第20話 絶体絶命!そして・・・
「っ!草薙!」
視線を交わす。その瞬間来未の視界から草薙が消えた。
「っ!?」
気がつけば目の前まで来ていた。
「白夜流抜刀術・旋迅之刃」
来未はとっさに屋根に穴を開け下に逃げた。リビングらしき場所に落ちるとすぐに窓に近寄り窓から外に出た。すると、すぐにその場所に斬撃が飛んできた。
(ダメだ、神眼で確認したがあのステータスは今の俺では勝てない)
闇を体に纏わせようとした来未だったが、強烈な頭痛とめまいに襲われ闇は霧散してしまった。
(・・・発動しない・・・。魔力がもうないのか・・・)
ふらつきながら歩いていると後ろに草薙が来ていた。間一髪で逃げると他のふたりに囲まれた。
「これで終わりだ!この世界にお前は必要ない!」
その言葉はさっきまでの来未には聞く余裕もあっただろう。だが、今の来未は頭痛とめまいに襲われ更には、あと少しで殺されるという状況で全く頭に入ってこなかった。
「まだ、わかんねぇよ。お前勝ち誇ってるけどな俺はまだ負けてねぇよ」
「無駄なあがきを・・・。なら、もう死ね」
来未は不敵ににやけると、スキルを発動した。
《暗黒化》
「なっ!?まだこんな力が・・・」
《力の深淵を・・・》
だが、発動しなかった。いや、発動しなかったというのは少し語弊がある。しなかったのではなく出来なかったのだ。そう、草薙の手によって切られたせいで・・・。
(・・・忘れてたよ・・・。俺体切られてたんだ・・・。痛い・・・背中も切られちゃったな・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
来未の意識が遠のきかけた時どこからか声が聞こえた。
『クロスフレア』
すると、来未の周りに十時の炎が現れた。
よく見ると遠くでミューナとニュー、キュラが呼んでいた。
『こっちよ!速くこっちに来て!』
意識を取り戻すと急いでみんなの元に向かった。
「なんで・・・ここに?・・・逃げろって・・・言っただろ」
「バカっ!こんなになるまで無茶して!心配したのよ」
「そうです!私、ご主人様に何かあったらと思うと・・・」
2人は泣き出してしまった。いつもならすぐに慰めるが、今は傷が痛み謝ることしか出来ない。そんな来未を見て3人はさらに泣き出してしまった。
「ごめんな・・・。俺みんなを守ろうとしてさ・・・」
「いいですよ・・・。わかってます。だから次は私たちが無茶をする番です」
「そうね、くるみんの仇はきっと打つよ」
「私も、助けて貰った身。だから力になれることはしたいです!」
皆はやる気のようだった。だが・・・
「皆、やる気があるのはいいことだが今の俺達ではどうにもならん。ここは一旦逃げるぞ」
3人は少し驚いたがうなづいて魔法の詠唱を始めた。
「私たちが隙を作る。だからそのうちにお願い」
「分かりました!」
《サンドストリーム》
砂埃で視界がゼロになった。すると、すかさずミューナが魔法を発動した。
《転移空間》
転移と同時に来未の意識は途絶えた。
「・・・」
「・・・て・・・さい」
「起きてください!ご主人様!・・・あっ、目が覚めました!」
目を覚ますと来未は見知らぬ場所に来ていた。傍らでミューナが喜んでいる。すると、部屋に誰か入ってきた。その人たちは入ってくるなり目の前に来て泣き出した。よく見るとその人はニューとキュラだった。
「・・・ここ・・・は?」
「ここは、ソートレン王国の私の部屋です」
「・・・えっ?」
来未は体を起こそうとしたが、起こせなかった。動かそうとすると激痛が体を走り身体中の力を抜いていく。すると、ニューが話してきた。
「まだ、起きちゃダメよ。体の傷凄かったんだから。特に前の傷。下手したら体が切り離されてたわよ」
鏡を持ってきてもらい見ると身体中に包帯が巻いてあった。
「なんだよ・・・、分からねぇことばかりじゃねぇか・・・それに、ソートレン王国って・・・」
「あの・・・、ご主人様。キュラちゃんはどうなさいますか?」
「なんだよ改まって・・・。もう仲間だろ」
そういうとミューナは嬉しそうにはしゃいだ。そして、急に深刻な顔になり話しかけてきた。
「ご主人様、そろそろこの3日間で何があったのかを話します・・・」
「ちょっと待て、3日間!?俺そんなに寝てたの!?」
ミューナはそっと頷くと静かに語り出した。
「あの時ご主人様に逃げろと言われ私達は転移魔法で逃げました。逃げた先がこのソートレン王国でした」
「それで、逃げたあと1度ギルドによったの。なにかしてあげられるかもしれないって思ってね」
「そしたら、私の顔を見たギルドの人が国王に教えたみたいで・・・。突然国王が来て、私がその国の姫だって言ったんですよ」
「国王様ったら私の娘だ〜って言ってすぐにここまで連れてきたの」
「あの・・・でも、来未さんを助けにいかないとってなって・・・それで・・・」
「ありがとう。俺のためを思ってしてくれたんでしょ。嬉しいよ」
キュラはパッと顔を明るくした。そんな会話をしていると部屋をノックする音が聞こえた。そして、これまた意外な人が入ってきた。
「・・・・・・国王」
来未は小さく呟いた。
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