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9、アリス VS ジャバウォック

とある山の頂上にて。

まだら服の男と金髪オールバックの男が山の頂上に来ていた。

山の頂上には、八芒星のマークがあった。


「この山の頂上には、勇者アリシアが封印した伝説の怪物が眠っているのです」

「この八芒星の印がそれか?」

「ええ、そうです………おや?」

「どうした?」


まだら服の男は、八芒星の封印をじっと見つめる。


「何者かがここへ来ていたようですね。私が地道に弱めていた封印が固く締め直されています」

「なんだと!誰かに俺たちの動きを察知されたのか?」

「それはわかりません。ですが、ここに相当の手練れがきたことは確かです」

「そうなのか」


「この封印は相当強力なもので、弱まった封印を締め直すには相当な魔力が必要です。それが出来るとすれば、封印した勇者本人か、魔王か、あるいは勇者パーティーのメンバーか、魔王軍幹部の七魔将ぐらいですかね」


「なるほどな」


まだら服の男が封印を解き始めた。


「封印が完全に閉まっているので、想定していたよりも時間がかかります。その間見守りをお願いします」


「わかった。任せろ」


それから一時間ほど経過した。


「封印を解く準備が整いました」

「おお、できたか!」


そしてまだら服の男は笛を取り出した。


「その笛で封印を解くのか?」

「ええ、これは魔笛といって音色を変えることによって様々な効果が得られるのです」

「なるほどな、魔剣と似たようなものか。俺の剣とは相性が悪そうだな」

「そうですね。では、そろそろ始めますよ」

「ああ」

「封印されし伝説の怪物、ジャバウォックよ。今こそ目覚めるのです」


まだら服の男が、魔笛を口に咥えて八芒星の印に向かってを吹くと封印が解かれた。


すると、何もない山の頂上に魔法陣が現れて、その中から炎のように燃える眼を持つ巨大なドラゴンが現れた。


「ウ〜ガォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォー」


ジャバウォックは目覚めてすぐに、近くにいたまだら服の男と金髪オールバック男に向かってほえた。


「クックックッ元気でなによりです。ジャバウォックよ命令します。これから、アリスという冒険者を捕まえて来なさい」


まだら服の男が命令すると、ジャバウォックはすぐさま街の方へ飛び去っていった。


「アリスさん。あなたの実力この目でしっかりと確かめさせてもらいますよ。クックックッ」


♦︎


突如。ギルドの緊急放送が街中を駆け巡った。


「緊急事態発生!緊急事態発生!ジャバウォックがこの街に接近中!街の皆さんは避難してください。冒険者の皆様は戦闘準備を開始してください!」


私を含めたギルドの全員で外に出ると、遠くの空に炎のように燃える目を持つドラゴンがこの街に向かって来ていた。


「おいおい嘘だろ!本当に伝説のドラゴン。ジャバウォックだぞ!」

「俺たちは夢でも見てるのか?」

他の冒険者達が次々と驚きの声をあげる。


「あの、ジャバウォックってなんですか?」

私は気になって近くの冒険者に聞いてみた。


「あぁ………アリス嬢ちゃんは知らねーのか。ジャバウォックってのは、勇者様でも倒しきれずに封印することしかできなかったていう、とんでもね〜化け物さ………」


「そうですか………お母様でも倒せない相手がいたのね………」


私はポツリと呟いた。


「ん?アリス嬢ちゃん今なんか言ったか?」

「いいえ〜なにも〜」

「そっか、ならいいや」


よかった今のは聞こえてないみたいね………


「まさか、勇者様の封印が破られるとは………」

「勇者様でも倒せないヤツを相手に俺たちが勝てるわけねーよ」

「みんな撤退だ!撤退しろ!ー」


他の冒険者が次々と撤退する中、気がつくと私は単身でジャバウォックに向かって動き出していた。

理由は簡単なことだった。

伝説の勇者。つまり、お母様でも倒せなかった相手がいるとわかったからだ。

私がジャバウォックを倒せば、名実共にお母様を超えたことになる。

そして、何より念願のドラゴンと戦えるのだから。


「待つんだアリス嬢ちゃん!今回ばかりは引くんだ!この前撃退した魔王軍幹部とは格が違うんだよ!ヤツは生きる天災と言われている。嬢ちゃん本当に今度こそ死んじまうぞ!」


他の冒険者が引き返すように言ってくるが、私の足は止まらない、止まるわけがない。


「やっと強い敵と戦えるのね!ワクワクするわ〜」

「………………ダメだ、アリス嬢ちゃん聞こえてねーなこりゃ」


飛行魔法であっというまにジャバウォックに追いつくと、私は大声で叫びながら自己紹介をする。


「ジャバウォック、あなたの相手はこの私アリス・ハイト・ルークよ。さぁ覚悟しなさい!」

ジャバウォックも私の声に気づいたようで、目があった瞬間に口から紫の炎のブレスを放ってきた。


「来たわね!受けて立つわ!」


魔剣スペクルムの分身を百本ほど作り出し、それを円形状に並べて大鏡を作り、迫りくる炎のブレスを倍の威力にしてジャバウォックに跳ね返した。

紫色の炎の塊がジャバウォックに直撃して大爆発が起こった。


「まだまだ〜」


大鏡を解いて、百本の剣の状態に戻して、そのままジャバウォックに向けて放った。

ジャバウォックの体に無数の斬撃が走って傷だらけになった。


「ガルウゥゥゥゥゥゥー」


次の瞬間、ジャバウォックは大きなうめき声をあげると共に、全身の傷が一瞬で再生した。


「えぇ!うそ、傷が一瞬で再生した!?このままじゃいけないわね」


私は【勇者の慧眼】でジャバウォックの弱点を探ることにした。

ジャバウォックの全身を見渡すと、首が弱点であることがわかった。


「首が弱点なのね。それが分かれば簡単よ!」


転移魔法を使って、ジャバウォックの首のところまで一瞬で飛んだ。

すると、顎に生えていた髭が伸びてきて触手のように攻撃してきた。


「うわっ」


私はそれを【破壊の魔眼】で瞬時に消し去った。


「今だ!」


私はジャバウォックの首に剣を突き立てた。

ガチンッと鈍い音がした。


「え、うそ、切れない!?」


魔剣スペクルムではジャバウォックの首を切れなかった。

そして、一瞬の隙を突かれ鉤爪の攻撃を受けて、投げ飛ばされてしまった。


「きゃっ!」


私はすぐに体制を立て直して、召喚魔法で聖剣ミステリオを取り出した。

そして、無数に分身した魔剣スペクルムを、ジャバウォックの体に刺して動きを止めた。

魔剣スペクルムでダメなら、聖剣ミステリオのあらゆる事象を断ち切る能力を使って倒すしかない。

聖剣ミステリオを魔法を使って巨大化させる。

さらに、強化魔法を重ねがけする。


「これでチェックメイトよ。ヴォーパル・スラッシュ!!」


思いっきり聖剣ミステリオを振り、ジャバウォックの首を断ち切った。


「ガルウゥゥゥゥゥゥー」


この一撃でジャバウォックは完全に倒れた。


「ふぅ………やったわね!


♦︎


山の頂上で、アリスとジャバウォックの戦いをみていたまだら服の男が唇を噛み締めていた。


「くっ!………まさか、あのジャバウォックが倒されてしまうとは………」

「予想以上だな。アリスという冒険者は………今回のターゲットはやめた方がいいんじゃないか?」


「いえ、ますます興味が湧きました。彼女を()()()()()に引き入れることができれば、こちらの強力な戦力になります」


「それは、そうだと思うが………」

「それに、彼女がジャバウォックにトドメをさした時に使っていた剣は聖剣でしたね」

「っ!………ああ、確かにな」

「今回は保留にします。では、行きましょうか。次のターゲットのところへ」

「ああ」

「次に会うのが楽しみですよ。アリスさん」


そう言って、まだら服の男と金髪オールバックの男は魔法を使って姿を消した。


♦︎


私は冒険者たちが集まるところに行って右手を上げてガッツポーズをする。


「うおっーーー」


今までに聞いたことのない歓声が上がった。

そして冒険者達の中からギルドマスターが現れた。


「アリス君、ジャバウォックを倒してくれてありがとう。君の活躍はこの街全体を救った。そこで私の権限で君を新たな英雄として勇者様と同じ冒険者ランクの特級冒険者に任命する」


「と、特級冒険者!?」


「うおっーーー」


そして再び大きな歓声が上がった。


「みんな胴上げだ!胴上げするぞー」

冒険者の一人がそういうと言うと、他の冒険者も私の周りに集まってきて、勝手に胴上げを始めた。


「うわっーちょっとやめて〜」

「わーしょいわーしょい、わーしょい」


私の必死な訴えは他の冒険者達の声にかき消されて届かずに、胴上げはこの後一時間ぐらい続いた。

こうして、私は伝説のドラゴンジャバウォックを倒した実績により勇者と同等の特級冒険者に昇格した。

ご覧いただきありがとうございます!

次回更新までまたしばらくお待ちください。

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