第29話 異常事態!
━━一方その頃ミューナ達はと言うと、苦戦していた。
「きゃあ!」
「な、なんですか?これ」
「くるみんどこいっちゃったの?」
3人が相手をしていたのは、イカともタコとも言えないようなウニョウニョした生き物だった。
「あぁ♡!そこは・・・らめぇ♡!」
「あ、あぁぁ♡!わ、私・・・も、限界・・・です♡!」
「ちょっと何言ってんのよ!周りに人がいないからって!」
これが来未が帰ってくる数秒前の出来事であった。そして、来未はマリムを連れ帰ってきた。
「・・・お前達、何してんの?」
「なにしてるのじゃないよ!」
「わ、私・・・達は・・・あぁぁ♡!・・・この魔物・・・に・・・あぁぁ♡!本当にらめぇ!そこは・・・もう限界♡!」
「ご・・・主人・・・様、助けて・・・くださ・・・い・・・あぁぁ♡!」
「うるさいな!なんで逃げなかったんだよ!」
「だって・・・だって・・・」
「はぁ・・・”闇球”」
来未がそう唱えると、謎の魔物の周りに無数の闇の球が現れた。
「闇球とは、闇を打ち込むと同じ闇の技を打ち出すことが・・・」
「せ、説明はいいから早くして!」
「はいはい。”黒一閃”」
来未は闇を手に集中させ闇の一閃を放った。闇の一閃は鋭い刃となり闇の球に向かって飛んでいきぶつかった。すると、闇の刃は吸収され、無数の闇の球から無数の闇の刃が出てきた。謎の魔物は無数の闇の刃によりバラバラに切り刻まれてしまった。触手から抜け出した3人は泣きながらしがみついてきた。
「何があったんだ?」
来未は優しく頭を撫でながら聞いた。
「それがね、あの魔物が現れるまですごく良かったの。でも、現れてから調子乗ってたらああなったの。それでね・・・」
ミューナはマリムがいることに気づいた。すると態度を一変して言ってきた。
「ちょっと、ご主人様!誘拐ですか?もぅ、目を離した隙にすぐこうなるんだから。それに服はどうしたんですか?」
「・・・お前立場わかってんの?」
ミューナはかまわず威張っている。
「はぁ・・・わかったよ。次にあの敵が来ても助けねぇからな」
「・・・ごめんなさい!」
来未がそう言うとミューナは勢いよく土下座をして謝ってきた。
「あ、あの・・・それはそうと、本当にこの人誰ですか?」
「俺達がこの街に来る前によった村で幽霊たよな。そいつだ」
『え・・・え〜!』
それからこうなった経緯を話した。
「そんなことがあったなんて・・・」
「ま、そういうことだ。そんなことより他の奴らはどうした?」
「それが、この霧と一緒に消えちゃったんです」
「霧?そんなのかかってるか?」
「多分くるみんは神眼を持っているから変わらないんだと思う。それに、邪眼と魂眼だっけ?そんなの持ってたから効果が薄いんじゃない」
「そういう事か。だからマリムの姿がはっきり見えたのか」
「そうだね。普通の人だと朧気に見えちゃうもん」
「それにしても、霧がかかって消えたか。なにか嫌な予感がする。ミューナ!転移魔法で1度街に戻るぞ!」
「はい!」
ミューナは詠唱を始めた。それと同時に来未は周りにマーキングをつけ、倒した魔物を収納魔法に収納しだした。
「準備出来ました。行きます。ご主人様、捕まってください」
来未は収納が終わると周りを見渡してミューナに捕まった。
《転移空間》
━━来未は戻ってくるなり急いでギルドに向かった。
「あ、霊波は収まったんですか?」
「いや、違う。異変が起きたから引き上げてきた」
「異変ですか?どんなことが起こりましたか?」
「一緒に行っていた冒険者が全員消えた。霧がでてきたと思ったらいつの間にか全員いなかったらしい」
「っ!?本当ですか!?」
受付の女の子はかなり慌てだしたと思うと、どこからか紙を取りだし何かを書き始めた。
「何を書いている?」
「これは、異変が起きた時にすぐ連絡を取れるようにした魔法紙です。これに書いた人に通信魔法を繋ぐことが出来ます」
「凄いな。・・・そういえばだが、魔物がいたな」
「魔物・・・ですか?」
「あぁ、そうだ。イカみたいなタコみたいなやつだった。ヌルヌルした触手で絡めとってきて大変だったぞ」
「出会ったんですか?イコに」
「イコ?」
「イコというのは、この街に住む魔物です。決まって霧がかかった霊波の時に出てきて女の子をさらっていくんです。そして、イコが現れると人が消えると言われています」
「そうだったのか」
「よく生きていましたね」
「意外と弱かったしな。一応倒したけど良かったか?」
「倒したんですか?」
受付の女の子は驚くと頭を押えて紙に新しく何か書き始めた。ふらつく体で来未達の前に来ると紫の水晶のようなもので来未達を見つめ出した。
「本当のようですね。報酬が出ます。三千万チェンになります。では、また何かあればよろしくお願いします・・・あ、あと近くに温泉があります。行ってみてはどうですか?」
受付の女の子は提案してきた。よく見ると確かにみんなはヌルヌルだ。そして、ずっと忘れていたがマリムに服を貸すのを忘れていた。道理でずっとモジモジして恥ずかしそうにしていたわけだ。
「わかった。行ってみるよ」
来未はギルドを出ると言われた温泉に向かった。温泉に着くとあることに気づいた。
「・・・あのさ、マリムの服買ったっけ?」
「あ、忘れてた」
「しかもさ、この温泉混浴だって」
「ほ、本当です。今気づきました」
「なぁ、どうする?先に服買いに行くか、後で買うか。さすがにお前達を混浴の中に1人にさせるのは気が引ける」
「・・・先に買いに行きましょう」
「・・・そうだな」
来未達は、服屋に向かって足を進めた。服屋に着くとまた、あることに気づいた。
「何か嫌な予感がすると思ってたんだよ、ずっと。それでさ、お前達を神眼で見たらさ呪われてるんだよね。お前達・・・なんで?」
『え?』
「霊呪緊縛鎖がかかってる」
「いや、知らないわ」
「い、いつの間に・・・」
「解呪お願いできますか?ご主人様」
「わかった。ちょっと待ってろ。”極限呪消”」
するとみんなが光出した。呪いにかかっ手いた人は呪いが解けた。
「よし、これでいいな」
来未は呪いをとくと服屋に入っていった。その後ろからみんなは入っていった。皆は来未の後ろで何やらヒソヒソ話している。
「おい、何を言っているんだよ?」
「ね、ねぇちょっと聞きたいんだけど、来未くんって本当に人間なの?」
「は?」
「な、なんだか最近の来未くんは人間離れしていて・・・なんだか心配だよ。会ってからずっと忙しかったし、色々なことが起こりすぎて私・・・頭が追いつかないけど、もしもの事があったらと思うと怖いよ」
来未は何も言えなかった。確かに色々なことが起こった。もし、本にして売ったら場面転換多すぎるってアンチが来そうなほどだ。だから、みんなは心配になってしまうんだろう。よく見るとみんなは心配をした顔をしていた。来未は皆に向き合うと、自信を持って言った。
「大丈夫だよ」
そういうと皆は笑顔になった。その顔はまるで太陽のようだった。
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