第18話 勇者の猛攻
光の猛攻は続いた。一つ一つ同じ力で相殺していた来未は、剣の方が限界を迎えていた。さらに、後ろの女の子は激しい動きで酔っていた。
(超級戦闘術作っといてよかった。じゃないと今ごろ怪我していたよ)
「うぉぉぉ!”千突っ”!」
「ヤバっ」
ギリギリでかわした来未だったが少しかすってしまった。しかし、猛攻はやまなかった。
「”天閃っ”!」
突然光は亜食に攻撃しだした。
「”エクスチェンジ”」
亜食がそういうこと、自分と悪食の位置が入れ替わった。
「うっ!クソっ!」
来未は刀で防いだが余波で吹き飛ばされてしまった。
「フゥ、危なかった」
来未はそう呟いて直ぐに起きると、屋根の上に飛び乗った。そして、光に向き合って話した。
「光、お前なんで俺の事を狙うんだ?俺は何もしてないだろ」
「何を言うかと思えば、団長を殺しておいて何を言う!」
「知らん。俺はその団長とやらにあったことは無い。お前騙されてんじゃねぇのか?」
「この人殺しが。お前だけは絶対に許さない。殺してやる!」
(人に向かって人殺しって言いながら俺を殺そうとするか・・・。滑稽だな)
「確かな証拠もないのに俺を疑って俺を殺し、人殺しという。自分は人を殺してもいいってことか?勝手だな。どうせお前は王から俺を殺せと命令されたんだろ。それで、王を信じきって俺を殺す。・・・バカなのか?俺じゃなく王が殺したかもしれないんだぞ」
「うるさい!お前が殺したんだ!これは、確かなことなんだ!」
「騙されてるかもしれないのにか・・・。滑稽だな。実際に俺は殺してない、だからお前は騙されてることになるんだな」
「・・・」
「そもそも考えてみろよ。あったこともないやつ殺すバカがいるか?このバカが!」
「・・・うるさい!お前が殺したくせに!」
来未は説得を試みたが逆に光は激怒すると来未の目の前まで一瞬で距離を詰めた。そして、迷いなく攻撃してきた。
「”天絶”!」
「っ!?速い!”黒繭”!」
来未はそう唱え左手を前に突き出した。すると、闇が来未の周りに展開され球体となって来未を覆った。が、光はその闇を空間ごと切り裂いた。
「グフッ!」
来未は右肩から左の脇腹にかけて深く切り裂かれた。すると、さらにもう1撃食らわせてきた。
「これで終わりだ!”天絶”!」
「まだだっ、”黒蝕・黒刃”!」
来未の刀に闇がまとわりつき黒い刃となって光の剣を弾いた。来未はそのまま光を遠くに蹴り飛ばした。そのままの勢いで屋根から落ちた来未だったが下に噴水があったので水の中に落ちて助かった。
「はぁはぁ、大丈夫ですか?あっ、傷が・・・早く治さないと」
「大丈夫だよ。それより君は?」
「私は大丈夫です。全部守ってくださったので・・・」
「それは良かった。まぁ、自分が守れてなきゃダメだよな」
「そんなことないです。私を守ってくださったこと嬉しいです・・・。ひぎぃ!いだいっ!鼻が、鼻が!」
急に女の子は悲鳴を上げだした。すると、後ろで光が鎖のようなものを引っ張っていた。
「フハハハハ、無駄なあがきだったな来未!この女はもう俺達の奴隷なんだよ!首元を見てみろぉ!俺を殺せば俺達の奴隷であるこいつも一緒に死ぬぞ!おいっ!そこの女早くこっちに来い!」
女の子は絶望した顔で光の方へ歩き出した。それを止めようとしたが、傷が痛み動けなかった。
「待ってくれ!君、名前を教えてくれ!」
女の子は1度笑顔になると泣きながら言った。
「私はプレメデ・・・、プレメデ・キュラ。助けてくれてありがとう!」
そう言って光の方へと行ってしまった。
「お前は後でじっくり遊んでやる。待ってろよ」
光は小さくそう呟くと再び距離を詰め攻撃してきた。
「これで終わりだ!”天撃閃”!」
(・・・このままだと確実に死ぬ!逃げるのは簡単だけど・・・)
「キュラのためにも逃げる訳にはいかねぇよな!」
《暗黒化》
すると、周りの影から闇が出てきて来未にまとわりついた。闇は、来未の無くなった右腕を作り、悪魔の姿を形成した。
「人を苦しめて殺す!でも、自分は人を殺しても許される!そんな自己中な勇者はこの世にいらん!真の勇者は強いやつじゃない、仲間を思いどんな人、いや人だけじゃない。どんな生き物も助け、裁くことができる勇気あるもののことだ!お前は勇者じゃないただの悪人だ!」
来未はそう言い放つと神器を袋から取りだし背中に背負って手をかけた。
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