86、ロビン VS 「憤怒」の魔剣使いレコール
ロビン視点見なります!
俺は七魔将の一人、「憤怒」の魔剣使いレコールと対峙していた。
レコールは赤い髪が特徴的のツーブロックで、朱色の魔剣を右手に持ちながら足踏みをしていた。
「何をそんなにイライラしているんだ?」
「見てわからないのか?どこからともなく、お前のような者をこの魔王城の5階にまで侵入を許してしまっていることにだ!」
「そうだったのか」
「お前、この部屋に来たということは下の階にいた他の七魔将を倒して来たのだろう?」
コイツは何を言っているんだ?
俺はアリスの案内で隠し通路を通ってこの5階に来ただけなんだが………
ああ……そうか、普通の侵入者は隠し通路なんて知らないよな………
だからコイツは俺が下の階にいる他の七魔将を倒して来たと思っているのか………
こういう時はいったいどんな返答をすればいいのだろうか?
まぁ、ひとまずは………
「下の階の奴らは知らん。俺はお前を倒しに来ただけだ」
「それは、自分より弱いやつの事など顔も名前も覚えてはいないという事だな?」
「いや、俺は別にそんなことは一言も言っていないんだが………」
「あっ?」
俺がそう言うと、レコールは眉間にシワを寄せ、全速力で斬りかかって来た。
すぐに魔弓シャーウッドの矢を5本放って迎え撃つ。
だが、矢はすべて「憤怒」の魔剣の一振りで薙ぎ払われてしまい、部屋の至る所に散らばってしまった。
くっ魔剣と魔弓では相性が悪いか………
このままではまずいな、もっと距離を取らなければ………
そう思って、俺は部屋の端に移動して矢を構える。
「お前、こんな攻撃で俺を倒せると思ってんのか?舐めやがって!」
レコールは魔弓シャーウッドの矢を薙ぎ払うと、より一層険しい顔をしながらこちらに近づいてくる。
「俺は別にお前を舐めてはいない。もちろん、今の攻撃だけで倒せるとは思っていないんだが……」
「そのすかした態度が実に気に入らない!お前は俺様が一番嫌いなタイプだ!」
「そうか。お前短気なんだな」
「っ!この俺様を愚弄するとは!許さん!」
レコールは大声で叫ぶと、大量の魔力が魔剣に流れていくのが見えた。
また険しい顔になったな………
何かまずいことを言ってしまっただろうか………
そういえば、アリスも俺と話していると、たまに顔を膨らませて不満そうな表情をしている時があるような気がするな………
どうやら俺は人を不機嫌にさせるのがうまいらしい………
特に変わったことはしていないつもりなんだが、コミュニケーションというのは難しいものだな………
「バカな奴だ!俺様を怒らせることは、それだけ死期を早めるだけだというのになっ!」
「そうなのか」
「くっ!俺様の「憤怒」の魔剣イーラは持ち主の怒りの感情に応じて威力が増す能力を持つ!お前はこの俺様を怒らせた!万死に値する!」
「なるほどな」
レコールは大声で叫びながら、部屋を覆いつくすほどの無数の斬撃を放ってくる。
それに対して俺も魔力で作った風の矢を無数に作り出して応戦する。
レコールは怒りの感情に任せているせいか、動きが単調で隙が多く、俺の風の矢がわき腹や、右足のすね、左足の太ももに命中した。
「くそっ!こざかしい真似を!」
「愚かだな。怒りに任せても良いことは無いぞ。少しは冷静になったらどうだ?」
「黙れっ!」
この後は、数分間にわたって魔剣の斬撃と魔弓の矢の激しい攻防が続いた。
時間が経つにつれてレコールの怒気がどんどん上がっていき、それに比例するように隙も増えてきた。
「くそっなんでいつの間にか俺様が押されているんだ………」
「考えるまでもないだろう。お前が隙が多いから狙いやすいだけだ。実に良い的だ」
「なっ!この俺様が的だと!クフフフフ………お前は本当に俺を怒らせるのが得意らしいな。ここまで腹立たしいことを言われたのは初めてだ!ぶっ殺す!」
レコールは目を見開き、低い声でそう言い放つと、憤怒の魔剣を胸の前で構えて、体を大量の魔力で覆いつくす。
「見せてやろう!「憤怒」の魔剣イーラの奥の手をな!」
「………」
しばらく待っていると、全身が黒いオーラに包まれたレコールが現れた。
「ウオオオオオオオオオーッ」
その姿は魔剣に操られているように見えた。
これはまさか狂戦士化というヤツか………
本当に愚かだな、怒りに身を任せてはろくに戦うこともできなくなるだけだというのに………
戦闘中に我を失うのは一番やってはいけない事だ………
そう思いながら俺は、レコールに向けて無数の風の矢を放つ。
無数の風の矢はレコールの四肢に命中して動きが止まる。
「最後に一つ教えてやる」
そう言いながら、全ての魔力を一本の矢に込める。
俺を中心に部屋全体が嵐のような突風が吹き始めて、魔力を込めるにつれて矢が巨大化していき、あまりの突風の強さに部屋の窓ガラスがすべて割れ、破片が外に飛んでいく。
「戦闘中において一番大切なのは冷静さだ」
そう言うと同時に巨大な一本の風の矢をレコールの腹に向けて放つ。
「がはっ!」
風の矢は目にもとまらぬ速さで飛んでいきレコールの腹を貫いた。
矢が命中すると、体をを覆っていた膨大な魔力が消滅し、レコールは膝から崩れ落ちるように倒れた。
「終わったな」
こうして、七魔将「憤怒」の魔剣使いレコールとの戦いは俺の勝利で幕を閉じた。
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