ふざけるな
話し合いの最中、突然開く扉に全員の頭の中にあることがよぎった。
レイに全部聞かれてしまったのではないかと。
扉を開け入ってきたのは、レイではなくガラムだった。
「いやぁわりぃな遅くなっちまって。ん?どうした、みんな疲れた顔して?」
今の一瞬で疲れが増した上、空気の読めない発言に苛立ちも出てきた。
「たくっ驚かすなよ、ガラムのおっさん。すげぇびびったぜ。」
ベリアが冷や汗を額から垂らしながら呟いた。
「なんだベリアいい年してお化けが出たとか思ったか?情けない奴だな。」
「はははっちげぇよ!大体アンタの顔に比べたらお化けの方が百倍かわいいんだよ!」
「へへっちげぇねぇな!」
へらへらとした態度で席に座るガラムとそれに乗っかるベリアに一番真面目なカルベルは黙っていなかった。
「何ふざけているんですか二人とも!こんな大事な話をしている時に何考えているのですか!」
さすがに状況を思い出す二人。
「すいませんでした・・・。」
「分かればいいんです。それとガラムさん今まで何やっていたのですか?」
再び話は本題に戻った。
「夕飯前にカルベル、お前の能力で花作ってもらっただろ。」
「ええ、確かブルーリリーを頼まれてガラムさんに渡しましたね。」
ブルーリリーは深い青いをした花びらの百合で、花びらを湯に浸すと睡眠作用を引き起こす甘い匂いを放つことが特徴的である。
昔、暗殺に使用されたことも有名である。
「あぁそいつでレイを風呂場で眠らせたところまでよかったんだが、おれも匂いにあてられて寝ちまってたんだよ。はははっ・・・いやすまん。」
「何しているんですかあなたは。まさか裸で置いてきたわけじゃないですよね?」
「そんなわけないだろ。まあ寝ぼけてたからよく覚えてないけどなへへっ。」
この話を聞いてサラが立ち上がり言った。
「ちょっと、レイくんの様子みてきます。」
そのまま部屋を出て行こうとするサラを焦って引き止めようとした。
「いや、冗談冗談!ちゃんと服着せて寝室まで運んだからね!」
「そう・・・。」
「なんでがっかりしてんだよ・・・。」
落ち込みながら席に戻るサラの様子に少しあきれた一同。
「ええと・・まあいいや、それでどこまで話は進んだんだ?」
ガラムの問いに再び重い空気になった。
「レイの追放について揉めていたところです。ガラムさんもやはり知っていましたか?」
カルベルが答え、問い返した。
「当たり前だ。おれが提案した内容だからな。」
平然と答えるガラムに、サラが一番につっかかった。
「あなたという人はあの子をなんだと思っているの?」
サラの怒気のこもった質問に少し動揺しながらガラムは答えた。
「ま、まあ落ち着けよサラちゃん。レイとおれ達の為なんだ。おれもレイのことはちゃんと考えてるんだ。」
「レイくんの為?」
「ああ、レイに案内状を出した場所は表向きは魔導士の育成だが本当は冷戦の今裏で国の戦力を上げる為の育成なんだ。つまり、兵士として魔力大戦が起きた時に真っ先に駆り出される人を集めているんだ。」
「それのどこがレイくんの為なの?あなたあの子が死んでもいいって言うかっ!!」
火に油を注ぐ形になっているがガラムはそれでも話を続けた。
「サラ、レイは闇の能力を持って生まれ子だ。本当ならその時点で死んでいた。だが、この国が今闇の能力さえも必要としている。あの子がここを出て生きるチャンスだとは思わないか?」
この言葉を聞いてサラは少し戸惑いを見せた。
「それは・・そうかもしれないけど・・・。」
「急なことで気持ちに整理がつかないだろうが、これもレイの為だと思ってくれ。それじゃこれで――」
ガラムが話し合いを締めに入ろうとした。
「ふざけるな!」
アナがガラムの話を遮って叫んだ。
「レイの為?そんなの嘘よ!」
「嘘じゃないさ案内状は本物だ。」
「紙切れの話じゃない!レイをここから出すこと自体命取りになるのよ!闇の能力だと知られたらそれだけで金稼ぎで命が狙われのよ!そんなことも知らないバカだとでも思ってたの!」
アナの言い分はもっともで、ここにいる全員が知っていた。
それでも未だ冷静でいるガラムにまだ策があるじゃないかと思われる。
「それは大丈夫だ。仮にバレても案内状を持っている限り国が絡んでいるから下手に手出しはできない。」
「案内状見る前に殺されたら?」
「え?」
「そもそも闇のこと理解してないレイをなんで一人でいかせるの?」
「それは・・・。」
「それは?」
「それは・・なんとかなるだろう!きっと大丈夫だ!」
「もういい!」
アナは涙ぐみながら部屋を後にした。
部屋は静まり返りその後、サラ、カルベル、ベリアの順に部屋を静かに出て行った。




