第28話 幽霊はオタクを驚かせられない!?
警報が鳴り止むと、街の冒険者はものすごい勢いで外に出ていった。やる気は十分のようだ。街の冒険者が出ていったあとを来未達もついて行った。少し走ると、広場が出てきた。そこにはおびただしい数の魔物と幽霊らしき魔物が大量にいた。
「なんかめっちゃいるな」
「ほ、本当だ!」
3人は驚いているが、何事もなく戦闘に加わった。そして、来未も参加しようと前に出た瞬間にあることに気づいた。
「・・・あれは」
来未はこっそり森の中へと入っていった。森の中で一人たっていると隣から囁き声が聞こえてきた。
「こっちだよ」
その方向をむくと顔を近づけて女の子が見つめていた。そして何より驚くことが、その女の子は半透明だった。
「君か・・・。意味もなく俺を呼んだ訳じゃないだろ」
そう言うと、その女の子は不思議な顔をしていた。
「あれ?なんで驚かないの?私幽霊だよ」
「驚くわけないだろ。幽霊なんて普通にいるだろ」
その女の子は負けたかのように地面に手を着いた。
「おいお前、もしかしてこんなことのために俺を呼んだのか?」
そう言うと女の子はそっぽ向いて口笛を鳴らし出した。
(図星か!)
女の子は気づかれないようにどんどん距離を離していた。
「おい待て、逃げようとするな」
「あはは・・・。・・・・・・・・・ごめんなさい!」
女の子は大きな声で謝るとそのまま土下座をした。
「おい、ちょっと待て。謝って済むもんじゃねぇんだよ。俺、仲間に言わずこっそり来たんだぞ」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「それにお前、生きてるだろ」
「な、なぜ?なぜ、そう思うのですか?」
「お前を神眼で見たらHPがあるからだよ。それに状態異常のところに霊化って書いてあるしな。この”霊呪緊縛鎖”ってなんだ?」
「なんでそれ知ってんの?」
「だから、書いてあるつったろ。なんか事情があるのか?話してみろ」
「いや、その、実は私この街の禁止区域に入っちゃって。行っちゃ行けないってわかってたけど・・・」
「なるほどな。行っちゃいけないところに入って呪われたわけか・・・。自業自得だな」
「うわぁ〜ん!そんなキッパリ言わないで〜!」
女の子は泣きながらしがみついてきた。
「はぁ、もう俺帰るぞ」
「待って〜!行かないで〜!助けて!お願いします!お願いします!・・・」
女の子は何度も大きな声で頼んできた。途中から壊れた機械のように連呼してきてうるさいので仕方なく助けることにした。
「ちょっと待ってろ。なんか探してやるよ。最近レベルが上がったからか魔法の数が増えたんだ」
来未がなにかないかステータスプレートで探しているといい感じのやつを見つけた。
「あ、これいいんじゃね」
「えっ!なに?見つけたの?早く使ってよ」
「・・・なぁ、頼み方ってものがあってもいいんじゃないか?」
女の子が頼む様子はまるで駄々をこねる王女のようだった。そこで、ふと来未は思った。なんだか、昔の自分と変わってきたなと。昔の自分はもっと優しかったし、拷問とか見るのもやるのも、聞くことさえも嫌だったのに。最近はやられるのは絶対嫌だけど、やることも見ることも良くなってきた。
そんなことを考えていると、女の子が不思議そうに見つめていた。
「ま、それはそうとそんな上から目線で言われてもな。こっちだってやりたくないよ」
「そ、そんな〜!お願いだよ!」
「・・・」
「う、うぅ・・・じ、じゃあどうしたらいいの?」
「そうだな・・・裸で土下座して頼んだらいいよ」
女の子は胸を手で隠す仕草をした。
「ふふ、冗談だよ。普通に頼めばいいよ」
「もぅ!おちょくらないでよ!」
「それで、治して欲しいの?」
「う・・・。お、お願い・・・します」
女の子は負けたかのように嫌々言ってきた。来未は手をかざすと魔法を唱えた。
「”極限呪消”」
女の子の体が光で覆われた。光が収まると女の子の体が半透明じゃなくなっていた。そして、服が無くなっていた。
「きゃあ!」
来未はすかさず目を逸らした。
「見た?」
「見た。はっきり言おう俺は見た」
そう言って逸らした目を戻した。
「俺は恐れない!こういうテンプレも俺は受け入れ・・・グハッ!」
来未はビンタで飛ばされてしまった。・・・それからしばらくして、来未は戻ってきた。どうやらかなり遠くに飛ばされたらしい。戻ってくるなり来未はいきなり女の子に飛びつかれた。
「ごめんね!でも、ありがとう!」
「良いよ。こっちも悪かったね。それじゃあ、ちょっとどいてくれる?」
「んっ!」
うなづいて女の子は離れた。来未は起き上がると、自己紹介をした。
「俺は水無瀬来未、冒険者をしている。よろしく」
「私は、マリム・ヌーヴ。こちらこそよろしく」
「なぁ、呪いを受けたと言ったがなぜ呪われたんだ?」
「突然何?うふふ、さっき自分で言ってたじゃない。頼み方ってものがあるんでしょ」
「・・・」
来未は無言で真顔になった。それから少しの間見つめあったが、マリムが来未の無言の圧力に負け言ってきた。
「仕方ないわね。なんかね、ある日人が来たのよ。この人はちょっと歩いたところにある村に呪いをかけていたの。それで、たまたま私見ちゃってそのまま一緒に呪われたの」
「なるほどな。やはりあの村には何かあったな・・・」
「ところでなんだけど・・・お願いがあります!私を仲間にしてください!」
「何故だ?」
「あのね、私ねよく人から言われるんだけどドMなの。それも極度の・・・。それでね、来未くんのその感じに一目惚れしちゃったの」
「・・・」
(うわ〜、めんどくせぇ〜)
「お願い!何でもするから!言われたこと全部するから!」
マリムは何度も連呼してきた。来未は少し考えるとマリムと目を合わせた。
「良いよ。別に」
「本当に!?」
「あぁ、もう何人か仲間を増やそうと思ってたしな。それに俺にそんなに熱心に頼んでんだ。嫌なわけないだろ。俺も嬉しいよ」
「ありがとう!」
「それじゃあ、戻ろうと思うんだがどうする?」
「ついて行くに決まってるでしょ!」
「・・・本当に良いか?」
「だから行くって言ってるでしょ!」
「・・・よし!・・・行くか・・・」
来未は少し戸惑いながらマリムと共に皆の元に向かって足を進めた。
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