だね。いいよお。ハンデは?」


バスケユニホームなので袖はないが、腕まくりをする仕草をしている。


「ハンデなんていりません。」


「あれあれ、凛太郎、バスケは急に上手くはならないよ?女の子にボコボコにされて泣いちゃうよ、凛太郎。」


「秘密の特訓をしてきたので大丈夫です。」


ふん、と三橋先輩が鼻で笑う。


「秘密の特訓ね、よし、いいよ。やろう。」


ダム、とボールが床を跳ねる。


「あとひとつ」

僕は付け加える。

「勝った方が、一つだけ何でも言うことを聞くというのはどうでしょう。」


ハハハ、と今度は声を出して笑われた。


「いいよお。負けたら何でもきいてあげる。エッチなのでもいいよ。」


フフフ、と僕は不気味に笑って見せた。


「後悔しますよ。その言葉。僕のあまりの変態的な要求に、腰を抜かしますよ!」


「ま、まさか、先輩である私に全裸でモップがけをさせる気か!?それも持ち手が短いやつで!全裸でモップがけさせる気なのかあ!!??」


「・・・」


「・・・」


「いや、さすがにそこまで変態では・・・」


「・・・」


「というか、先輩の方が変態ですね。」


斜め上の変態っぷりを示した三橋先輩だった。





ハンデはいらないとは言ったものの、さすがに純粋な実力では勝てないので、

短期決戦のルールを提案した。

一点先取である。

一点先取なら、偶然、何か不思議な力でたまたま勝つこともあるかもしれない。

もちろん三橋先輩は快諾した。


先攻も譲ってもらった。


「言っとくけど、私手は抜かないから。いいでしょ?」


三橋先輩からボールを投げる。

二回バウンドして、手元にぴったり飛んできた。


「言ったはずです。秘密の特訓をしてきたと。」


持ったボールを、ついてみる。

ボールは跳ねて、同じ高さに戻ってきた。

「見失わないでくださいよ、ミカンさん!」


そう言って、勢いよく走り出す。

全力で足を回す。

三橋先輩の横を抜け、ゴールへの道が開けた。


「うわ早っ!てか急に始まるの!?最初は一回パスするもんじゃないの!?ズルくない!?」


「ハハハ!バスケ部の常識なんて知りませんよ!勝てばよかろうなのだ!!」


勝利の文句を宣言した僕だった。

しかし、直後悲劇が起こる。


初心者の僕が全力疾走しながらボールをドリブルできるはずもなく、落としたボールは僕の足元に転がった。

転がったボールに足の裏が乗ってしまい、そのまま体が宙に浮き、回転した。


僕は顔面から体育館の床に激突したのであった。


「うわあ、大丈夫?」


うつ伏せで寝転ぶ僕に三橋先輩が声をかける。

「そんなに必死で・・・よほど私にエッチなお願いがしたいんだ。」


顔をあげる。

鼻が痛い。ヒリヒリする。


「エッチなお願いとは一言も言ってないですが・・・」


でも、三橋先輩の魅惑的なボディを目の前にして、強く否定できない自分がいる。

・・・勝ったらやっぱりエッチなお願いにしちゃおうかな。

僕の中のピンクの悪魔がささやきかけてくる。


「ま、凛太郎は頑張ったよ。悪いけど、後攻で終わらせるよ。ちなみに、私が勝ったら凛太郎がモップがけだよ。全裸で。」


「全裸でですか!?」


「自分だけリスクがないわけないじゃんか〜あ〜楽しみだなあ。凛太郎の全裸モップ。」


全裸モップ!?

世界一恐ろしい造語だ。


立とうとすると、三橋先輩が手を貸してくれた。

明るくて、無邪気で、優しくて、盛り上げ上手な、三橋先輩だ。


「ほい、いくよ。」


三橋先輩がボールを投げてきた。

ボールを投げ返す。


ダム、ダム、ダム、


ドリブルしながら、ゆっくりと近づいてくる。


ボールを奪おうと、手を伸ばした。

三橋先輩の重心がぐんと下がって、ボールが消える。


次の瞬間、三橋先輩は僕の背後にいた。


抜かれた!


慌ててゴールに向かって走る。

すると、三橋先輩は急ストップする。

物凄い緩急をつけているのに、ボールはぴったり三橋先輩の手に収まっている。


うま———


勢い余って、また顔からこけた。


「私の勝ちだよ」


あまりに余裕のあるタメを与えたが故の、勝利宣言——


ボールが放たれる。

放物線の軌道を描いて、ゴールへ飛んでいく。


——言ったはずだ。秘密の特訓をしてきたと。


僕は倒れ込みながら、ゴールに飛んでいくボールを睨みつける。


———【増殖】!!!!


ボールが枠に入る瞬間、ボールが二つに増殖する。

二つになったボールは押し合い、ゴール枠にぶつかった。

鈍い音を立てて、ぶつかり合ったボールが枠の外へ飛び出していく。


ボールはネットに触れることなく、弾き出された。


弾かれたボールの一つが、僕の手元に落ちてくる。

ボールをキャッチした。

膝を曲げて、重心を落とす。


「ボールは、手で投げるんじゃなくて、足で投げる、ですよね。」


ボールは弾丸、腕は銃身、指先は銃口、そして、膝が弾倉。


「僕の勝ちです。三橋先輩」


ゆっくりと放ったボールは、まっすぐゴールへ飛んでいった。


「凛太郎。君は———」


ネットがボールに貫かれ、勢いよく跳ねた。


「教えてもらいますよ。銃のこと・・・そして、三橋先輩のこと。」



静かな体育館で、ボールが二つ、ぶつかった。



「三橋先輩の弟ですよね、あなた」







【お願い】

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