境遇
炎の中で立つ一人の少女が幻でないとわかった瞬間、一気に焦りが出てきた。
先ほどまでとは違う混乱がこみ上げてくる。
「急いで離れなきゃヤバい!」
まとめた荷物と旅立ちの時に渡された二つの袋を持ち、急いで転移の魔法を行使した。
目的地は王都近くの森林。
転移の瞬間には自分の体全体が闇に包まれる感覚になる。
その間、闇の靄のすき間から少女をみた。
手を振っている…。
どうしても表情まではわからないが、確実にぼくを認識していた。
左腕を小さく振って挨拶しているような感じが少し不気味ではあった。
「いつから観ていた?ぼくを、ぼく達を…。」
闇の靄が無くなり、目の木に独り言をつぶやいた。
「何言ってんだお前?てかおせぇよ!どんだけ時間かかんだ。」
後ろからの声にびくつきながら振り返った。
そこには何時間か前に会った黒人の少年がいた。
枝と枯れ葉をかき集めていた。
「…ルークだったけか?何してんだ?」
「チッ何してんだ?じゃねぇよ!日没まで待たせておいてよく言えたな!すぐ戻るんじゃなかったのかよ!火を起こして暖取るから手伝え!」
機嫌悪く捲し立て、レイもそれにとりあえず手伝うことにした。
黙々と枝と枯れ葉をかき集め、ある程度集まったところでルークが微弱な電気で着火した。
少しずつ火が大きくなったあたりから無言に耐えきれなくなったルークが喋り始めた。
「あぁ…まぁなんだ…お互いによ、いろいろあるだろが命はあるからしょげるなよ。」
「ん?うん。いきなりどうしたんだ?」
「ああ?いやお前戻って悲惨な目にあったんだろ?家族とやらに捨てられてしょげてたんじゃないのか?」
「はあ?いやオレは…」
ルークは話を聞かずレイの肩に手を置いて続けた。
「気にすんなよ、お前の人生は始まったばかりだろ。」
妙に誇らしげなのがまた腹立つ。
ルークの手を払いのけ、睨み付けた。
「オレは捨てられてねえ!みんな殺されたんだよ!」
ルークは一瞬唖然とした。
ただ、ルークを含めこの国の常識で考えたら普通の話だった。
今まで生きていたことが可笑しな話ではあった。
レイにとっては理解ができないことてはあった。
闇市場の脱走者だったと考えても殺される程のことなのかも分からなかった。
「そりゃ...災難だったな、よくある話だ。」
冷たくとれる言葉をルークは吐き捨てた。
「よくある話だ?おかしいだろどう考えても!何で殺されなきゃいけないんだ!」
「そう思うのはお前が世の中を知らないからだよ。異常なことも個人の力ではなにもできないのが普通だ。ましてやオレらみたいなガキではな。」
レイとは対してルークは冷静に答えた。
「お前の気持ちは分からなくはねぇがな。」
「…いいや、お前に家族を失うことが何なのか分かるわけない!」
ルークは突然黙り込み、うなだれて小さくため息をついた。
「何か言えよ…。」
イラつくレイにルークは呟く様に答えた。
「…オレの両親も殺されたよ。」
ルークの告白にレイは動揺を隠せなかった。
「…え?あぁ…ごめん。」
「…別に謝らなくていい。お前のともかくオレのはそうあることじゃない。かなり前の話だからな。」
「そう…なのか?」
それにしてもかなり吹っ切れたように話しをする。
「…何年も前の話だ。復讐も失敗した上にその相手に命まで助けられた。どうしよもないヤツになっちまった。」
レイは何も言い返す言葉が見つからなかった。
「どうせお前のことだからこの後復讐に出て、死のうとするんだろ?」
「…そうだよ。だとしたらなんだよ!」
「止めはしねぇよ。だがな…、」
ルークは視線を落とし、話を止めようとしていた。
「なんだよ、言いたいことがあるなら言えよ。」
レイに詰め寄られて一呼吸おいて話を続けた。
「復讐して死のうと思っているんだろ?」
「そうだよ…。」
「だろうな、オレもそうする。いや、したよ。それで死にかけて復讐した相手に助けられたんだよ。」
深いため息をついて火が丁度いい具合に燃え上がる焚き火の前に腰掛けた。
「お前も座れよ。」
無言でレイもその隣に座り、ルークの話の続きを聞いた。
「紫電の悪魔って知ってるか?」
そう問いかけるルークは紫色の瞳をしていた。
ゆらゆら燃える焚き火の光りがいい色合いをレイに見せていた。




