第33話 次のステージへ
目が覚めると目の前には皆がいた。どうやら街に行って帰ってきたようだ。皆無事なのか・・・良かった。
「・・・様・・・ですか?」
ミューナが何か言っている。頭がボーッとしてよく聞き取れない。
「ご主人様!大丈夫ですか!?」
よく見ると身体中包帯だらけだった。来未の周りには来未のものらしき血が流れている。
「だ、大丈夫!?・・・いきなり真っ暗になったと思ったら結界が壊れたし・・・どうなったの?」
来未は体を起こして何が起こったか話した。
「・・・そんなことが・・・」
「あぁ、恐らくだがこれからも奴らとは戦わないと行けない」
「そ、それじゃあ私達は勇者達とその謎の兄妹を相手にしないといけないってことですか?」
「そうだな。・・・ま、1つずつ解決していこうぜ」
「そうですね・・・」
「それじゃあ帰るか。おんぶしてくれ」
来未が当たり前のように言うと皆が目を丸くした。すると、皆が口々に言ってきた。
「フッフーン♪頼み方ってのがあるんじゃないかな♪」
・・・イラッ!
「くるみん私達とそんなに近づきたいの?」
・・・イライラッ!
「え、えと、その・・・いいですよ。触っても♡・・・」
・・・イライライラッ!
「ご主人様、おんぶなんて言わずに抱っこでいいですよ」
・・・プツッ・・・何かがしてる音がした・・・。
「お前ら俺をなんだと思ってるんだぁぁぁぁぁぁ!」
来未は痛む体を無理やり起こすと皆に飛びついた。皆はそれをかわすと、そこから追いかけっこが始まった。・・・が、五分で来未の限界が来た。
「・・・もうダメだ・・・」
来未が倒れてる側まで来て皆でコソコソ何か話している。・・・コイツら絶対わざとやってやがる。話が終わったかと思うと皆がニコニコしてこっちを見ている。するとミューナが小さい声で囁いた。
「せーのっ」
『ごめんね!』
皆は全員で声を揃えて謝ってきた。
(謝りゃいいもんじゃねぇんだよ!・・・でも、なんだか笑っちゃうな)
「良いよ。特別に・・・な!」
来未はそう言って立ち上がり皆と全員で歩いて帰った。
━━来未達はギルドに来ていた。中に入った途端、受け付けの女の子が近寄ってきた。
「大丈夫ですか!?クエストに行ったっきり帰ってこないし、緊急事態が起こったとかでミューナさんが来た時は心配しましたよ!すっごくドキドキしたんですからね!はいこれ報酬です!」
「悪ぃ悪ぃ。ありがとな・・・ところでだけどさ、近くに街かなにかないかな?」
「近くに村ですか?それなら、すぐにありますよ。ここを出て数キロ先にあります」
「そうか、ありがとな。行ってみるよ」
「えっ!?行くんですか!?てっきりここに住むのかとおもってました」
「えっ?そう思ってたの?」
すると、すごい勢いでうなづいた。
「いや、そろそろ出るよ。ここにいても迷惑しかかけないしね」
「そうですか・・・。また、気が向いたら来てください」
「そうするよ」
来未はそう言ってギルドを出ていった。ミューナ達もその後を追って出ていった。
「これからどうします?」
「・・・」
(助けを求めても助けてくれそうな国はない。だとしたら戦力を増やさないとな。亜人種を奴隷として雇うか?いや・・・)
「もう一度マジリカリオンに行くぞ。勇者との戦闘で何か変わったかもしれない」
「わかったわ」
ミューナ達が頷くと来未は森に向かって歩き出した。
「ご主人様、転移魔法は使わないのですか?」
「ここはマジリカリオンに近いから歩けばすぐに着くよ」
「そうなんですね。・・・あたっ!」
ミューナ達が走って来未を追いかけると突然止まってミューナはぶつかってしまった。
「どうしたんですか?・・・っ!?」
皆は来未がの前を見ると言葉が出なかった。
「人が・・・倒れてる・・・」
そう人が倒れていたのだ。しかし、ただ人が倒れていたわけではなかった。体中に無数の斬撃の痕があり、更には毒のようなもので体が汚染されていた。
「ひ、酷い。こんなになるまで・・・」
「なぁ、この斬撃の痕って見たことないか?」
「み、見た事って・・・あ!この斬撃の痕は勇者の攻撃の痕と一緒です!」
「え、なになに?私ついていけないんだけど」
「マリム、俺達はなお前に会う前にマジリカリオンで勇者と戦ったんだ。その時俺が受けた傷とこの人の傷が一緒なんだ」
「それって、勇者がこの人を殺そうとしたってこと?」
「そういうことだ・・・”ヒール””ポイズン・ケア”」
来未がそう唱えると倒れている人の傷が全て治り毒が消えた。
「とりあえずこの人が起きるのを待とう。話はそれからだ」
━━数十分後その人は起きた。すると、来未達の顔を見て跳ね上がるように起き、すぐに戦闘できるよう構えた。
「君たちは?」
その人は武器を構えると尋ねてきた。倒れていてよく分からなかったがどうやら女の子のようだ。普通に胸がある。その様子を見た来未は全く動じずに水を飲んでいた。
「答えなさい!君たちは何者?言わないとこ容赦しないよ!」
「人に名前を聞く時は自分から言うもんだろ」
「うるさい!”ファイヤースラッシュ”」
女の子はいきなり攻撃してきた。水を飲み干すと来未は女の子がに目を向けた。
「”制限鎖”」
何事もなく鎖で女の子を拘束した。そのまま近寄り服の中に手を入れた。
「ひっ!」
「またこんな物騒なもん入れやがって・・・。どんだけ出てくんだよ。体中暗器だらけだな」
来未は隠されている暗器を全て出した。
「こんなにか・・・。そんなことより、君は誰でここでなにをしていたのかな?」
「名乗る時は・・・」
「自分からだね」
来未は遮って自己紹介を始めた。
「俺は水無瀬来未。冒険者をやっている。そして、こっちが右からミューナ、ニュー、キュラ、マリムだ。よろしく」
「私は亜人の国ヌイールの王女、ヌイレウ。こちらこそよろしく」
・・・ちょっと待て、こいつ今なんて言った?王女だって?
「じゃあなんでヌイールの王女がここにいるんだ?」
「現在勇者の暴走が目立ってきているとの事だったので調査に来てました。しかし、勇者一向にバレてしまい命からがら逃げ延びてこの場所で倒れました」
「何!?勇者がここにいるのか!?」
「はい・・・」
「何してんだよ!?こんなとこで・・・」
「それは・・・その・・・」
ヌイレウは少し躊躇った感じでこっちを見ている。なんとなく察しが着いた。
「そういう事ね、俺を殺すわけか・・・」
「え、じ、じゃあどうするの?」
「どうするかね〜、とりあえず勇者たちの前に行きますか」
「何言ってんの?死ぬわよ!」
「大丈夫だって。それに、なんとなく嫌な予感がするんだよね。でも、なぜだか行かなきゃならない気もするんだ」
来未がそう言うと、皆は納得したようだ。そして、ミューナは、詠唱を始めた。
「ヌイレウ、君は帰ってこのことを話していてよ。俺達は決着をつけに行ったって」
そして、来未たちの体は光とともに消えた。
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