第26話 気まずい凱旋
4人は国から出た。どうやら賭けには勝ったらしい。木陰の下で休んでいた。
「・・・」
「ね、ねぇ来未くん。皆どうしちゃったの?」
キュラが耳元で囁いてきた。そう、今ソートレン王国から逃げてきたばっかりなのである。4人は国から出た後すぐに疲弊していたので近くの木陰で休むことにした。小一時間の休息をとって今の状況である。
「十中八九俺のせいだな。城を消したのは良くなかったな・・・」
来未は小さくそう言った。やはり皆は疲弊している。ミューナは自分の国から追い出され、母親からは勘当、さらに来未の手によって国の象徴である城が消し飛ばされた。ミューナの母親である国王は無事だったとは言えないが生きていたことは確認済みだ。
「ミューナ・・・その、悪いな・・・」
「・・・」
(やばい怒ってる・・・)
「ニューも悪かったな。なんか・・・ミューナを見捨てるみたいなこと言っちまって」
「・・・」
(あ、こっちもやばい)
「く、来未くん・・・」
来未は気まずくなって立ち上がろうとした。すると、頭痛と目眩がまた襲ってきた。神眼で自分のことを見ると魔力量が-62000になっていた。HPも1割以下に減っていた。それでも立ち上がると少し離れた場所に行こうと足を進めた。だが、すぐに体に力が入らなくなり意識を失った。
・・・目が覚めるとベットの上だった。どうやら3人が近くの村まで運んでくれたらしい。起き上がると、3人がベットにうつ伏せて寝ていた。まるで漫画のような光景に来未は思わず笑ってしまった。すると、3人は起こしてしまった。
「おはよ・・・運んでくれてありがとな」
「・・・ううん。私の方こそありがとう。助けてくれた時嬉しかったよ」
「私も、ごめんなさい。あんなこと言うつもりはなかったの。でも、ついカッとなって・・・」
「いいよ・・・俺も言いすぎたしね・・・」
「よ、良かったよ。これで、皆仲良しだよ!」
4人は楽しく笑いだした。
「・・・さて、これからのことについてだが、頼みの綱のソートレン王国もダメだ。不干渉の誓いを果たしたからな。やはり、国に助力を求めるのは間違っていると思うんだ。そもそも、俺は魔王を倒す気など毛頭ないからな」
「あ、あの・・・ずっと気になっていたんだけど、来未くんの目的ってなんなの?」
「そうですよ。ご主人様はなぜ旅をするのですか?」
「くるみんったら自分のこと全然話さないから忘れてたよ」
「俺の度の目的・・・か。それはな、まずは自分の世界に帰ること・・・と思っていたが、やっぱり違った。俺は俺の特別な人を幸せにする。それが俺の度の目的だ」
「それって、私たちのこと?」
「そうだ。そのためなら何でもする。そう決めた。あの時、光と戦って思ったんだ。あいつらはちゃんとした目的や覚悟があったって。でも、俺はなかった。勇者パーティに戻ろうとか、魔王を倒そうとかなく、ただ異世界に召喚されたことを喜んでいるだけだった。そう思うだろ?ミューナ」
「そんなことはないですよ!ご主人様はいつも私たちを守ろうと必死でした。そんな人に覚悟がないなんて思いません!」
「そう言って貰えると嬉しいよ。でもやっぱり、覚悟は足らなかった。だからあの時にあそこまで追い込まれたんだ。異世界を楽しんで飽きたら帰ろう・・・そんな考えだったんだ。だから、決めた。俺は生きてみんなを幸せにする。どんな障害も全て消すってね。だから、俺の度の目的は幸せを求める旅だよ。まぁ、それであわよくば帰れたらみんなで帰りたいなって思ってるけどね」
3人は黙ってしまった。軽はずみで聞いたことがかなり深刻な話になってしまったからか、それとも来未の言っていることに重さを感じたからか。そんな中、キュラが口を開いた。
「じ、じゃあ・・・私は来未くん達を幸せにする!みんなで幸せな生活を送る。それが私の目的!」
「そうね、私も同じなのよ」
「私も同じくです。だから、そんな顔しないでください。ご主人様」
ミューナが手を差し伸べてきた。来未はその手を掴むと皆に抱きついた。
「ありがとう・・・これからもよろしくな!」
『うんっ!』
皆は元気よく返事をした。しばらく経つとキュラが聞いてきた。
「そ、そういえばなんで来未くんの右腕はないの?」
「えっ、言ってなかったっけ?」
『うん』
「この腕は召喚されて数分で食われたからだよ」
『え〜〜〜!』
それから怒涛の質問ラッシュにあった全部答えると何故かニューが泣き出してしまった。更にそこからはカオスだった。ニューが泣き出したことにより慰めようとした来未が起き上がると、立ちくらみでこけてしまった。すると横にいたミューナにぶつかり、止めようとしたミューナの手がキュラにぶつかり、全員こけてしまった。まるでピタゴラスイッチのようだ。
『あはははは』
来未は立ち上がると言った。
「皆、次の町に行くぞ!」
『うんっ!』
4人は宿から出て村を出発しようと外に出た。すると、あることに気づいた。
「えっ!?ここ宿じゃなくて普通の民家だったの?」
「そうだけど、この村宿がなくて民家しか借りられなかったのよ」
「待て待て、悪いと思わなかったのか?」
「それがね、いなかったのよ。誰も」
「そ、そうなんだよ。この街誰もいないの。」
「えっ、なにそれ不気味すぎじゃない」
「そう思ったんですが、ここしか無かったので、ご主人様の命を優先しました」
「それは、ありがとう。でも、ここ・・・絶対なにかあるだろ」
「調べてみますか?」
「そうだな・・・」
来未はそう言って村を出るのをやめ、調査を始めた。
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