憶測
不安が心を支配する中森を進み続けるレイ。
目的の場所に着いたら何が分かる?
誰が待っているだ?
もうイヤだ・・・何も知らなかった時に戻りたい。
顔は自然とうつむき、些細な物音でも敏感に感じるようになっていた。
誰かいないのか、誰でもいいから・・・。
辺りを必要以上に見渡し、人を探しながら進み続けた。
怯えながらしばらく進み続けていると、前方に人影が見えた。
短髪の黒人でレイと同い年くらいの少年だった。
薄汚れた白地の服を着て、左手にレイと同じ案内状を持っていた。
後ろ姿や歩き方からして少しがらが悪そうに思えるが、今のレイには関係なかった。
「うわぁー!ひーとーだぁー!」
いきなり後ろから黒人の少年にしがみつくレイ。
普通にドン引きされ嫌悪感をいだいたその少年はレイを振りほどいた。
「な、なんだお前!離れろ気持ち悪い!」
力一杯拒絶されたが人に会えた喜びが大きかったレイは関係なく突き進んだ。
「ぼくはレイだよろしく!お前名前なんだ?」
「・・・は?」
「ハって名前なのか?変わっているな。」
「ちっげぇよ!何でいきなり後ろからしがみついて来るやつに自己紹介しねぇといけねぇんだ!」
「いいだろ別に、減るもんじゃないんだから。」
「気持ち悪いんだよ、あっち行け。」
「どうせ目的地は一緒なんだ。一緒に行こう。」
「だとしてもお前とは行きたくない。」
「名前くらい教えてくれよ。」
「・・・ルークだ。これでいいだろ、もうどっか行けしっしっ!」
「そうか!ルークかよろしくな!」
「お前人の話聞いてんのか!あっち行け!」
ルークの拒絶を無視して詰め寄るレイは少し異常なくらいだった。
普段では見せない姿がこの時出たのだった。
「なぁルークは何で育成所に行く事になったんだ?」
「普通聞くかそれ?」
嫌な顔してレイを見つめるルーク。
世相を全く知らないレイは不思議そうな表情で返した。
「そういうものなのか?」
「そういうもんなんだよ、何でしらねぇんだ。」
「ごめん、知らなかった。ずっと家族以外と関わって来なかったから。」
「どんな生活してたんだよ。まあいいや、もうあっち行け!」
「それは嫌だ。一緒に行こう!」
「・・・なんなんだ、お前。」
それからしばらく無言で森の中を二人は進んだ。
ルークはチラチラレイの様子をうかがいながら歩くが一方のレイはなぜか堂々としていた。
一人の不安から解放され、安心していているが初対面の他人である。
なんとも言えない嫌な空気に耐え兼ねたルークは苛立ちをぶつけた。
「老夫婦か!なんで無言の空気の中堂々してんだよ、おめえは!」
「え?何が?」
不思議そうな表情をするレイに余計苛立つルーク。
「何が?っじゃねぇよ、お前よく会って数分しか経ってないやつの隣で安心できるよな!少しは警戒心とか持てよ!」
「警戒心かぁ、あんまよくわからないな。」
「はぁ?」
「人間が出来てるってことなのかな?へへっ。」
「・・・ただのバカだろ。」
「そうかもね。」
「・・・」
レイのこの能天気さにはルークは少しばかり嫌悪感を抱いていた。
「チッ、よくそれで生きてこれたな。ぬくぬくの環境で育った奴がこれから行くところ、3日と持たねえぞ。」
「まぁ、育成所って言うくらいだし殺されやしないだろ。大丈夫だよ。」
「お前本当に気楽な奴だな!確かに闇の能力持ってなければ即死刑になることはないが、待遇なんて人以下だ!」
「え?」
「なんだよ、急に黙りやがって。」
ルークの言葉に耳を疑うレイ。
昨晩知った事実はやっぱり当たり前の事だと痛感し、言葉を失った。
「おい!」
呆然とするレイに張りのある声で呼びかけるルークの顔はあからさまにいらいついていた。
「なぁ、闇の能力持ってたら死刑になるのか?」
レイの静かな問いにルークはしかめっ面で答えた。
「んあ?何当たり前の事聞いてんだ。今のは例えで言っただけだ。そもそも存在しないだろ。」
ルークの言葉を聞いたレイの表情は暗く沈み、先ほどまでの能天気な姿は消えた。
「今度はなんだよ、あからさまに染みっ垂れた面しやがって。」
「・・・」
「なんかしゃべれよ!腹立つな!」
「ぼくの能力は闇属性なんだよ。」
「へぇー・・・え?」
予想外のレイの発言にルークの思考は停止した。




