第31話 謎の少女
来未は村の中心部まで足を運んだ。しかし、村の中心部に来ても誰もいなかった。
「さすがに、人いなさすぎだろ・・・」
来未は民家を一軒一軒調べたがやはり誰もいなかった。さらに、中心部に来るにつれ民家の中のものは減っていき霧が濃くなってきた。
(霧が濃いな・・・。神眼は常に使っておこう)
村の様子を見て回って1つだけわかった。それは、全ての民家は中心の豪邸の周囲を囲むように立てられているということだった。
(中に入るべきか・・・いや、1度帰って皆に報告するべきだな)
来未が引き返そうと後ろを向くと女の子がたっていた。その女の子は高校生位の身長で白い髪に宝石の装飾品が着けられている。来未は一瞬驚いたがすぐに反撃ができるよう体制を整えた。
「君、いつからここに?それに、何者?」
「・・・・・・・・・」
「喋れないのか?それに、なんでここにいる?」
「・・・・・・・・・」
「何か喋れな・・・」
「うるさい!」
突然の大声に来未は吹き飛ばされそうになった。いや、実際に吹き飛ばされた。
(っ!?なんだ!?)
すぐに起き上がると既に目の前まで女の子が来ていた。
「・・・死んで・・・。ねぇ、死んで!」
女の子がそう言うと、後ろからイコの触手が現れた。それと同時に強い衝撃波が襲ってきた。来未は、そのまま結界の近くまで吹き飛ばされ、地面を擦って止まった。場所はちょうどミューナ達がいる場所の前だ。
「ご、ご主人様!大丈夫ですか!?」
「どうしたの!?」
「あ、あれは!?」
キュラが指を指した先にはイコの触手が大量にあった。そして、その真ん中にさっきの女の子がいた。
「あそこに女の子が見えるだろ。あいつがこのイコを操っている。皆は街のギルドに戻ってこのことを報告してくれ」
「わかったわ。でも、キュラとマリムは一緒に戦わせてもらうわ」
「わかった。無茶はするなよ」
来未がそう言うと、みんなはうなづいて行動を開始した。2人が結界の中に入ってきた。2人は結界の中に入るとすぐに構えた。
「邪魔しないで!」
女の子はまた叫んできた。
「衝撃波が来るぞ!避けろ!」
「え?」
来未は避けたがキュラとマリムは避けきれなかった。
「うぐぅ!」
「あぐぅ!」
2人はそのまま結界まで飛ばされたが弾かれることよもなく結界の中に消えていった。
「大丈夫か!?」
「・・・大丈夫よ!」
すると2人の声は反対側から聞こえてきた。
「も、もう、私の魔法で一掃するよ!」
そう言ってキュラは詠唱を始めた。どうやら本気なようだ。
(まさか、魔力全て使って打つのか?)
「援護してやる!”黒蝕・黒刃”」
来未は詠唱が終わるまで援護した。詠唱が終わると少し後ろに下がり、結界ギリギリの位置に来た。
「行きます!」
《2重次元歪曲》
女の子の周りがぐにゃりと曲がった。空間は曲がりすぎたことにより切れ目ができ全てのものを吸い込み出した。
「邪魔しないで!」
キュラの魔法は消されてしまった。女の子が大声をあげるだけでキュラ最強の技が消失した。そして、女の子は追撃のように攻撃を放った。
(まずい!)
来未はすぐに結界に向かって走った。
(俺の考えが正しければ・・・)
すると、来未はさっきいた場所とは逆の位置にでてきた。
(やっぱり、この結界は触れた位置と真反対の方向に転送されるタイプの結界だ)
「わっ!」
来未が来たのと同時に女の子は衝撃波を放った。
「まずい、”黒球”」
来未が黒い球をキュラ達の前に作ると女の子が放った衝撃波は黒い球の中に吸い込まれていった。黒い球は吸い込み終わると消えた。
「間に合ったか・・・」
来未はキュラとマリムをの方を向いた。やはり、最初の衝撃波がきてるようだ。船酔いのような症状がでている。
「2人とも離れてろ」
「ま、待って!まだ、やれる」
「私・・・も、出来・・・る!」
見た感じでは無理そうだ。特にマリムは立つのがやっとぐらいである。だが・・・
「やれると言うなら、やってもらわないとだな」
来未が笑顔で言うと2人とも笑顔になりやる気になった。
「だけど、やる気と元気だけで勝てる相手では無い。俺は初めから本気で行く。キュラは魔力がもう無いはずだから無茶はするな。マリムは遠距離魔法で援護しろ」
「わ、わかった!」
「こっちはいつでも良いよ!」
《暗黒化》
来未は頷くと一気に女の子のいる高さまで飛んだ。すると触手が攻撃してきた。
「あ、忘れてた。触手があるんだった・・・」
ギリギリのところでマリムの魔法が炸裂した。
「サンキュー!」
来未は女の子と同じ高さに来ると話しかけてみた。すごく危険だと分かってはいたが、敵か味方かもわかってない状況で攻撃するのは良くないと思ったからだ。
「なぁ、君は・・・」
「なんで?どうして飛べるの?」
女の子は話を遮り質問してきた。
「なんで私に話しかけるの?どうして私の攻撃を受けても生きてるの?どうして防げたの?」
女の子の質問責めに一瞬気圧されながらも答えた。
「なんで飛べるかは、羽があるからだな。話しかける理由は、君が味方かもしれないから、攻撃は受けてもあれくらいじゃ死なん。あのレベルだと魔力干渉力が強い魔法を打てばかき消される。それだけだ」
・・・魔力干渉力について念の為説明しておこう。
<魔力干渉力>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
魔法を放つ時にこの世の事象に干渉する力。大きいほど威力が大きくなる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・・・女の子は興味津々で話を聞いている。
「なぁ、今度はこっちからいいか?」
「んっ!いいよ」
「何でこんなところにいるんだ?それに、なぜイコを操っている?」
「・・・ない。・・・言えない!」
女の子はそう叫ぶと衝撃波と共に触手で攻撃してきた。
「”黒繭”」
「っ!?・・・どうして邪魔をするの?」
「そんなつもりはないが、あの街を守らないといけないからかな」
「わっ!」
「無意味だ。その攻撃だと俺の闇を破ることは出来ない。・・・なぁなんでここにいるんだ?話してくれよ」
来未がそう言うと女の子は諦めたかのように近づいてきた。そしてゆっくり話し出した。
「私はこの村に住んでたの。でも、ある日巨大なイコが来てこの村を滅ぼしたの。でも、冒険者はみんなこの村を見捨てて逃げちゃった。そのせいでこの村は壊滅したの」
「だが、イコを操る能力があるなら操って違うところにあかせればよかったじゃないか」
「・・・違うの。イコを操っているのは私じゃないの。ある日男が来て復讐を手伝うからって言ってイコを操ってくれたの」
「イコを操るって・・・ん?ちょっと待て。それだともう1人いるみたいじゃねぇか」
「いるよ。もう1人。その人が手伝ってくれたの」
(だとしたらまずいことに・・・)
来未は話を聞いて考え込んだ。すると突然、黒繭
が破られた。
「っ!?・・・・・・・・・何者?」
後ろを振り向くとそこには、白髪の男が立っていた。
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