第7話 奈落の希望と新たな仲間
来未は女の子の前に立った。女の子は怯えた様子で体を小刻みに震わせている。
「おい、お前はなんでここにいる?それにミューナと言ったな、その名前は嘘じゃないよな?」
その質問に泣きそうになりながらうなづいた。そして怯えた声で話しだした。
「私はさっきも言った通りソートレン王国の姫。私には特別な力がある。それを狙って魔女が私を捕まえてここに監禁した。ここは、奈落の底で1度入ったら出られない。だからここに連れてきて誰にも知られないように力を私から奪おうとしたの」
それから更にミューナは話を続けた。そして、ミューナは震える声で言ってきた。
「さきほどは・・・すみませんでした。あんなこと言っておいてこんな事言うのは失礼なのですが・・・私を助けてください」
(何となくこうなることはわかっていた。初めて見た時、俺が来てくれたことを嬉しそうにしていた。しかし、ここには強大な魔女がいた。でも、その魔女は俺が殺した)
ミューナはさらに言ってきた。
「何でもします!どんなこともやってみせます!だから、ここから助けてください!お願いします!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
来未が黙り込むと、ミューナは諦めたように泣き出した。そして何も言わなくなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・いい・・・よ」
「っえ!?」
「いいよ。連れて行っても。昔にも同じようなことがあったしね」
来未はそのまま刀で鎖を切った。よく見るとまだ子供のようだ。身長は小学六年生程度。身体中には無数の傷がある。そしてこの体の大きさとは違い少し大きい胸がある。
(っ!酷い拷問を受けたみたいだ。ムチのあとや刀の切り傷・・・)
「あの・・・ありがとうございます。私、もう諦めてました。でもいいって言われた時すごく嬉しかったです」
「あぁ、構わないよ。それより早くここから脱出しよう。食料も無いから長居する訳にはいかないみたいだ」
「あの、それなら私の力を使いましょうか?私の力は・・・あまり人に言えないんですけど、秘密にするって約束するなら教えますけど」
「いいよ、秘密にするって約束するよ。それしか方法はないしな。ただし、条件がある」
「・・・何ですか?」
「俺の仲間になってくれないか?」
ミューナは少し驚くと満遍の笑で答えた。
「はいっ!」
「あぁあと、俺のステータスについては全て秘密にしておいてくれないか」
「私と同じってことですか・・・?」
「まぁそんなとこ・・・・・・・・・かな。それじゃぁそろそろお願いできるかな。多分だけどミューナは転移系の魔法かなにかだろ?」
「えっ!?どうしてわかったんですか?」
「この場所にいて帰れないことに困っている時に役に立つ魔法があるってことは?」
そう言うとなにかに気づいたように納得した。
「あと、その前にこの服を着て。魔女のやつだけどないよりマシでしょ」
そう言うとミューナは恥ずかしそうに顔を赤くした。・・・しばらくして服を着たミューナが近づいてきた。
「それでは、いきます!!!」
《空間転移》
空間が光に包まれた。光がやみ目を開けるとダンジョン5層にいた。
「ここは・・・5層か」
「来未様の記憶からここの印象が1番強かったので転移しました。ダメでしたか?」
「いや、いいよ。すごく助かったよ。・・・よしっ!帰るか」
2人は歩き出した。・・・しばらく歩いてダンジョンの入口に来た。そしてダンジョンを後にした。街に戻るとすぐにギルドに行った。中に入ると、いきなり受付の人が飛びついてきた。
「もうっ!心配したんだから!昨日冒険者になったばかりでいきなりダンジョン5層まで潜るんだから。それにビギナー狩りに出くわしたり・・・全然帰ってこないからほんとに心配したんだから!!!」
「ごめんごめん」
「ところで、その子は誰?」
「この子はちょっと訳ありでな。・・・秘密にしておいて欲しいんだけどさ・・・」
それからダンジョンで起こったことを説明した。受付の人はかなり驚いていたが信じてくれた様子だった。
「俺達はもうこの街を出るよ。これ以上は危険だし、早く会いたい人達がいるから」
受付の人は少し悩むように唸って決心したようにうなづいた。
「私も連れていってください!」
「・・・えっ!?」
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